本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
7月10日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「20年ぶりの“新紙幣”と38年ぶりの“円安の新たな要因”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆20年ぶりの新紙幣発行
浜崎:今回、宗さまには「20年ぶりの“新紙幣”と38年ぶりの“円安の新たな要因”」について、お話しいただきます。
やしろ:まずは7月3日に発行された新紙幣ですが、もう手にされましたでしょうか? 僕はまだ見ていないです。
宗正:早速、手に入れました。新しいモノ好きですからね(笑)。新紙幣や新貨幣って、初めて手にした時はなんだかオモチャの紙幣やゲームセンターのコインみたいな感じがしますよね。
やしろ:言われてみれば、そういう違和感はあります。
宗正:今回の新紙幣発行の主な目的は、「偽造防止」と「ユニバーサルデザイン」の2つです。数字も大きくなって、例えばインバウンドの外国人観光客にも一目で分かるデザインになっています。日本銀行は来年の3月末までに、約75億枚を印刷して世の中に流通させる計画です。
やしろ:多すぎて、全然ピンとこない数字ですね。
宗正:計画通りに進めば、来年の3月末までに、旧紙幣のほぼ半分が新紙幣に入れ替わることになります。
やしろ:そんな勢いで入れ替わるんですか?
宗正:前回、新紙幣が発行された20年前も、ほぼ同じ期間で入れ替わっています。ただ、来年の3月末でも、まだ半分しか入れ替わっていない訳ですから、使い間違いには注意が必要です。そして詐欺にも要注意ですね。
やしろ:「新紙幣発行に伴い、旧紙幣が使えなくなる」と呼びかけて、お金をだまし取ろうとする詐欺があるんですよね。旧紙幣が使えなくなるなんてことはないですから、そこは気をつけないといけないですね。
宗正:「旧紙幣は回収します」や「旧紙幣を振り込んだら新紙幣に交換します」といった類の詐欺にも要注意です。
やしろ:ラジオをお聴きのリスナーの皆さまもお気を付けください。
◆家計の金融資産が増加 「貯蓄から投資」の流れが加速か?
やしろ:新紙幣発行のタイミングでお聞きしたいことがあります。国内の個人の金融資産について、その大半が現預金という話をよく聞きますが、最近もそうなのでしょうか?
宗正:実はその動き、徐々に変わってきているんですよ。「日銀の資金循環統計」というデータがありますが、6月下旬に発表されたばかりの2024年3月末の「家計(一般家庭)の保有する金融資産残高」は2,199兆円でした。前年比で7.1%の増加です。
やしろ:すごいですね。
宗正:5四半期連続で過去最高を更新です。注目すべきは個人の金融資産全体の増加率が前年比で7.1%増加なのに対して、株式、それから投資信託のそれぞれが30%を超える大幅な増加なんですよ。
やしろ:すごい!合わせてじゃなくて、それぞれですからね
宗正:一方、現預金は、わずか1.1%の増加ですから、相対的に割合は小さくなっています。こうした投資信託や株式のようなリスク資産が大きく伸びた背景には、続く円安と新NISAがあります。
やしろ:大きそうですね。
宗正:個人投資家も急増していますし、構造的には円安がベースとして続きそうですし、あとは物価高。インフレもまだ始まったばかりなので、これからも投資信託や株式といったリスク資産は伸び続ける可能性があります。貯蓄から投資へのシフトという形で、今後ますますこの動きは加速すると思います。
やしろ:変化は出てきているということですね。
◆「キャッシュレス決済4割」政府目標は前倒しで達成しそう?
やしろ:近年はキャッシュレス決済の使用頻度も急速に増えておりますが、この辺りの影響はどうなのでしょうか。
宗正:キャッシュレス決済比率の政府目標というのがあるんです。
やしろ:ということは、政府はキャッシュレス化を推奨しているんですか?
宗正:そうなんです。「2025年に国内の決済全体の4割をキャッシュレス決済に」という目標を掲げています。昨年2023年は、このキャッシュレス決済比率が39.3%に達したんですよ。
やしろ:いよいよですね。
宗正:1年前倒しで、今年中には十中八九、政府目標を達成できるでしょうね。つまり世の中に出回る現金の量もその分だけ減るということになります。
やしろ:ちょっと話は戻りますけれども、20年毎に紙幣のデザインって変わっているじゃないですか。「今回が最後のリニューアルだ」と言っている専門家の方もいるのですが、その可能性もあるんですか?
