本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
2月14日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「注目を集める“新NISA”と数字で確認する“昨年までの経済情勢と今後”」というテーマで伺いました。
(左から時計まわりに)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆新NISAがスタート! マーケットに与えた影響は?
浜崎:今回、宗さまには「注目を集める“新NISA”と数字で確認する“昨年までの経済情勢と今後”」についてお話しいただきます。
やしろ:今年の1月から新NISAが始まりました。国内のマーケットにかなり影響を与えているそうですね。
宗正:その可能性が高いですよね。昨年までは旧NISAがありましたが、それが改定されて新NISAになりました。NISAとは株式や投資信託など、投資収益にかかる税金のおよそ2割が、一定条件の下で非課税になる制度です。つまり今の株式市場の上昇にプラスの影響はあっても、まずマイナスにはならないでしょうね。
そして株式と並ぶ新NISAの投資対象として、投資信託があります。先月1月の数字が出ていまして、(投資信託への)資金流入の超過額がおよそ1兆2,000億円。これはけっこう大きい数字で、実は2007年の8月以来、16年5ヵ月ぶりの高水準です。新NISAの影響は少なからずあると思いますね。
やしろ:今回の日経平均株価が3万8,000円に上がったというところにも、影響が出ているということです。新NISAがこれほどまでに注目を集めている理由は何でしょうか。
宗正:新しいNISAに変わって内容が充実したことが、まず1つあると思います。金融商品を非課税で保有できる期間が無期限になり、投資の上限額も大幅に広がりました。
そしてもう1つ。コロナ禍を経て、生きるために必要なのがお金であり、これを真剣に考える人が増えた・考える時間もあったというのも大きいと思います。要は人生100年時代を生き抜くために不可欠なお金を、自分で増やす努力が必要なんだと気づかれた人が多いと思うんです。
それから岸田政権が掲げている「資産所得倍増プラン」や「資産運用立国日本」というフレーズも目につきましたよね。これがまさに新NISAのスタートタイミングと、うまくマッチしたんだと思います。
やしろ:僕は40代ですけど、20代・30代の方でも、自分たちが年齢を重ねると、年金に対する不安は感じていると思います。どうしても自分たちで資産を確保しなきゃいけないという人は多いんじゃないかな、と。
宗正:そうですね。誤解されがちなのですが、年金制度そのものというのは、もともと「すべてを年金で賄えますよ」という制度ではないんですよ。あくまでもサポートの制度です。
やしろ:年金だけで老後の生活ができると思いがちですが、それは間違っているということですね。
宗正:そうですね。それは誤解ですね。実際、年金だけでは足りないと思います。
◆新NISAを始める前に考えておくべき「心構え」
やしろ:新NISAは、宗さま的にはどのような投資方法が一番良いとお考えでしょうか。
宗正:新NISA制度には、年間の投資上限額120万円を積み立てていく「つみたて投資枠」と、年間投資上限額240万円の「投資成長枠」があります。投資初心者の方には、長期分散積立投資を活かした「つみたて投資枠」の活用をオススメしたいと思います。そして投資リテラシーが高くて、より自由な投資をしたいという方には「成長投資枠」の活用が向いていると思います。
しかしそれ以前に、もっと大事なことがあるんですね。それは「何のための投資なのか」「目標額はいくらなのか」「そのために許される投資の期間はどれくらいなのか」の3つを考えること。
例えば「5年後、世界旅行をするために200万円を貯めたい」というのは、3つの要素が全部含まれています。この目標を無視した投資というのは、知らず知らずのうちに投資リスクをついつい大きくしがちなんです。要は「増えればいい、儲かればいい」という考え方。それではダメです。投資にはあくまでも、今申し上げた3つの要素、これをまず決めてください。
やしろ:もう一度、3つの言葉をいただいてもよろしいでしょうか。
宗正:「何のための投資なのか」「そのためにいくら必要なのか」「許される投資の期間はどれくらいなのか」。この3つが決まればすべて決まります。
やしろ:理由・額・期間。この3つを明確にした上で、みなさん投資にチャレンジしましょうということですね。
◆気温と消費は密接な関係にある?
