※写真はイメージです
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
今回の配信では「動物の動画を観たときの癒やし効果」についての質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
私はかわいい動物やペットの動画をSNSなどでついつい観てしまうのですが、観ていると、とても心が穏やかになります。心穏やかになるのは、動物やペットが丸くてモフモフしているからなのでしょうか? それとも、私たち人間の想像を超えた動きをするからなのでしょうか?
<茂木の回答>
このような動画はSNSでよく出てきますし、僕も観ちゃいます。殺伐としてしまいがちな人間界の有様を見ていると、ああいう癒やし動画っていいですよね。
基本的に哺乳類は、子どもの頃にかわいくないと世話をしてもらいにくいじゃないですか。だから哺乳類はお乳をもらったり世話をしてもらったりするために、いろいろな動物がかわいく進化していったと考えられています。
例えば犬は、祖先をたどるとオオカミですよね。しかし今は、犬種にもよりますが、犬はかわいくてモフモフの姿をしています。ああいう形になることで、人間がペットとして世話をしたくなる、かわいいと思えるように進化しているのです。
人間は「世話をしたい」気持ちがある生き物です。人間の脳は利他性といいますか、誰かの世話をしたり、面倒を見たりすることで満足感を得る仕組みになっています。もともとこの社会には子どもがたくさんいて、そこらじゅうを走り回っていたわけですが、今は少子化の世の中。そうすると人間の脳のなかの「誰かの世話をしたい、面倒を見たい」という本能のようなものが十分に満たされなくなってしまうんです。そうなってくると、その欲求をペットに向けるようになったり、動物の動画を観たりすることで気持ちを満たすようになります。
犬猫はもちろん、爬虫類や魚も流行っていますよね。自分がかわいいと思える存在を見ることで満たされるというのが、現代人のなかにはあるのかなと思います。特にストレスを感じているときに、動物やペットに触れることで癒やし効果があります。最近ではペットセラピーというものもありますもんね。
そして「想像を超えた動きをする」という点ですが、これはいいところに目をつけていらっしゃるなと思います。脳の報酬系であるドーパミンという物質は、予想外のことが起こったときに特によく出ることが知られています。ですから動物やペットが、自分が想定していない動きをすると、サプライズで脳の喜びの物質であるドーパミンが出ますので、そのあたりも重要なのかなと思います。
動物やペットの動画は、人間の脳が本能的に求めている「癒やし」「世話をしたい」「かわいいものに触れたい」という欲求を満たす要素がたくさんあるので、だからこそ人気なのではないでしょうか。ついついストレスが溜まりがちな現代ではありますが、そうした動画を観て心を穏やかにして、嬉しく感じる瞬間を大切にしていただきたいなと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