宗正:その専門家の方は、こうした背景を踏まえてそう話されたのでしょうね。ちなみに昨年のキャッシュレス決済の内訳は、金額順にトップがクレジットカード、全体の83.5%で105.7兆円。次がコード決済の8.6%で10.9兆円です。次いで電子マネー、デビットカードと続きます。
今回のこのタイミングで新紙幣が発行されたことを将来の私は「ああ、20年ぶりに新紙幣が発行されたあの時、日本の貨幣経済の動きが大きく変わったな」と思うでしょうね。こういう見方になるのが今のタイミングじゃないかなと、私は思いますね。
やしろ:このタイミングは大きな節目なんですね。
宗正:節目ですし、もう既に今、現金をあまり使わないですよね。
やしろ:そうですね。お店によっては、まだまだ現金だけしか取り扱っていないところもあるので、多少は持つようにしていますけれども、使わなくなってきましたね。
◆円安要因の1つ“デジタル赤字”
やしろ:為替相場では相変わらず円安圧力が強いですが、以前にデジタル赤字も新たな円安要因とおっしゃっていましたね。この辺りの話をお伺いしたいです。
宗正:国の家計簿に相当する国際収支。輸入額のほうが輸出額よりも多ければ赤字です。輸入はつまり海外にお金を支払いますからね。そして、その逆が黒字です。
デジタル赤字は、デジタル関連のサービスや商品を輸入する額が輸出額を上回ると、国際収支の赤字要因となることを指しています。最近はSNSをはじめ、パソコンのOSやクラウド、ゲームや動画のサブスクリプションなど、その多くを海外の企業が運営していますよね。
やしろ:そうなんですよね。iPhoneも海外製品ですけれど、そうしたスマホを使ったサービスの決済をしていると、海外にお金が流れてしまうということですよね。僕はNetflixが好きで、他にもいろいろなサブスクに入っていますけれども、そうしたサービスを利用すればするほどお金が海外に流れている……ということなんですよね。
宗正:それをデジタル赤字と言います。海外企業の商品やサービスにお金を支払うということは、円を売ってドルに替えて支払うということ。円売りは、円安につながりますからね。これと同じ現象が、資産運用立国を掲げるこの日本で、個人投資家の急増に伴い新たに生まれています。
やしろ:僕らの若い頃だと、20代で海外資産を持っているなんて人は、周りにはほとんどいなかったと思います。だけど今、新NISAも出てきて、若い方も投資信託のような海外資産を持っているじゃないですか。これも今おっしゃっていたのと同じ話ですよね。
宗正:海外資産を含む投資信託のようなファンドに投資する時には、一旦、円を売りますからね。まったく同じ話です。
◆海外株・海外ファンドへの投資増加 一方で中長期的な円安要因に…
やしろ:「資産運用立国日本」といった政府目標も今の円安要因の1つになっているということ。もう少し、その辺りを詳しくお聞きしたいのですが?
宗正:1つの具体例として、投資信託を経由した個人投資家の円売りが、今の円安要因になりつつあります。最近発表されたデータによると、今年の上半期(1月~6月)の海外の株式やファンドの買越額は6.1兆円でした。
ピンとこないかもしれないですが、ちょうど同じ期間の貿易赤字額が4兆円前後でしたから、それを上回ってしまったんです。
半年間で6.1兆円ということは、1ヵ月およそ1兆円ですよね。しかも海外の投資信託を買うこの動きは、今年の1月から始まった新NISAの中でも人気の積立投資枠で買っているケースが多い。積立投資ということは、買って短期間ですぐには売らないんですよ。
やしろ:そうですね。中長期で持っていることが前提で、ちょっとずつ積み立てて投資していくものですからね。
宗正:買ってすぐ売れば、円安に振れた分だけまた円高に振れる形で戻ってくるのですが、積立投資だとそうはいきません。構造的な円安要因につながると考えておいた方が良いと思いますね。
やしろ:近年続く円安を見ていて、どこかで「1ドル130円くらいまでは戻るのかな?」なんて思っていましたけれど、今のお話を伺っていたら、しばらくは円高に戻る要因もないという感じですかね。
宗正:流れの根底に円安の要因が幾つもある訳ですよ。少し前にやしろ本部長から「円安は止まらないんですか?」と聞かれたときに、普段だったら明るく「そんなことはないですよ」と言っていたんですけれど、為替介入などの一時的な影響を除けば、続く可能性が高いですね。
やしろ:そうですね。1ドル160円が当たり前くらいの感覚にもなり始めていますしね。ただ国内で資産運用を始める人が増えているということは、むしろ良いことだと思うのですが、その点はどう考えればいいでしょうか。
宗正:これは素晴らしいことです。寿命も伸びる中、生きていく上で投資は大事なことですから。
今日お話ししたことは、個人投資家の急増によって、国際収支的な懸念が1つ新しく生まれたという事実です。日本経済のこれまでの円安につながる構造的な円売りは、長い間、輸入額が輸出額を上回る貿易赤字によるものだったんですね。
この貿易赤字を金額的に上回る投資の流れが新たに生まれたという事実に注目したいと思います。国内資産を投資対象とした魅力的な金融商品が生まれることが、1つの解消策ではあるんですが、ただそれも簡単ではないでしょうね。
やしろ:みなさん年金も含め、いろいろなことで将来に不安を感じていると思います。老後に2,000万円必要だと言っていたと思ったら、いやいや4,000万円必要だと言われたり……。じゃあ、今貯めている100万円の価値って、数年後どうなっているんだとか、いろいろとお金の価値が急速に変わっているので、そりゃ投資しようっていう動きはどうしても加速しますよね。
宗正:年金の受取額も人によって違いますからね。1年に一度はその報告が手元に来るので、個々人でこれ位もらえるというのは確認しておきましょう。足りない分は自助努力(資産運用)ということですね。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保