作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
3月29日(日)の放送は「村上RADIO~ジャズで聴くクラシック音楽~」をオンエア。今回の放送は、ショパンとバッハを中心に、クラシック音楽をジャズアレンジで聴く、村上RADIOならではの特集。村上さんが選んだ、とっておきの「ジャズ+クラシック」をお届けしました。
この記事では、後半1曲について語ったパートを紹介します。
「村上RADIO」
◆Eldar Djangirov「Etude Op. 2 No. 1」
またメールを読みます。
Denver Boston(62、女性、沖縄県)
「いつもradikoで東京FM、FM沖縄、FM福岡と日曜日に3回追いかけてきいています。素敵な番組をいつもありがとうございます。わたしの職業は病理医です。病理医は患者さんの名前は覚えてなくても、顕微鏡でスライドを見たら、あーこの人と思いだすことができます。作家/DJの村上さんなら、お便りの文章だけで、あーこの人と思い出せたりするのでしょうか?」
3回追いかけてこの番組を聴いてくださっているんですね。素晴らしいです。ありがとうございます。僕も心して3回分みっちりがんばりますね。はあ、病理医の人は顔とか名前じゃなく、スライドの中身で患者さんを覚えちゃうんだ。プロの世界ですね。
そういえば、僕は朝早く起きて、近所をジョギングとかウォーキングとかをしているのですが、犬を散歩させている常連ウォーカーとよくすれ違います。そういうとき、僕は相手を個人としてより、「ああ、この柴犬のお母さん」とか「この黒犬のお父さん」とか、犬の連れとして特定しちゃいます。話のレベルは違いますけど、主体によってではなく属性で人をアイデンティファイするという意味では、それにちょっと似ているかもね。
スクリアビンの「練習曲」作品2-1と言われてもピンとくる方はおそらく少ないだろうと思います。でもこれ、なかなか素敵な曲です。ウラジミール・ホロヴィッツが鮮やかな演奏をレコードに残しています。ホロヴィッツとスクリアビンは親友だったんですね。
ジャズ・ピアニストのエルダー・ジャンギロフがこの曲に挑みます。キルギスタン生まれのジャンギロフさん、なにしろ目が覚めるようなテクニックの持ち主です。 聴いてください。スクリアビンの「練習曲」作品2-1。目が覚めます。
僕はクラシックのレコードはだいたいのところ、作曲家の生まれた年の順番に棚に並べています。つまりバッハはヴィヴァルディのあとで、ハイドンはバッハのあとで、モーツアルトはハイドンのあとで……という具合です。でもどっちが前で、どっちがあとだったか、わからなくなることがよくあります。たとえばプロコフィエフとストラヴィンスキー、どっちが年上だったかなんて急には思い出せないですよね(正解はストラヴィンスキーですが)。だから「作曲家の生年(生まれた年)」というリストを個人的にこしらえておいて、ときどきそれをチェックながら、レコード棚を整理しています。レコード・コレクションも数が増えるとなかなか大変なんです。はい。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ジャズで聴くクラシック音楽~
放送日時:3月29日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/