脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を、TOKYO FMがお送りするポッドキャストポータルサイト「TOKYO FM ポッドキャスト」で配信中! リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
今回の配信では、スマホの通知がないのに鳴ったように感じる「空振りバイブ」に関する相談に、茂木が脳科学の知見からアドバイスを送りました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
最近、スマホの“空振りバイブ”に悩んでいます。通勤電車で右ポケットが「ブルッ」とした気がして取り出すと通知はゼロ。2駅の間に3回も確認してしまいました。
会議前も「今、鳴った?」と勘違いして胸がざわつき、話が頭に入りません。こうした“気にしすぎる”状態を解決する方法はあるのでしょうか? スマホと良い距離感を作って、集中と安心を両立したいです。
<茂木の回答>
これは多くの方が経験されていることだと思います。インターネットなどでは「ファントム・バイブレーション・シンドローム」(=幻想振動症候群:スマホが振動していないのに振動したように錯覚する現象)とも呼ばれています。
実はこれ、人間の脳が持つ非常に面白い性質に由来しています。人間の脳には「ノイズを意味があるものとして解釈する傾向」があるのです。たとえば、壁のシミが人の顔に見えたり、ただの物音が人の声のように聞こえたりすることがありますよね。これは脳にとっては正常な働きです。
私たちは常に、周囲のノイズのなかから「自分にとって意味があること」を探しています。その際、自分が期待していることや、気にかけていることが優先される傾向があります。相談者さんの場合、常に「メッセージが来ているのではないか」と気にされているため、本来は無関係な振動もスマホの通知だと誤認してしまうのでしょう。
まずは、これが脳の正常な働きであることを知って、安心してください。そのうえで、注意の散漫を防ぐためにおすすめしたいのが「通知を切ること」です。
実は、私はスマホの通知を一切使っていません。脳科学の言葉で言えば「注意のきっかけ(プロンプト)は自分で作る」ということです。私は定期的にメールやメッセージを確認しますが、それは自分が「見よう」と思ったタイミングで行います。相手からの通知が強制的に割り込んでこないようにしているのです。
もちろん、急ぎの連絡を待っているときはオンにしますが、基本的にはオフです。よくLINEなどで「夜分遅くに失礼します」という挨拶を見かけますが、これは通知によって相手を「ブルッ」とさせてしまうことを気遣っての言葉でしょう。しかし、私のように通知をすべて切っていれば、午前3時に送られてきても関係ありません。自分が起きたときに確認するだけですから。
メッセージは「チェックしよう」と思ったときに確認するのが、脳にとってもっとも良い状態です。冷静に考えてみれば、1分1秒を争う緊急のメッセージは、意外と少ないのではないでしょうか。もしあったとしても、気づいたときに反応すればいいのです。人間には眠っている時間も、お風呂に入っている時間もあります。すぐに動けない状況があるのは当然のことです。
「通知をずっと切っておく」という選択肢を、ぜひ検討してみてください。ファントム・バイブレーション・シンドロームは、脳が一生懸命に意味を探そうとしている自然な証拠です。あまり深刻に捉えすぎず、スマホとの付き合い方を見直すきっかけにしてみてくださいね。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