やしろ:そしてここからは、昨年の経済情勢を振り返りたいです。今後を考えるということで、どのような数字に注目すべきでしょうか。
宗正:毎年、2月の上旬辺りで昨年1年間のさまざまな経済指標や統計がまとまります。昨年を振り返って、今後を考えるという意味ではあえて2つ挙げたいと思います。
まず1つが総務省の統計局が発表している家計調査。国内の家計支出を通じて、景気に最も影響を与える個人消費の動きを把握します。もう1つが、財務省が発表している国際収支統計。これは一定期間で、国や地域の対外的な経済取引をまとめたものです。
家計調査というのは国内の調査で、国内需要・内需を表しています。そして国際収支統計は海外需要ですね。対海外ということで、外需を把握するために有効なんです。
やしろ:まず1つ目は2023年の家計調査。こちらの注目すべきポイントは、どのような感じだったのでしょうか。
宗正:他の世帯が1ヵ月にどれくらいお金を使っているのかって気になりませんか?
やしろ:はい、気になります。
宗正:2人以上の1世帯で、昨年の消費支出月額平均は29万3,997円。これは物価変動の影響を除く実質ベースで、その前の年と比べても2.6パーセント減っているんです。これは、実に3年ぶりの下落です。物価高が理由で、多くの人が節約志向に向かっているということです。
何を節約しているのかというと、個人の消費額で全体のおよそ3割を食費が占めていますが、つまり食費を減らしているんですね。ただ新型コロナも5類に移行して、「外食の機会は増えた」という方も多いと思います。何を減らしているかというと、食材を買ってきて、家で料理して食べる「内食」の食費を節約しているんです。
それから昨年の12月は、単月で見ても物価変動を除く実質ベースで前年度の消費支出を2.5パーセント下回っており、10ヵ月連続のマイナスなんですよ。
やしろ:物価高になってきて、コロナ禍も明けて、旅行に行ったり外食をしたりとか、いろいろな意味で支出も増えていって上手く回っていくかと思いきや、支出は減っているんですね。
宗正:そうなんですよ。理由としては、3つ挙げられます。1つが物価高。2つ目が新型コロナの5類移行。3つ目が気温の上昇ですね。昨年の夏は暑かったですよね。
やしろ:ちょっと外に出るのも怖いくらいの暑さでした。
宗正:年末年始も暖かかったですよね。そうなると夏は外に出かけないので、買い物を控える人が増えます。そして年末年始は冬物が売れない。物価高の部分は、今後は賃金が今年上がるのかどうかということに注目です。
気温の上昇という部分についてですが、個人消費と天候ってすごく密接に関わっているんですよ。今年はどうなるのか、そこに注目ですね。
◆2023年の経常収支は前年比でほぼ倍増 その理由は…
やしろ:そして、2023年の国際収支の数字では、どのようなことが見えてくるのでしょうか。
宗正:貿易や投資など、海外との取引状況を表す経常収支が前の年と比べて92.5パーセントも伸びたんですよ。ほぼ倍増です。経常収支のなかの一番大きな要素が貿易収支ですが、自動車などの輸出が好調だったことに加えて、その1年前(2022年)ってガソリン価格がどんどん上がりましたよね。それが一旦落ち着いた、つまり輸入の減少が要因です。
貿易収支が黒字というのは、輸出のほうが輸入よりも大きいときに黒字になるので、これが大きく効いてくる。赤字は赤字なんですけれども、前年比で赤字額が6割も減少していますということですね。
それから目につくのが自動車や家電のような、そういったもの以外の取引を示すサービス収支というもの。このなかでデジタル関連の赤字が前年比で16パーセントも上昇しています。
やしろ:以前、この番組でも勉強しましたね。例えばスマホで海外製のサブスクリプションサービスを利用したり、海外の製品や海外のサイトなんかでもお金を使ったりしていますからね。
宗正:YouTubeで動画を観るにしても、海外のサイトで取引をするにしても、けっこう海外のものって多いじゃないですか。あれで全部、(国内のお金が)海外にお金が出て行っちゃっているんです。今後デジタル分野で日本企業が稼ぐ力をつけること、国内投資の受け皿となる成長産業を作り出すことが、この国にとっての課題ですね。
やしろ:ありがとうございます。宗正彰の愛と経済と宗さまと。AuDeeにて毎月10日20日30日に配信中でございます。宗さま、今月もありがとうございました。
宗正:ありがとうございました。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保