脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
1月27日(土)の配信では「医療職でのAI(人工知能)活用方法」に関するお悩みに答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの相談>
私は医療職に従事しています。脳科学とも密接に関係していることも多く、茂木さんの番組は毎週勉強になります。
昨今話題のAIに関しても、やはり身近に迫ってきた課題であり、チャンスでもあると思っています。今年初めてAIを利用して「満足度調査」のアンケート内容を作成しました。アンケート以外でも、医療業界でAIを上手に活用していきたいので、何か良い活用法があればアドバイスいただきたいです。
<茂木の回答>
茂木:なるほど。AIでアンケート内容を作成したということですが、対話型AIチャットサービス「ChatGPT」などを使って「○○についてアンケートを取るとしたら、どういう質問が考えられますか?」みたいな使い方をされたのでしょうか。それを基にご自身で微調整したり、(AIが質問に答えて生成した項目を)取捨選択して作ったのかもしれませんね。
そういう使い方は、とても良いです。ChatGPTのような人工知能は、たとえば、今までの人類が医療関係の満足度について語ってきたことを全部学習しているので、AIに聞くと“バランスの良い提案”が返ってきます。
それを土台にして、各クリニックや医療関係者の視点を入れると、とてもバランスが良く、ユニークで個性のあるアンケートが作成できると思います。
ただ、いまお話した“それぞれの視点を加える”ということが、「AIの活用」という意味においては非常に大事なことなのかなと。つまり、AIは医療に限らず、いろんな現場で「人が思いやすいこと」「多くの人が気にかけていること」、そして「この時代に重要なこと」を把握するには、とても良いツールです。
そのAIを使って(平均値を)把握したうえで、あとは、それぞれの地域、事業所、AIを使う方の視点、興味……などのテイストを少し付け加えていけばいいと思います。
そういう形でAIを土台として使って、そのうえに自分の個性を盛り付けていく手法が、おそらくこれから主流になっていくのかなと思ったりもします。
医療分野は、“人”を相手にしています。そういう意味においては、一人ひとりの患者さん、お客さん、その方々の個性に向き合うことは、すごく大事なことです。
逆に言うと、AIが人間全体の平均値みたいなものを支えてくれるとするならば、それをうまく活用することによって、今度は一人ひとりの患者さんや顧客の個性を大事にする向き合い方ができるのかなと思ったりもします。
全体の平均の土台に、一人ひとりの個性を積み上げていくことによって、医療自体の精度や質を向上できる可能性があるのかなと思います。
ちなみに、私のいまの回答は、AIを使わずに自分で答えているのですが、こういう回答自体もAIに聞くと、ある程度の平均的な答えは出してくれるような時代になっています。本当にすごい時代になったなと思うのですが、平均的なものごとはAIに任せて、そこからの個性は自分で工夫しようと。そういう時代になっているのかもしれませんね。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