本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
12月10日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「資産効果の期待が高まる“2025年のクリスマス商戦”と“日銀利上げ”の可能性」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆日本国内のクリスマスの経済効果は?
浜崎:今回、宗さまには「資産効果の期待が高まる“2025年のクリスマス商戦”と“日銀利上げ”の可能性」についてお話いただきます。
やしろ:今年は1年を通じて株式市場も上昇しましたが、こういう年のクリスマス商戦は通常どんな感じなのでしょうか?
宗正:盛り上がることが多いですね。今年は日経平均株価も5万2千円台の史上最高値を更新しました。今日の終値も5万円台を維持していますので、高値圏が続くといった状況です。
アメリカ発のクリスマス商戦と言えば、感謝祭のサンクスギビングデーから始まって、ブラックフライデー、サイバーマンデー、そしてクリスマス当日までの流れです。もうすっかり日本でも定着しましたよね。
やしろ:そうですね。
宗正:株式市場が上昇すれば、株式を保有する個人も企業も上昇した分だけ潤います。これを資産効果と言いますが、保有する資産が増えれば、増えた分だけ消費活動に回る可能性も高くなります。
他に似たような用語であぶく銭効果というのがあります。これは、心理学と経済学を合わせた行動経済学で使われる専門用語なんですが、経験上イメージつきやすいですよね?
やしろ:あぶく銭効果、すごく分かります。
宗正:一生懸命働いて稼いだ10万円と、投資やギャンブルなどで思いがけず手にした10万円。どちらも10万円で価値は同じなんですが、思いがけず手にした10万円のほうは気前よくパーっと使ってしまうと。
やしろ:めちゃくちゃ分かります。でも確かに同じ価値なんですよね。
宗正:ありがちですよね、酔いが冷めた後に反省するっていう。
やしろ:そして、好調なクリスマス商戦の影響を受けやすいのはどのような業界になりますでしょうか?
宗正:代表的な業界といえばゲームやおもちゃ関連、百貨店やネットショップを含む小売業界、そして食品業界。あとは天候次第になりますが、テーマパークなんかもそうですね。
日本のGDP国内総生産の半分以上を個人消費が占めています。資産運用や投資の世界では昔から、1年の景気は良くも悪くもクリスマス商戦次第と言われてきました。クリスマス商戦で売上が伸びた企業は、業績もアップしますので、そこで働く人の収入も増えて、個人消費は活性化。加えて、その企業の株価も上昇するといった景気にとって好循環に入る訳です。
やしろ:ところで、日本国内のクリスマスの経済効果は、一体どれぐらいになるのでしょうか?
宗正:どんな経済効果も直接効果と間接効果を足し合わせて計算します。クリスマスの経済効果といえば、まずはプレゼント代やクリスマスパーティーのような飲食費ですよね。この辺りまでが直接効果です。
そして、一方の間接効果は、クリスマスシーズンなので旅行に行こうっていう旅行費用だったり、何か特別なクリスマスイベントに参加する参加費用だったり。要は計算対象をどこまで広げるのかがポイントなんですけどね。
やしろ:広げ方が難しいですね。
宗正:間接効果のすそ野を広げれば広げるほど、経済効果はどんどん膨らんでいきますが、国内のクリスマスの経済効果は、今お話した直接効果と間接効果を合わせると、約1兆円の規模になります。
やしろ:1兆円! イルミネーションを設置したり、それを見に行く人たちとか、そういったものは直接効果と間接効果のどちらに入るんですか?
宗正:普通は間接効果のほうになりますが、今お話した約1兆円の経済効果の中には含まれていません。プレゼント代、飲食費が直接効果で、間接効果が旅行費用やイベントの参加費用までというのが前提です。
やしろ:1月から12月まで色々な行事がありますが、クリスマスの経済効果は中でも最大級ですか?
宗正:最大級ですね。
やしろ:クリスマスって年々盛り上がりに欠けるっていうか、ちょっと昔よりは静かめになっている気がするんですけど、そこは関係ないんですね。
宗正:確かにその傾向はあるかもしれませんが、今と昔を比べて異なる点は、11月の第4木曜日のサンクスギビングデーからクリスマス商戦は始まっていますから、クリスマス商戦の期間がかなり長くなっているんですよ。
やしろ:なるほど。その辺りが少し違うところではあると。
宗正彰:クリスマス商戦の期間が長ければ長いほど、経済効果も高くなりますね。
◆気になる利上げ、住宅ローンへの影響は?
やしろ:そして日銀の利上げについて、年内にも利上げかというニュースが最近になって飛び交っているようですが、なぜこのタイミングでそのような情報が流れているのでしょうか?
