スカートの澤部渡がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「GOODYEAR MUSIC AIRSHIP~シティポップ レイディオ~」(毎週土曜 11:00~11:25)。1970年代から80年代にかけて流行し進化するシティポップ。歴史的名曲から最先端の進化系まで、澤部のセレクト&解説でお届けしていきます。
5月18日(土)と25日(土)の放送では、ゲストにグソクムズのたなかえいぞをさん(Vo/Gt)がゲストに登場。ここでは、5月25日のオンエアの模様を紹介します。たなかさんお気に入りのシティポップの紹介や、メジャーアルバムの制作エピソードなどを語ってくれました。
(左から)たなかえいぞをさん、パーソナリティの澤部渡
グソクムズは東京・吉祥寺を中心に活動する4人組バンド。2021年発表の1stアルバム『グソクムズ』は「第14回CDショップ大賞2022」に入賞し、音楽ファンのあいだで注目を集めます。2023年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL」の「ROOKIE A GO-GO」に出演。2024年4月、アルバム『ハロー!グッドモーニング!』でメジャーデビューを果たしました。
◆たなかが考える“シティポップ”を澤部が読み解く
澤部:私は1987年生まれで今年37歳なんですけども、(たなか君は)今年29歳でしたよね?
たなか:はい。1995年生まれです。
澤部:世代の違いでシティポップ観ってだいぶ変わってくると思うんです。たなか君から見てシティポップをどう捉えていますか(笑)?
たなか:シティポップって難しいんですよねえ(笑)。僕的には鍵盤が入っていてほしい気持ちがあって、あとは管楽器もあったりと、いわゆるフォークロックから離れたものになるのではないかと思っています。
でも、ボブ・ディランの「Like a Rolling Stone」も鍵盤が入っているから何とも言えないんですけど(笑)。ブラックミュージック的なノリ、グルーヴ感がありますよね。あとはカッティングの要素もサウンドに入っていてほしいなと思いますね。
澤部:なるほど。シティポップって実態のない言葉なのにみんなが言い出しちゃっていますよね(笑)。
たなか:そうですよね。名前が独り歩きしているような感じがします。
澤部:実は、事前にたなか君から好きなシティポップのアンケートを書いてもらいました。1つ目が山下達郎さんの「MUSIC BOOK」、2つ目が大瀧詠一さんの「ペパーミント・ブルー」、3つ目が松任谷由実さんの「DOWNTOWN BOY」、最後が大貫妙子さんの「都会」です。80年代の曲がすごく多いですね。
僕が最初に思っていたシティポップって70年代の音楽、ニューミュージックと言われている音楽の、より洗練されているものっていうイメージがあったんですよ。そこのギャップを埋めるのにこの何年かは苦労しました(笑)。たなか君の書いてくれたリストを見て、羨ましくもあったんですよね。最初からそこにいれたらどんなに楽だったかと思いました。
たなか:実は僕もちょっと苦労しました(笑)。最近の音楽シーンとかバンドの感じを見て、80年代がシティポップでいいんじゃないかなと思ったんですよね。
澤部:その辺りがリストににじみ出ていて興味深かったです(笑)。「ペパーミント・ブルー」が入っているのが1つの象徴のような気がしますね。シティポップ的な大瀧さんって、人によっては「君は天然色」といったものがあるなかで、「たなか君はこれなんだ!」と思って嬉しくなりました(笑)。
たなか:大瀧さんのウォール・オブ・サウンド(音圧を上げるための音楽制作手法で、音の壁のようにぶ厚く、迫力のあるサウンド)的な音楽って「ザ・大瀧サウンド」といいますか。グソクムズ的にもシティポップというよりはウォール・オブ・サウンドをもう1回できたらという思いがあります。
澤部:それこそ先週聴いてもらった「ガーリーボーイ」(グソクムズの楽曲)のギターの感じとかは、カスタネットをエレキギターに置き換えた部分に聴こえるといえば聴こえる。
たなか:実は、同じギターを何本か重ねています。そこはリスペクトしていますね。
澤部:そういうことだったんですね。スッと入ってくるんだけど一筋縄ではいかない部分、根性のようなものを感じたんですね。
たなか:(笑)。頑固なのかもしれないですね。
澤部:めっちゃカッコいい。わかります。
◆シティポップは郊外から見える都会の音楽?
