笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。2月11日(土・祝)の放送は、株式会社荏原製作所 執行役 情報通信統括部長兼CIOの小和瀬浩之(こわせ・ひろゆき)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)小和瀬浩之さん、笹川友里
小和瀬さんは、1986年に花王株式会社に入社。その後、2014年に株式会社LIXILに入社。CIO執行役員IT推進本部長、上席執行役員CIO兼情報システム本部長を経て、2018年に荏原製作所に入社。2020年3月に執行役 情報通信統括部長、2023年1月に執行役 情報通信統括部長 兼 CIOに就任しました。
◆荏原製作所が展開する事業
荏原製作所は、1912年11月にポンプメーカーとして創業。現在は、建築・産業、エネルギー、インフラ、環境、精密・電子と多岐に渡る事業を展開しています。大きいセグメントとして、建築・産業カンパニーは、ビルやマンションなどへの標準ポンプの設置、ビルや商業施設などにファンや冷凍機を設置。エネルギーカンパニーは、石油や石油化学プラント、ガスや発電所などのエネルギー関連施設で使われるポンプやコンプレッサーといった製品をサービス展開しています。
インフラカンパニーでは、主に河川や下水道の排水ポンプの設置。環境カンパニーは、ゴミ・一般廃棄物の処理施設の設計や建設、稼働してからのオペレーション・メンテナンスまで対応しています。そして、半導体製造装置を取り扱っている精密・電子カンパニーは、「今、荏原(製作所)で、非常に売上・収益ともに伸びています」と話します。
◆受け継がれる創業者の開拓マインド
荏原製作所は大学発のベンチャー企業で、創業は1912年にまで遡ります。創業者・畠山一清(はたけやま・いっせい)氏が、大学時代の恩師で、当時ポンプ技術に関する草分け的存在だった井口在屋(いのくち・ありや)博士と出会ったのをきっかけに、その技術を実用化して「ゐのくち式渦巻ポンプ」を製作したのがはじまりです。
小和瀬さん自身も入社以降、創業者の信念である“熱と誠”の精神をずっと大切にしていると言います。「“熱意と誠意を持てば、何事も相手に通じる”という精神で、そのDNAは今でも荏原に脈々と引き継がれており、(その精神を持って)新規事業も含めて新しいことをどんどんやっています」と声を大にします。
◆荏原製作所のDX化を目指して
荏原製作所が近年、特に注力しているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。会社のDX化を担う立場でもある小和瀬さんは、「経営部門と事業部門、IT部門が三位一体となって全社を挙げてやらないと、DXはなかなかうまくいきません。日本でDXがうまくいっている会社を見ると、三位一体はもちろん、社長が本気になっているところ(がうまくいっています)」と実感を語ります。
それは荏原製作所においても同様で、「社長の浅見正男(取締役 代表執行役社長 兼 CEO 兼 COO)が先頭に立ってやっています。(DXは)経営改革や事業改革なので、社長が(本気で)やらないと前に進まない。そういう意味では、荏原ではとても良い取り組みができていますし、『DX注目企業2022』にも選出されていますし、つまりその成果が出ているということです」と胸を張ります。
ここで、小和瀬さんが荏原製作所でDX化に取り組んできた事例を2つ紹介。1つは、環境カンパニーの領域で紹介したゴミ・一般廃棄物の処理施設について。ゴミを焼却する際、燃焼効率を一定にするために、ゴミを燃やす前に人がゴミをかき混ぜるのが従来のやり方でした。
そこで荏原製作所は“AIクレーン”を製造。これにより、画像解析技術とディープラーニング(深層学習)を用いて、AI(人工知能)がゴミを識別し、クレーンを自動運転してゴミをかき混ぜることを可能にしました。
小和瀬さんによると、これまではゴミを焼却するために多くの人の手がかかっていたものの、運転時間のほぼ9割は自動化が可能になったことによって、無駄な人員を減らすことができるなど、「ビジネスモデルとしても非常に強みになります」と力を込めます。
この事例に笹川は、「昔に比べて、ゴミの焼却技術や、より環境に負荷のない技術に進化している印象がありましたけど、そういったAIやディープラーニングのようなものを活用すると、もっと技術推進がありそうですね」と期待を寄せます。
2つ目の事例は、3Dのパラメトリック自動設計という技術によるもの。設計の分野にもデジタルの波は押し寄せ、これまで紙に2Dで書いていた設計図が3DCADにより立体的な設計が可能となりました。
また、これまでは3DCADを使って人が設計していましたが、例えば、夜にパラメーターを設定しておき、翌朝に出社すると、コンピュータがその設定をもとに3Dで自動的に設計図を完成させることが現実のものとなりました。
また、コンピュータが自動的に設計してくれることによる効果は「計り知れません!」と小和瀬さん。設計図を書く際、過去に生産したことがある製品の設計データを活用して、新たな製品を設計する「流用設計」という手法をしている業者はまだまだ多いそうですが、その流用設計のデメリットとして“非常に属人的になる”“毎回(流用して設計を)おこなうので、直すべきところが反映されていないなどの課題がある”といった点を挙げます。
対して、3Dのパラメトリック自動設計でおこなえば、「設計時間そのものが、最大で80%以上も削減できます」と力を込めます。そして何より、「製品を納めるまでのリードタイム(商品・サービスを発注してから納品されるまでの時間や日数)が短縮でき、一番大きいのは、設計するときにエラーが残ったままモノを作ってしまい、また設計をし直さなければならないなどの“手戻り”を排除できる。これは、収益の改善にもかなりつながっています」と声を大にします。
最後に小和瀬さんは、こうした技術を生み出すのはあくまでも“人”であり、「(紹介したパラメトリック自動設計の事例も)デジタル側が動くだけではなく、最初に設計の質そのもの、設計や仕事のやり方を(一から)変えなければならない。つまり、デジタルはその後なんです。もちろん、我々だけの力でそれを実現できるのではなくて、設計をしているメンバーの一人ひとりがその気にならないと、そういったことはできません」と力説しました。
次回2月18日(土)の放送も、引き続き小和瀬さんをゲストに迎えてお届けします。DXを推し進めてきた小和瀬さんの仕事術や未来の展望についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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聴取期限 2023年2月19日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/