TOKYO FMグループの「ミュージックバード」で放送のラジオ番組「週刊Nobbyタイムズ」。時事ニュースをもとに設定したテーマに沿ってお届けするエンタメ&BIZ情報バラエティです。番組パーソナリティは、金融業に従事しながらDJ・ナレーター・司会者・金融コメンテーターとして活動中のDJ Nobbyが担当。アシスタントの宮田リコとともにお届けします。
今回の放送では、株式会社SPACE PRODUCEの代表取締役・小林佐理(こばやし・さり)さんがゲストに登場。企業を査定する際の独自の“会社の通信簿”や、オフィスデザイン案件を“断った事例”について語ってくれました。
(左から)アシスタントの宮田リコ、パーソナリティのDJ Nobby、株式会社SPACE PRODUCE・小林佐理さん
◆“会社の通信簿”を作成しオフィスデザインを提案
Nobby:「オフィスのお悩み解決ラボ」のコーナーをお届けして参ります。ご一緒いただくのは、人材強化をオフィスデザインから支え、“人が辞めない・育つオフィス”をつくる会社、株式会社SPACE PRODUCEの代表・小林佐理さんです。
小林:よろしくお願いします!
Nobby:今日は小林代表から、人が辞めない、人が育つオフィスを作ってきた経験談を伺っていきたいと思います。さまざまなオフィスのプロデュースをされてきたと思うのですが、すべてカスタムメイドだと思うんです。
オフィスも違いますし、組織や業務も違うなか、いろいろ蓄積されたノウハウやご経験でオフィスをよりよくしていくのがSPACE PRODUCEのお仕事ですよね。今日はどんな事例があるのか教えていただければと思います。
小林:ありがとうございます。前回は「従業員エンゲージメント」という言葉を使って、会社にもっとも適したスペースを作る測定をしていくというお話をさせていただきました。弱みや強みを見つけて、そこからデザインコンセプトを作っていくのが我々の仕事です。
コンサルティング会社と思われがちなのですが、我々は設計と工事をメインに扱う会社でして、せっかく作るのであれば投資対効果が出ることを最大の使命としています。ですので、まずは地道な実態調査から始めております。
Nobby:そういったプロセスは一般的なのでしょうか?
小林:一般的ではないですね。簡単に言ってしまうと通信簿みたいな形で30点ぐらいから70点ぐらいまで、各個人のアンケート数字を出します。ただ、各個人の数字をベースにするのではなくて、組織としてまとめて平均値を出して、今の会社に何が足りないのかを測っていきます。
いわゆるウェルビーイング、従業員満足度といった個人に使うような言葉ではなくて、帰属意識ですね。「この会社で働けてよかった」「この会社で成長できているな」と思っていただくような会社を作るための数値の出し方をしています。
宮田:オフィスデザインという切り口で会社の成長にまで寄与していくんですね!
◆社員が通いたいオフィスを目指す
小林:僕らが考える従業員エンゲージメントは9つの構成要素があります。その要素は「キードライバー」と呼ばれるもので、職務に満足しているか、自己成長できているか、健康状態が守られているか、支援をしてもらえるか、人間関係は良好か、自己承認が満たされているか、会社の理念・ビジョンについていけているか、組織の風土、あとは全体的な環境といったところを我々は9つにわけてアンケート調査しています。
Nobby:かなり細かい調査ですね。
小林:はい。これらに対してすべての数字を出して弱みと強みを把握していきます。
Nobby:いろんなことが浮かび上がってくるわけですね?
小林:数値で出しているので明確にわかります。店舗だと収支計画が立っているので、だいたいは「こういうお店にしたい」というオーナーの要望によって金額が限定されるんですね。一方で、昨今のオフィスというのはコロナ禍が少し収束してきたなかで、会社に来てほしいという声が多くなってきました。
宮田:オフィスには来てほしい気持ちがあるんですね。
小林:出社は社員の義務とまでは言いませんが、やはり会社に行きたいと思えるようなオフィスを、ソフトな部分も含めて作っていかないといけないのかなと、我々はデザインや工事といった部分で考えております。
◆案件を“断った”ケースを紹介
Nobby:調査をしてわかったこと、どういった案件があったかを教えていただけますか?
小林:今日は我々がいただいた案件を“お断り”したお話をします。
Nobby:お断りすることがあるんですか!?
