笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「DIGITAL VORN Future Pix」。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月16日(土)の放送は、
前回に引き続き、ヤマハ株式会社 代表執行役社長の中田卓也(なかた・たくや)さんをゲストに迎え、お届けしました。
笹川友里、中田卓也さん
◆AI技術を駆使した新たなプロジェクト
楽器や音響におけるヤマハのデジタル戦略のなかでも、とりわけAI(人工知能)技術を活用した取り組みが目覚ましく、その1つが「Dear Glenn」というプロジェクトです。これは、AIと人間の共創の可能性を追求するべく立ち上げたプロジェクトで、1982年に50歳の若さで亡くなったカナダ出身の伝説的ピアニスト、グレン・グールド(Glenn Gould)さんの演奏を再現しようというもの。
中田さんは、「グールドさんがもしも生きていて、今の若手アーティストとコラボレーションしてみたらどんな感じになるだろうか? という実験をおこなわせていただいたところ、大きな話題となりました」と話します。数百時間にも及ぶグールドさんの演奏データをAIに学習させ、楽譜と付け合わせをすることによってグールドさんの特徴を捉えていきます。
そして、グールドさんのある有名な曲をAIで再現したところ、それを聴いた音楽家は涙を流して「グールドさんがまるでそこにいるみたいだ」と感動しきりだったそう。
この技術によって、グールドさん以外にも過去の偉大なアーティストの演奏を再現することも可能なものの、「むしろ私たちが目指しているのは、アーティストの演奏を再現することよりも、これから音楽を始める人たちにもっと寄り添い、手助けになることができないか、ということでやっている」とその意義を語ります。
例えば、バイオリンやフルートなどの楽器を演奏している人が、コンサートに向けて練習しようとしたときに「共演するピアニストを常に呼ぶとなるとコストがかかるが、(AIであれば)“文句を言わない伴奏者”がずっといてくれる。でも、機械的な演奏だとクリエイティブな演奏にならないし、力量がないと音楽をつくり出すことにはならないので、演奏する人を支えるだけのAIの伴奏者がいたら、音大生などもかなり助かるのではないか」と、AI技術の可能性に期待を寄せます。
そして、「やっぱり音楽は1人でやるよりも複数でやったほうが楽しい。だけど、常に誰かがいるわけではない。そういったことをAIが代替してくれる。あくまでも人間が中心で、それに寄り添うようにサポートする(AIの)レベルが飛躍的に高まることで、人間の演奏ももっと高まっていく」と力を込めます。
◆コロナ禍にも新たなプロダクトを開発
新型コロナウイルスの感染拡大で、これまで数多くのコンサートが開催中止となりましたが、「もっと違った形で提案できないか」という思いから開発したのが、次世代ライブビューイング「Distance Viewing(ディスタンス・ビューイング)」です。
これは、演奏はもちろんのこと、照明などに至るまで、アーティストの迫力あるライブパフォーマンスを忠実に記録し、大型スクリーンを用いて本番さながらのパフォーマンスをステージ上にバーチャル再現するという画期的なシステム。「これによってコンサートのあり方が変わるかもしれないし、何よりも繰り返しいろいろなところで楽しめるようになるので、楽しみ方が広がるということが大きい」と解説します。
他にも、コンサートを無観客でおこなうことが主流となっていた時期に、「お客さんの反応が返ってくるのがライブ本来の醍醐味なので、そこを何とか形にできないか」という思いで、リモート応援システム「Remote Cheerer powered by SoundUD」を開発。
これは、自宅などの離れた場所からでも、スマートフォンをタップしたり、振ったりすることで現地に拍手や歓声を届けられるというもので、「ライブだけではなく、サッカーや野球などのスポーツイベントでも使われていて、(無観客のなかでやる)アーティストや選手にとって、励みになったみたいです」と手応えを語ります。
このように、「もともと音楽をやるうえでの場所や時間などの問題や制約を克服しようと、我々はいろいろなものを開発してきたが、コロナ禍で一気にそれが形になり、提案を加速することができた」と胸を張ります。
最後に、今後の展望については「いろいろなアイデアで個々のサービスをやっているが、統一フォーマットのなかで提供できるようにしていきたい。音楽をやっていくうえで“こんなことができたらいいな”“こんなことがやってみたい”という思いを持った瞬間に、“例えばヤマハのあるサービスを利用すれば、大体解決しちゃうよね”といったようなことが実現できたらいいなと思う。これからの数年間で、会社のみんなでそれを構築できたら」と思いを語りました。
次回7月23日(土)の放送は、Dropbox Japan株式会社・代表取締役社長 梅田成二さんをゲストに迎えてお届けします。「Dropbox」のサービスや「バーチャル・ファースト」のことなど、貴重な話が聴けるかも!? どうぞお楽しみに!
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聴取期限 2022年7月24日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/