モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。9月6日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『内閣感染症危機管理統括庁』発足 その背景は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
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◆「内閣感染症危機管理統括庁」が発足
政府の感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日(金)に発足しました。
吉田:塚越さん、まずはこの組織を発足させた背景を教えてください。
塚越:今回、新型コロナウイルスの対応がうまくいかなかった反省を踏まえて、省庁や関係機関とのやりとりを一元化する司令塔をつくるのが発足の目的です。
コロナは初動対応がうまくいきませんでした。PCR検査が抑制され、他国と比べても検査が十分に受けられなかったことや、保健所への電話がつながらなかったことなど多々ありました。
また、重症者が入院できず、ワクチン開発も海外に遅れを取りました。他にも、空港の水際対策、学校の一斉休校の混乱、緊急事態宣言による飲食店の休業要請など、その是非は別にしても、とにかく関係者も振り回されて混乱しました。
ユージ:今の話を聞くと「そんなこともあったな」と思ってしまいますが、実はこれは数年前の話で、そんな前のことではないんですよね。
塚越:そうですね。実は2009年のインフルエンザ流行を総括した報告書にも、当時も「具体的な行動計画がなかった」と準備不足が指摘されていました。2020年の感染症流行時にも結局準備ができていなかったということで、今回の統括庁は次の感染症により本気で取り組もうという意図のもとで発足したものです。
◆次なる感染症流行に備えた体制作り
吉田:「内閣感染症危機管理統括庁」は、どのような組織ですか?
塚越:まず、4月に成立した改正内閣法に基づいて、統括庁は内閣官房に設置されます。平常時は38人が常駐し、緊急の場合は関係省庁の職員が併任を含め、最大300人態勢となります。担当は後藤茂之経済再生担当大臣で、組織のトップは栗生俊一官房副長官です。
事務を統括する感染症危機管理対策官は、厚生労働省の医務技監となっています。組織の発足に合わせて、専門家などがメンバーとして所属し、尾身茂氏が議長をつとめていた「新型インフルエンザ等対策推進会議」は組織を見直しすることになり、下部組織の「分科会」も廃止される見通しです。最近、尾身さんが退任されたのには、こうした事情があります。
今回の統括庁の特徴は、省庁間の縦割り構造を廃止することにあります。コロナ禍では、ワクチンは厚労省、水際対策は外務省や法務省、自治体との調整は総務省など個別に動いていて、総理も個別に指示を出していました。統括庁はその名の通り、より省庁間の連携が強調されるので、総理の指導力が発揮しやすくなることがあります。
また、次の感染症に備えて、2013年に策定したインフルエンザに対する行動計画を改定し、医療提供体制やワクチン開発、行動制限の基準や経済活動との両立など、メンバーが新しくなる会議の意見も参考に、具体的な行動計画を1年かけて策定する方針です。
◆「今回のコロナ禍をどれだけ教訓にできるか」に期待
ユージ:「内閣感染症危機管理統括庁」の発足について、塚越さんは、どのような印象を持たれていますか?
塚越:日本は2009年に流行したインフルエンザの教訓が活かされなかったわけで、今回も海外と比べて対策に遅れを感じることもありました。重要なのは「今回のコロナ対策をどこまで教訓にできるか」ということです。
政府は昨年6月に有識者会議で、300ページを超える報告書をまとめ、そこでの課題などを参考に今回の統括庁がつくられました。そうした意味では「検証」されたことになるのですが、とはいえ新たな組織になればメンバーも代わるので、統括庁としての検証があっても良いのかなと思います。
非常に大きい社会問題となったコロナなので、次のステップに進むために、検証をしたり課題を発見したりすることが非常に大切なことだなと思っています。個人的には、これまで政府と関係がなかった人が中心となって、さまざまな検証をおこなっても良いかなと思います。
例えば、保健所職員の不足を指摘されていますが、そもそも最初から保健所がコロナ対応に関してすべてを担う必要があったのかなど、こういう根本的なところから課題を外から出していくことが必要だと思います。
今回、統括長にこれらをおこなっていただくことが個人的に重要だと思います。同時に、検証などいろいろありますが、国のしてきたことを忘れるべきではないですし、政府もより検証しメディアもそれを報道する。それによって、国民全体でコロナの課題や教訓を共有して忘れないことが重要じゃないかなと思います。
ユージ:あとは、各省庁に負担がかかってしまって、専門分野ではないことを急におこなわなければならなかったことも背景にあったと思います。それゆえに、うまくいかなかったこともあると思うのですが、これがまとまることによって他のところの負担が軽くなり、本来の仕事に集中できる省庁も出てきて良い形になればいいですね。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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9月6日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月14日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世