作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。3月31日(日)の放送は「村上RADIO~ダイレクト・カッティング特集~」をオンエア。ダイレクト・カッティングとは、レコーディングをおこなう際、マスター音源をテープに録音して編集せずに、いきなりディスクにカッティングすること。そんなダイレクト・カッティングで録音された楽曲を、村上DJの所蔵するレコードで紹介しました。この記事では、後半3曲について語ったパートを紹介します。
◆Dave Grusin「A Child Is Born」
デイヴ・グルーシンのピアノと、ロン・カーターのベースが、サド・ジョーンズの名曲「ア・チャイルド・イズ・ボーン」を美しく紡(つむ)ぎ上げます。最後のほうで加わってくるヴァイブはラリー・バンカー。うっとりとする見事な演奏です。1976年の録音です。
ダイレクト・カッティングの録音って、だいたい1970年代の後半に集中しています。このアルバムは「シェフィールド」というダイレクト・カッティングを得意とする、オーディオ・ファイル、つまりオーディオ愛好家をターゲットにしたレコード会社から出ています。音質にはずいぶんこだわっていて、アルバムの解説にはピアノの調律師の名前までクレジットされています。この会社、本格的なジャズをリリースすることは珍しいのですが、このグルーシンのアルバムはとくに出来が良く、長年にわたって僕の愛聴盤のひとつになっています。
◆Phil Woods Quintet「Change Partners」
このあいだアメリカの中古レコード屋さんをのぞいていたら、「ダイレクト・カッティング・コーナー」というのがあって、そこに20枚くらいレコードが並んでいました。やはり世間には「ダイレクト・カッティング」のファンがちゃんといるんですね。たいしたもんだ……っていうか。その中からこのレコードを買ってきました。フィル・ウッズ・クインテットの『ソング・フォ-・シジフォス』というアルバムです。聴いてください。曲は「チェンジ・パートナーズ」です。
◆Ann Burton「Thursday's Child」
最後にもう1曲、再びアン・バートンの歌を聴いてください。さっきおかけした曲とは異なるアルバムに入っているものですが、これもやはりダイレクト・カッティングで、日本で録音されています。録音は1980年、場所も同じ東京のパイオニア・スタジオです。前回の東京吹き込みのアルバムの評判が良かったので、またやろうということになったみたいです。
バックのピアノはフランス・エルセン、ベースはヴィクター・カイハツ。曲は「サーズデイズ・チャイルド(Thursday's Child)」です。前に何度か「ウェンズデイズ・チャイルド」という曲をおかけしたことがあるのですが、今回はその翌日・木曜日の子どもについての歌です。
「木曜日生まれの子どもは、遠くまで行かなくてはならない……」。取り上げられることのあまりない古い歌ですが、なかなか深い味わいがあります。アン・バートンって、ときどきこういうちょっと珍しい、趣味の良い曲を掘り出してきて歌いますよね。そういえば、デヴィッド・ボウイも「サーズデイズ・チャイルド」という同じタイトルの曲を歌っていますが、これはまた違う曲です。
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3月31日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 4月8日(月)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ダイレクト・カッティング特集~
放送日時:3月31日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/