「将来、介護の負担を軽減したい」という切実な思いから、近年注目を集める「介護脱毛」。
フリーアナウンサーの住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Blue Ocean」(毎週月曜~金曜 9:00~11:00)で毎週金曜日に放送しているコーナー「オトナのなんでも相談室」では先日、50代女性からの「介護脱毛は必要? 施術の痛みや肌負担が気になるが、介護者への配慮として迷っている」という「介護脱毛」についての相談を取り上げました。この相談とアドバイスを後日記事として配信したところ、SNSやコメント欄などで大きな反響を呼びました。この記事では、その一部を紹介。現役介護士などからの反響コメントを交えながら、介護脱毛に関するさまざまなエピソードを紹介します。
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◆SNS、コメント続々!「介護脱毛」は本当に必要なのか?
番組で紹介した元介護士や現役介護士の意見は「高齢になると自然に毛は薄くなる」「ほとんどツルツル、心配しないで大丈夫」という、介護脱毛“不要論”が中心でした。
SNSやネットニュースのコメント欄にも同様の声が寄せられ、さらに具体的な「介護現場の真実」や「本当に気にしてほしいこと」、また、「介護脱毛」について、あらためて考えさせられる意見が届きました。
介護の専門家や経験者は、この話題の裏で一体何を訴えているのでしょうか。寄せられた反響コメントから、「介護脱毛の是非」、そして「本当に介護の負担軽減につながること」を深掘りします。
◆「介護脱毛」は不要!? 介護の現場からは「ビジネスの謳い文句」の声も
まず、記事で紹介された「介護脱毛は必要ない」という意見について、介護業界からは賛同の声が多く寄せられました。
・「長年介護職していますが、高齢者の陰毛なんてそもそも痩せ細ってあらかた抜けてチョロチョロ〜程度しか残っていません。脱毛なんかしなくても何ら一切影響ありません」
・「介護脱毛は熟年層を狙った脱毛ビジネスだと思います。ほとんど毛は抜けています」
・「脱毛業界が潜在見込み客を掘り起こすために、もっともらしいことを流布しているのです。現場が本当に困っているのでしたら、介護業界から脱毛を提案してくるでしょう」
・「ツルツルにすると逆に下着の繊維のホコリやティッシュなどゴミがつきやすくなります。それどころか、ツルツルにしてしまうと蒸れてかぶれやすくなるとか。脱毛するなら少し薄くする程度に留めたほうがいいようです」
多くの現場経験者が、“自然に薄くなる”ことを指摘し、「介護脱毛」は、脱毛業界が客を開拓するために言い始めたビジネスの謳い(うたい)文句ではないか、という指摘が相次ぎました。
なかには、「便がからみついてしまうようなときはけっこう大変。無いほうが排泄介助をやりやすいのは確か」という声もあるものの、全体的には「自然に抜けてきて毛量が減ることもあり、そこまでしなくても大丈夫」と、“介護脱毛は必須ではない”という声が多数でした。
◆介護の現場が本当に困っているのは「毛」ではなく「体重」
では、介護される側が「迷惑をかけたくない」という思いでお金と痛みをかけるなら、一体何に注力すべきなのでしょうか?
反響コメントで最も多く、そして切実に訴えられていたのは、「体重管理」。すなわち、「介護減量」の必要性でした。
・「ホントに大切なのは体重です。他の方の意見にもありますが、ベッドから車椅子に乗せたり、トイレの介助、寝たきりの方のオムツ交換やシーツ交換、ほとんどのシーンで介助者が支えなくてはいけません」
・「迷惑をかけたくないと思うなら、体重を減らすことです」
・「細身の人とお肉たっぷりの人とでは、陰毛なんかどうでもいいくらい介護負担が違う」
・「大きな法人であれば、リフトなどあるでしょうが、小規模な施設では無理です。ケア者の体が壊れる…」
・「介護脱毛より介護減量!介護職の友人が声を大にしていた!」
などの声が寄せられ、「身長は制限できないけど、体重はコントロールできるので」「重いのは本当に大変!」と、介護者の身体的負担の深刻さが浮き彫りになりました。
◆「性格」や「足腰の筋力」も重要
さらに、長年介護職をしているという人からは意外な指摘も。
身体的な問題よりもメンタルに影響をおよぼすとして、「性格」の重要性を挙げる声も多く寄せられました。
・「長年介護職をしていますが、介護脱毛よりも体重よりも“性格”です。認知機能よりも、私は介護するときの性格の合う・合わないのほうが、よっぽど重要でした」
・「毛よりも、頑固な性格の方のほうが相当メンタルにきます……」
・「毛なんてどうでもいいので、そのお金を違うことに使って、性格を良くしてくれるほうが正直助かります……」
そして、介護者に負担をかけないための最良の方法は、「自分のことは自分でできる期間を延ばす」ことだと、自立支援の観点からのアドバイスも多く見受けられました。
・「毛の心配をするより、なるべく最後まで自力でトイレ行ったり、お風呂に入ったりできるように、腕と足腰を鍛えたほうがいいです」
・「介護脱毛するより足腰を鍛えて、コミュニティ増やして、いろいろな人とおしゃべりをして、しっかり食べて、しっかり寝ることに注力してもらったほうがいい」
◆むしろ、脱毛すべきは「ヒゲ」? 意外な提案も
デリケートゾーンの脱毛は不要としながらも、「脱毛をするなら場所を」と提案する声も寄せられました。
・「男性のヒゲ剃りは、かなり大変です。毎朝ヒゲをそらないといけないし、介護士は刃物のカミソリは法的に使えないし、家族が安いカミソリとかを差し入れするとうまく剃れなくて結構時間を取られます」
・「もし脱毛をするなら、ヒゲとスネがおすすめです。見た目に影響するので気になる人もいるようですが、それらの箇所の剃毛まで介護士の手が回らないので、もし同じ脱毛をするなら、ヒゲなどの脱毛をするほうが、意義があると思います」
男性のヒゲは毎日の介助が必要となり、また、カミソリが使えない場合の負担が大きいこと。そして、男女問わず目立つ「スネ」や「ヒゲ」こそ、介護者・被介護者双方にとって見た目の不快感や介助の軽減につながるという指摘でした。
◆本当に大切なのは…切実な悩みへの「現場の回答」
今回の「介護脱毛」に関する相談と、それに寄せられた膨大な反響コメントは、「迷惑をかけたくない」という被介護者側の優しい気持ちと、それを受け止める介護現場の「本当に困っていること」のギャップを浮き彫りにしました。
介護現場で本当に求めているのは、高額な費用をかけて「介護脱毛」をすることではなく、「体重管理」や「筋力維持」といった健康への努力、そして介助時に良好なコミュニケーションが取れることと、穏やかな性格、ということでした。
「介護脱毛」が「介護減量・介護筋トレ」に取って代わり、人生の終盤まで自分の尊厳と健康を保つ努力が広まることこそが、双方にとって最良の形なのかもしれません。
将来の介護に備えて「なにかをしておきたい」と考えている人は、高額な脱毛に投資する前に、まず日々の健康管理や体重コントロール、そして、人との関わりを大切にすることから始めてみることが、良いのかもしれません。