モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。6月13日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「起用が始まった"AIモデル・タレント"の現在地」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです(AI生成画像)
◆AIタレントがテレビCMや広告に
総合衣料品のチェーンストア「ファッションセンターしまむら」が、販促にAIモデル「瑠菜(Luna|るな)」を起用したことが話題になっています。
2023年9月には日本初のAIタレントを起用した伊藤園のお茶のCMが話題になり、今年4月からスタートしたテレビCM第2弾にも登場。今後、こうしたAIモデルを目にする機会が増えるかもしれません。
そこで今朝は「AIモデル・タレントの現在地」について塚越さんに解説いただきます。
ユージ:お茶のCMを見たことがありますが、かなりリアルですよね。最近は広告にAIのモデルやタレントが使われるのが当たり前になりつつありますね。
塚越:そうですね。AIモデルは「デジタルヒューマン」などとも呼ばれますが、日本では2015年に「Saya」という女子高生の3DCGキャラクターのモデルが登場して話題になりました。
実は「不気味の谷現象」といって、AIで生成された人物や人型ロボットがあまりにも人間に似てくると、見る者に違和感や嫌悪感を抱かせるとされる現象があります。
この「不気味の谷」は、映像レベルでは数年前にほぼ克服されたとみられています。今のAIは違和感がなかったり、逆に人間っぽい不完全さを演出したりすることも可能です。
今回のしまむらのAIモデル「瑠菜」は、20歳の服飾専門学校生で、モデルを目指すためにSNS活動を開始したという設定になっています。若い女性からの支持を意識したビジュアルに仕上げて、5月23日(木)にオープンした東京・下高井戸店の販促ポスターチラシにも起用され、今後もSNSをベースに広告で活用するとのことです。
ユージ:いま瑠菜さんのInstagramの写真を見ていますが、すごく自然ですよね。映像になると口角の動きなどのAIっぽさが気になりますが、写真だと分からない! レベルが高い!!
◆人間よりも低コストで「ノースキャンダル」
塚越:お茶のCMで使われたAIモデルは、「30年後の自分と、今の自分が別人に見えないように、きれいな年齢の重ね方をしよう」という内容を表現するためにAIタレントを起用しています。
しまむらもお茶のCMのAIモデルも、どちらも「AI model」という会社が作成しています。この会社は3月から三越伊勢丹と協業して、ECストアで専用のAIモデルを提供しています。
このように、AIを利用した広告は今後も広がっていくとみられています。非常にクオリティが高いからこそ広がっているということですよね。
吉田:メリットとしては何があげられますか?
塚越:しまむらによりますと、今回AIモデルを起用した理由は10代〜20代の若い女性客の取り込みや、変化の速いファッショントレンドに迅速に対応するといった目的があります。AIはスケジュール調整や撮影時間がかからないこともあり、人間よりコストを抑えつつ、より見せたい広告を展開できるということです。
もっと言うと、AIモデルはスキャンダルを起こさないし、SNSで変なことを言いませんよね? 中国では、AIモデルやデジタルヒューマンが日本以上に普及しており、バーチャルアナウンサーやバーチャルインフルエンサーが、イベントの司会やニュースを放送しています。また中国では、特に政治的発言に関して日本よりもセンシティブなので、人間よりAIモデルが求められる傾向にあります。
ユージ:とにかくAIはノースキャンダルなので、そこは大きいかもしれませんね。
◆昨年6月にはAIグラビアアイドルの写真集が発売中止に
ユージ:AIモデルというと、去年6月に集英社が「さつきあい」というAIグラビアアイドルの写真集を発売しましたが、およそ1週間で発売中止になったことも記憶に新しいですよね。
塚越:さつきあいは、「実物のアイドルに似ているのではないか?」という点が問われました。生成AIで人物の画像を作成する際、学習元には現実の人間の写真や映像が必要です。証明するのは難しいですが、現実の人間をどれくらい学習させているのか、どういうふうに人間の画像が使われているのか、著作権・肖像権の問題はどうなっているのか……などが問われました。
他にも、人間のタレントやカメラマンの仕事を奪うのではないか? など、法律だけでなく、社会的な倫理の問題も問われたこともあり、集英社はこうしたAIの課題に関する検討が不十分だったということで発売中止にしました。この問題もあって、生成AIの利用ルールなどについて注目が集まりました。
◆企業がAIモデルを起用する際の課題は?
ユージ:企業がAIモデルを起用する際の課題はありますか?
塚越:法的な問題は細かくありますが、生成AIでつくったものが、あまりにも現実の人と似ている場合は「創作的寄与(創作に関与している)」という形で著作権侵害に問われる可能性はあります。
海外では、自分で作った曲に(生成AIを利用した)別のアーティストの声を使って歌わせた曲を一般人が配信サイトにアップして問題となり、アーティストの所属レーベルが削除要求をおこなって曲が削除されたこともあります。著作権についてはいろいろと議論されていることもありますが、企業がAIを利用する際は、そうした部分もチェックする必要があります。
ユージ:AIモデルの起用は、これからも進んでいくのでしょうか?
塚越:便利ですし、モデルとして使うのなら人間よりも時間がかからずに写真や映像が作れます。これからもAI モデルの活用はどんどん進んでいくと思いますが、逆に全部がAIになってしまうと、消費者としてはこれはこれでつまらないですよね。そうなると、協業していく未来も考えられるのではないでしょうか。おふたりは芸能の仕事ということもあり、AIはライバルですかね。
ユージ:CMに関してはAIに置き換わる可能性がありますが、テレビのトークに関してまだ置き換えられないと思います!!
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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6月13日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年6月21日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世