脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティを務め、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。TOKYO FMがお送りするポッドキャストポータルサイト「TOKYO FM ポッドキャスト」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。
この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。今回の配信では、リスナーから寄せられた「SNSとの上手な向き合い方」に関する相談に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
私は、SNSで人間関係に疲れると、全部消して“新しい自分”でやり直したくなります。
大学のサークルやバイト先など、さまざまなコミュニティのつながりが増えてくると、自分には関係のないやり取りや、その通知がスマートフォンに表示されるだけでも、ストレスを感じてしまいます。
ただ、SNSを一切断つのも、なんだか取り残されてしまいそうでできません。上手なSNSとの向き合い方を教えてほしいです。
<茂木の回答>
今、SNSは、現代人の幸せの元にも、不幸の元にもなるとされています。
まず、幸せの元という意味では、人は、やはり人とつながることを求める性質がある。
(人類学者のロビン・)ダンバーさんというオックスフォード大学の先生が調べたところ、だいたい人は150人ぐらいとつながるところまでは容量があるよ、とされています。
ですから、お書きになっているように人間関係が、あまりにも増えると、ちょっともう扱えなくなってしまいます。150人ぐらいまでは脳の容量としては、キャパシティーとしてはいけるという研究もあるのですけれども、これには個人差もあります。
まあ、とにかく、そのつながりが幸せの元になるという側面もあるのですけれども、一方でお書きになっているようにストレスとか、いろいろ傷ついたり、すれ違いがあったり、不幸の元にもなるので、バランスがとても難しい。
例えば、車で言うと、アクセルとブレーキの両方をうまく使わないと運転はできませんよね。SNSもちょっと似ているのです。アクセルを踏んでたくさんの人とつながるところと、ブレーキを踏んでちょっと速度を落とすという、この両方のバランスが必要なのだろうと思います。
最近、僕が聞いていたアメリカのポッドキャストのITのスタートアップのすごい経営者は、SNSを一切絶っていると言っていました。スマートフォンも一切使わないと言っていました。非常に有名な経営者の方なのですけれども、でもこの方の話を聞いていると、やはりもう自分が確立しているのですね。
なのでね、相談者さんは、まだいろんな他人との関わりの中で自分を見つけていく人生のステージなのかなと思うのですが、極論を言うと、自分がどういう人間で、何をやめるべきか分かったら、SNSはいらないのかもしれないですよね。
ただ、やはり大学のサークルやバイト先などで、いろいろな人と向き合って自分が成長していくという意味においては、SNSはやはりバランスです。そのバランスを探っていくしかないのかなと思います。
文面を読ませていただく限り、すごく繊細で人間関係の細かいところに目がいってらっしゃると思うので、ご自身のやり方でそのバランスを見つけていけばいいのかなと思ったりもします。
僕自身は、どちらかというと、自分に関係のないやり取りとか通知は全く無視なんですね。
まあ、それぐらいスルー力が高いので、SNSのそういうことに対してあまりストレスがたまらないのですけれども。これは人によって、やはり感じ方が違うのです。
だから、おそらく相談者さんの場合には、比較的ちょっと控えめにしたほうがいいのかなと。
自分がコントロールできないとストレスがたまってしまうので、「振り回されている」と思わないほうがいいですね。
とにかく、自分がSNSをどう使うかということを自分で決めて、バランスをとっているように思えるような状況にすれば、おそらく大丈夫だと思います。
ぜひ、自分が心地よくいられる距離感を見つけて、上手に付き合っていただけたらなと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