宗正:日本銀行の植田総裁が12月1日の記者会見の場でこんなことを言ったんです。「利上げの是非について適切に判断したい」と。そしてこんな発言もありました。「高市総理、片山財務大臣とは率直に良い話ができた」と。
やしろ:ほほう。でも、当たり前の話のようにも聞こえますけど。
宗正:この良い話とは何かということなんですが、日銀は物価高が続く中で、利上げのタイミングをこれまでも探ってきました。現在の政策金利は0.5%で、この0.5%まで引き上げたのが今年の1月、つまり今年に入ってまだ利上げは1回しかしていないんです。
その間にも利上げをしたかったというのが日銀の本音なんですが、夏にはトランプ関税の話が出てきたり、秋には高市新内閣が発足したりと、影響を確認すべき大きなイベントが続いてきました。
やしろ:なるほど。利上げをしたかったところが、年末まで来ちゃったということなんですね。
宗正:そして利上げの大前提として働く人の賃上げが不可欠です。賃上げのないまま金利が上昇してしまうと、国民の生活負担は増すばかりですからね。
今くらいの時期になれば、来年の春闘の目標賃上げ率も見えてきて、その水準は前年並みになりそうだということで、このタイミングでいよいよ利上げかと。そんな話になっている訳です。
やしろ:仮に利上げになった場合、我々の生活の中で最も大きな影響を受けるのは何でしょうか?
宗正:住宅の購入費、住宅ローンへの影響ですね。多くの人が関係するところなんですが、政策金利の変動は住宅ローン金利に直接影響を与えます。
住宅ローンには大きく変動金利型と固定金利型があります。現状の住宅ローン契約者の約8割が変動金利型です。
やしろ:変動金利型の住宅ローン契約者は、8割もいるんですか。
宗正:政策金利の上昇と直結するのが変動金利型のほうで、政策金利の引き上げから変動金利型のローン金利が上がるまではタイムラグもありますが、普通は上昇します。ただ、最近は様々なタイプの住宅ローンがありますので、詳しくはお取り扱いの金融機関でご確認ください。
一般的には、借入額も大きくて、借入期間も長いのが住宅ローンです。ローン金利が少しでも上がれば、たちまち総返済額も増えてしまいます。
例えば、借入額3000万円で返済期間が35年、元利均等返済でボーナス払いなしといった典型的な住宅ローンの場合、ローン金利が仮に0.5%から1.5%に1%上昇した場合、毎月の返済額は、約1万4000円高くなって、総返済額は約587万円も増えてしまいます。
やしろ:数字のマジックだな。1%上がって500万円以上も総返済額が増えてしまうって、これはでかいですね。
宗正:こういう話をするとよく聞かれるのが、変動金利型の5年ルールです。要は仮に金利が上昇したとしても、借入れから5年間は毎月の返済額は一定にしますというルールです。
でも、これって返済額を一定にしているだけなので、毎月の返済額に占める利息の割合が増えるだけですから。
やしろ:なるほど。元金は減らない。
宗正:そして金利が大幅に上昇したときには、これまた注意が必要で、利息が返済額を上回って未払い利息が発生する恐れもあります。
金利は、上がるときも下がるときも、ものすごくスピードが速いですから。この点にも注意が必要です。
やしろ:住宅ローンを選ぶとすれば、これからは固定金利型のほうがいいんですか?
宗正:変動金利型と固定金利型の選択は、どちらのほうが得するかではなく、個々人の人生設計と照らし合わせて決めるのが良いと思います。
例えば、頭金も相当な額の用意ができて、なるべく短期間で住宅ローンを返済し終えたい人は、現状であれば変動金利型のほうが良いかもしれません。逆にお子さんの教育費用がここから先20年は必要で、しかもその額がよく分からないという人は、長期にわたって金利の変動が生じない、毎月の返済額が一定で生活設計の立てやすい固定金利型のほうが合っているかもしれません。
他には、自分は何歳ぐらいでリタイアしようって考えているのか等々、こういった人生設計と照らし合わせて考えるのが良いと思います。そして、今のお話は基本的な考え方です、詳しくはお取り扱いの金融機関にご相談ください。
◆今は金利が上昇しやすい状況
やしろ:日銀と利上げの動向について、我々はどのような動きに今後注目していけばいいのでしょうか?
宗正:12月18日(木)と19日(金)の2日間にわたって、日銀の金融政策決定会合が開かれます。そこで、今の政策金利0.5%を据え置くのか、利上げするのかが決まる訳です。
今現在、マーケット参加者は「ここで利上げをするだろう」と見ている人が大半です。株式市場も債券市場も既に月内の利上げを織り込み始めています。仮に、今月中に利上げが決まらなくても、来年の1月下旬にも日銀の金融政策決定会合は開かれますから、遅くとも1月にはあるだろうっていうのが今の大方の見方です。
そして金利と言えば、長期金利の指標となる新発の10年物国債の利回りがあります。債券は価格と利回りが逆の動きをしますが、高市内閣は積極財政派ですから、今後は国債発行が増えるだろうと。今、利回りがどんどん上がって18年ぶりの高い水準まで上昇していますが、こういったことも加わって金利が上昇しやすい状況が生まれているのが今なんです。
例年であれば、クリスマス商戦の動向に注目していればいいのですが、今年は日銀金融政策決定会合まで、金利の動向から目が離せない状況です。
<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組公式X:
@Skyrocket_Co