笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。6月15日(土)の放送は、オルビス株式会社 代表取締役社長の小林琢磨(こばやし・たくま)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)小林琢磨さん、笹川友里
小林さんは、2002年に株式会社ポーラ化粧品本舗(現:株式会社ポーラ)入社。2009年にグループの社内ベンチャーブランドとして立ち上げたディセンシア取締役、2010年に代表取締役社長に就任。2017年にオルビスマーケティング担当取締役に就任し、2018年より現職に就いています。
◆立ち上げ当初は「全然売れなかった」
ポーラグループのベンチャー企業として1987年に誕生したオルビスは、総合化粧品メーカーとして、スキンケアやメイク、サプリメントなどを展開しており、「売上規模でいうと約450億円、社員数が店頭の美容部員も含めて1,050人ぐらいが在籍しています」と小林さん。
創業時からカタログを中心とした通販を展開し、それで得た顧客データを活用したダイレクトマーケティングを強みとし、「フレキシブル(柔軟)に対応して、時代に合わせて変化してきたブランドです」と胸を張ります。
オルビスを立ち上げた1987年いえば“バブル最盛期”の時代。そこで笹川が「当時のオルビスはどのような位置づけだったのですか?」と伺うと、小林さんは
「当時の化粧品メーカーは“プラスの論理”で(商品を出すごとに)絢爛豪華になっていくなか、私たちは“マイナスの論理”で世の中に出ていきました」と言います。例えば“ゴミをなるべく少なくしたほうがいい”ということから、ピロー包装に化粧品を入れるなどの工夫を施しましたが「当時は“地味だ”“ダサい”と言われて、最初の5年くらいは売れなかったんです」と明かします。
しかし、オルビスは1,000~2,000円代の商品を中心に販売していたことから、「バブルが崩壊した、いわゆる『失われた20年』のど真ん中、ユニクロさんが伸びたときと同じタイミングで(業績が)どんと伸びた感じですね」と振り返ります。
◆代表取締役社長就任から現在までを回顧
小林さんは、2002年にポーラに入社した後、同期とともに2009年に社内ベンチャーで敏感肌に特化したブランド「ディセンシア(DECENCIA)」を立ち上げ、こちらも「最初の3年ぐらいは全然うまくいかなかった」と背景を語りつつも、最終的には約50億円を売り上げ、営業利益約10億円規模にまで成長させます。その後、2018年にオルビスの代表取締役社長となり、同ブランドのリブランディングに尽力しています。
改めて社長就任から現在までを振り返っていただくと、「まずリブランディングするために中身の構造改革をおこないましょうと。そのためには、お客さまのブランド体験の設計を変えていくということなのですが、オルビスは“失われた20年”に(業績が)伸びた会社なので、相対的に単に伸びた会社よりも成功体験の価値が非常に大きいんです。そこを変革することでいうと、組織的な問題が非常に大変でした」と小林さん。
そんな苦労を重ねながらも変革に思い切り踏み込み、「コーポレートロゴから売れる商品の価格帯など、全部の中身を変えていくことに取り組んできた5、6年間でした」と語ります。
◆いち早い「アプリ」投資が“強み”に
構造改革を進めていくうえで「“お客さまのブランド体験をどう設計し直すか”という点に最も意識した」と言い、「そのコア(中核)としてデジタルを使ってDXを推進して、わりと早めに“アプリ”というものに投資して、どういうふうにお客さまのブランド体験を作っていくか、というところにかなり注力して手をつけていきました」と小林さん。
そうした取り組みの甲斐もあって、就任直後の2018年にパーソナライズ(顧客一人ひとりの属性や購買・行動履歴などに基づきユーザーにとって最適な情報やサービスを提供すること)のコンテンツをラインナップした「ORBIS公式アプリ」をローンチ。
そのなかの1つである、オルビスの美容部員が長年培ってきたノウハウをAI(人工知能)に解析させ、オンライン上で「パーソナルカラー診断」を無料で楽しめる機能(パーソナルAIメイクアドバイザー機能)によって、ダウンロード数を一気に伸ばしました。
さらには、顔写真を読み込むだけで、オルビスが独自開発したAIがフェイスプロポーションタイプを判定し、自分に似合う眉の形をチェックできるサービス「AIアイブローシミュレーター」も。収録前に実際に試してみた笹川は「“明日から眉毛の描き方を変えよう”と思うくらい(診断結果にしっくりきて)感動しました!」と絶賛すると、小林さんは「我々のアプリに関しては、現場の美容部員の知見をAIに相当取り入れているので、そのリアルさは、かなり強みになっているかなと思います」と胸を張ります。
さらには、コロナ禍を経た気づきも大きかったと言います。というのも、コロナ前は現在よりもDXに振り切り、カタログ販売やコールセンターを縮小させ、アプリを中心に投資するなど、デジタルで完結できるような戦略をとっていたそうですが、「コロナ禍にデジタルの世界で暮らしたことで、DXの本質って“デジタル化の比率を上げること”ではなく、顧客価値を上げるための“ブランド体験としてデジタルをどう活用するか”ということが非常に重要なんだと気づいて、デジタルとリアルを組み合わせるほうにシフトしていきました」と話していました。
次回6月22日(土)の放送も、引き続き、小林さんをゲストに迎えてお届けします。オルビスが進める具体的なDXの話についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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6月15日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年6月23日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里