澤部:いろいろ考えていたなかの1つとして、シティポップというのは本来“郊外の音楽”なんじゃないかなと思っている節があって。ユーミンだったら八王子だし、達郎さんは練馬あたりの風景だし、そういうところから都市を見る眼差しがシティポップになり得るんじゃないかと思っていた時期があったんです。
そういう流れのなかにceroとかもわりと中央線の音楽だし、その先に武蔵野のグソクムズが出てきたのは、自分にとってはわりと象徴的だったんですよね。
たなか:嬉しいです。
澤部:生まれた場所で音楽が変わったような感覚ってあります?
たなか:育ってきた環境(による音楽への影響)はあると思いますね。吉祥寺が地元というのもあって、いい田舎感もあれば都会っぽいところもあります。都会を見るというよりかは、都会のなかにいる感じ。そこが故郷なのでしょうがないというところはありますけども、そういうマインドはあるかもしれないですね。
澤部:やっぱりそういう目線で街とか暮らしを描いてきたわけですもんね。
たなか:故郷って感じです。
澤部:では、吉祥寺という街がグソクムズに与えた影響ははかり知れない?
たなか:出身は僕だけなんですけど、今でもスタジオは吉祥寺ですし、けっこう影響は大きいと思いますね。
(左から)パーソナリティの澤部渡、たなかえいぞをさん
◆メジャーアルバム制作で意識したポイント
澤部:先月リリースされたメジャーデビューアルバム『ハロー!グッドモーニング!』のお話をしていきたいと思います。アルバムとして最高だったという話を先週しましたけども、アルバム最後の曲「ハロー!君といる」がフェードアウトで終わるのが最高だったんですね。そこでもう1回CDが頭に戻ったとき、エンディングの感じで1曲目の「シグナル」が始まるじゃないですか。あれがめちゃくちゃ気持ちいいなと思いました。
たなか:ありがとうございます!
澤部:最初聴いたときは最初の部分って気にならなかったんです。音がイントロダクションみたいな感じで鳴りますけど、あれが最後の曲の演奏パートだったんですよね?
たなか:そうですね。最後と繋がるっていうのをやりたくて。
澤部:あれはカッコよかったです。やはりアルバムということに相当意識をされたのでしょうか?
たなか:はい。前回の『陽気な休日』というアルバムは、けっこうバラエティに富んだ作品で面白かったんですけど、アルバム1つで1つの作品だというコンセプトでできなかったねという話があったんです。今回は1つの作品にしようとみんなで決めて作りました。ストーリーチックにしたかったというか。
澤部:制作されるにあたってコンセプトもあったのですか?
たなか:特にコンセプトはなかったんですけど、音でストーリーを作りたい気持ちがありました。
澤部:だからこそ、「コネクション」みたいな曲も入ってくるとグッときますよね。あと、「ため息の逃げ場」もすごく好きです。終盤にああいうアコースティックなものが入ると、やっぱりグッときますね(笑)。
◆言葉では表現できない“よさ”がある
澤部:「君の隣」はシティフォーク、ニューミュージック的な匂いもありながら、グソクムズらしい1曲ですね。めちゃくちゃ素晴らしいです。
たなか:ありがとうございます。
澤部:やっぱりメロディーがいいですね。この曲を書いたのは堀部(祐介)君ですけども、僕、堀部君の曲が好きなんですよ(笑)。
たなか:けっこう刺さっていますよね。
澤部:そうそう。「グッドナイト」も堀部君だよね。
たなか:メンバーも堀部の楽曲は素敵だよねって話しています。お手本みたいな感じですよね。
澤部:「何がいいか」を言葉で言いづらいよさがあるんですよね。ここのメロディーがどうとか、ありきたりなことはいくらでも言えるんだけど、言葉にしづらいよさがあって。
僕は映画とか漫画でも「これは言葉にできないわ」と思う作品が好きなんですよ。堀部君の曲はそういう部分があって好きですね。では、最後にリスナーに向けてメッセージをお願いします!
たなか:4月3日にリリースした『ハロー!グッドモーニング!』をみなさんぜひ聴いていただきたいと思います!
グソクムズ『ハロー!グッドモーニング!』(ソニー・ミュージックレーベルズ)は好評発売中
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5月25日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年6月2日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:「GOODYEAR MUSIC AIRSHIP~シティポップ レイディオ~」
放送日時:毎週土曜 11:00~11:25
パーソナリティ:澤部渡(スカート)