川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を見据えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学から、最先端の農学研究を紹介します。2月7日(火)と2月14日(火)の放送では、東京農業大学 分子微生物学科の田中尚人(たなか・なおと)教授に、専門分野である「乳酸菌の研究」について伺いました。
(左から)川瀬良子、田中尚人教授
◆意外と知らない“乳酸菌”のこと
乳酸菌について、日々研究を続けている田中教授。「乳酸菌は“不思議な微生物”。微生物というと、病原菌などのイメージがあると思いますが、人に対してあまり病原性を示さなくて、良い効果をもたらすことが多いバクテリア(細菌)です」と説明します。
腸管のなかには免疫をつかさどる部分があり、「乳酸菌がそこに刺激を与えてくれると、人間の免疫力が上がる。ほかの病原菌だと、そこに毒素を与えたりして悪い効果をもたらすんですけど、乳酸菌はあまりそういう悪さをしません」と解説。
そうした良い性質がありつつも「(乳酸菌を摂取しても体内に)留まってくれないので、ずっと食べ続けないと、なかなか効果が出ないのも特徴の1つです」と補足します。
そのため、乳酸菌は毎日摂るのが望ましく、手軽に摂取できる食べ物として、ヨーグルトやキムチなどの漬物を挙げます。さらには「お腹の環境を良くする食物繊維の多い果物などと一緒に摂ると、なお良い」と言います。
現在、田中教授は、乳酸菌の潜在能力を引き出して、活用するための研究を進めており、「乳酸菌の機能に関する最新情報があるので、たくさんの乳酸菌を使って、それを評価するための実験をして、乳酸菌の種類一つひとつに対して評価をしていく。そのなかで、良い乳酸菌を見つけ出しています」と語ります。
田中教授によると、乳酸菌は約400種類もいるそうで、その種類にはそれぞれ個体差があり「乳酸菌が作る有用な物質はたくさんあるんですけど、それぞれの菌株が作る物質はそれぞれ違って、約5,000株ある」と話します。ちなみに、東京農大の教育研究施設「微生物リソースセンター」では、細菌・酵母・糸状菌など、あわせて7,500株の微生物が保有されています。
また、田中教授の研究が進むことによって、「乳酸菌の新しい機能を見つけて、それを商品化するためのベースが作れることが一番大きい」と話します。乳酸菌の株によって合う人と合わない人がいるため、「例えば、A社が商品化している乳酸菌でも合う人と合わない人がいるので、1人ひとりに合う乳酸菌を見つけることも今後の課題」と力を込めます。
◆乳酸菌にも“コミュニティ”が存在する!?
最近の研究で分かってきたこととして、田中教授は「菌叢(きんそう・ある一定の環境に存在する微生物群)」というワードを挙げます。「お腹のなかにいる、いろんな菌たちが協力し合ってグループを作り、人間の腸内環境を良くしていることは知られていますが、そのバランス調整に乳酸菌が大事だということも知られるようになりました。最近よく聞く“腸内フローラ”も、菌のコミュニティみたいなことを示します」と語ります。
例えば、2つの乳酸菌の片方が、もう一方の乳酸菌が必要とする物質を作り出したり、それを食べて生きている乳酸菌もいたり、互いに補い合いながら生きていると田中教授。「生物って、自分でものを作らなくて済むと分かったら、作らなくなるんです。乳酸菌も同様で、お腹のなかは栄養分がたっぷりあるので、自分で作らずに必要なものを取り込むだけなんです」と説明します。
最後に川瀬が「乳酸菌を研究していて、どんなところが面白いですか?」と伺うと、田中教授からは“匂い”という驚きの回答が。「甘い匂いもありますし、漬物のような匂いもあったり、それも株によって違います」と話していました。
今回の話に、川瀬は「乳酸菌って、わりと馴染みのある菌だと思って知っているつもりでいましたが、全然知らないことだらけでした(苦笑)。田中先生たちもまだまだ開拓中ということで、私たちが思っているより(乳酸菌の世界は)遥かに広いです!」と驚いていました。
<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜~木曜 15:50~16:00
パーソナリティ:川瀬良子
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/agrizm/