小林:あります。そこに対して投資対効果がなければ、我々は「そこにお金をかけるべきではありません」ときちんと明確にお伝えします。我々はコンサルティング会社ではないので、設計・施行に関わらないところに関しては、「専門のコンサル会社を入れたほうが会社の成長に繋がるのではないか」といったことをハッキリ申し上げます。
Nobby:思い切った施策ですね。
小林:今回は、道路の補修をしている会社のお話をします。総務の方からお話を聞くと、社員数はだいたい80名ほどで、部署としては技術部だったり営業、調査、設計、空間情報部などがあり、今後の見通しをどうしていくかという内容でした。設立は1950年となかなか古い会社です。
お話を伺ったところ、事業部間のコミュニケーションが取れていないと感じており、社員が疲弊していて全員が同じ方向を向いていないのではないかというのを課題点としていただきました。
そこで会社のほうはオフィスレイアウトを変更して、たとえばフリーアドレスを導入したりといった、見通しをよくして部署間のコミュニケーションを活発化させるという仮説を立てたんですね。
宮田:なるほど。
小林:そこで、仮説が正しいかどうかを確認するため、現在の会社の健康状態を調べましょうとお伝えしました。
Nobby:物理的な見通しかどうかということですね。
小林:その通りです。今回、断ったのは珍しいパターンなんですけども、結論から言うと“いい会社”だったんです。我々は3つ大きなアンケートを取っていまして、従業員エンゲージメントの今の状態、3年後に期待する会社の状態、職場環境(オフィスデザイン)を調査していくんですね。
2、30問ぐらいの質問に答えていただいて数値を出していくんですけども、いわゆるコミュニケーションが足りないというのは、構成要素として人間関係に当てはまるものなんです。
こちらの会社の場合、各事業部の半分以上が(人間関係は良好かで)70点以上だったんですね。つまり、この時点で立てた仮説が崩れたんですよ。
宮田:たしかに!
小林:では、どこが悪いのかといろいろ調べました。道路を修繕する会社ですので、健康状態は時期によって違ったりするのですが、支援活動といったところも数字としてよかったんです。
Nobby:つまり直すべきところがなかったと?
小林:点数を見ている限りではなかったです。フリーアドレスにしたところで会社が変わるとは思えないし、9つのキードライバーのなかで人間関係も一番いい状態にある。この事実を知ってしまった以上、フリーアドレスをやりましょうといった提案は出せなかったんです。
宮田:ある意味すごく誠実といいますか、その会社のことを思われていますよね。儲けとしては依頼を受けちゃったほうがいいじゃないですか。そうではなくて、きちんとどこにその会社に課題があるのか、それに対して自分たちが解決できるのかを考える。問題がなければ「やる必要はないです」と率直に言えるのはすごいことだと思います。
◆フリーコメントからわかった会社の実情
小林:アンケートの最後に、会社に対して自由に書いてもらうフリーコメントがあるのですが、普通はみなさんそんな細かいところまで書かないんですよ。ただ、その会社はめちゃくちゃ多くのフリーコメントが書かれていたんです。
宮田:ええ~!
小林:たとえば「現在の管理職が退職したあとが怖い」「新卒採用するのはいいが、育てられない状況を会社は把握しているのか」「各役職で社員教育をすべき」といったことが書かれていました。
それから、我々の会社が何を目指すべきなのか、ボトムアップだけではなくトップダウンから示してもらいたいといったコメントもあったんです。普通の会社だとトップダウンだと思うのですが、こちらはボトムアップから稟議をあげてやっていたんですよね。
Nobby:一見理想的な会社に見えますね。
小林:そうですよね。ただ、結論を言ってしまうと、上層部が会社に対して何も考えていないなと少し感じてしまったんですよね。
Nobby:会社の理念が社員に伝わっていないということですね。
小林:はい。おっしゃる通りです。「自分は自社にずっといたいと思っているのでこういう書き方をしました」といった方が多かったです。このフリーコメントからもわかるように、不平不満は多いけれど前向きな発言が多いということ、経営陣に対する不満が多いということ。それから、ビジョンが浸透していない、もしくはビジョンが現況に合っていない。会社の声を心配する声も多い。このような点を踏まえて、我々がお断りした事例でした。
Nobby:そもそもで人が辞めない・育つオフィスであればお断りする、そういった事例をご紹介いただきました。
<番組概要>
番組名:週刊Nobbyタイムズ
放送日時:毎週木曜日 19:00-20:55
出演者:DJ Nobby(パーソナリティ)、宮田リコ(アシスタント)、高橋里実(アシスタント)