TOKYO FMの音声サービス「AuDee(オーディー)」にて配信中の番組「細田昌志の時空旅行RADIO」。ノンフィクション作家・細田昌志がナビゲーターとなり、時空を超えて、当時の事件、世相を解説&検証するトーク番組です。3月20日(月)の配信では、作家でアイドル評論家の中森明夫さんをゲストに招き、アイドル歌手の岡田有希子さんについて語り合いました。
(左から)中森明夫さん、パーソナリティの細田昌志
◆若くして命を落としたアイドル・岡田有希子
中森明夫さんは「おたく」「チャイドル」の命名者であり、これまで数多くの著書を出版。2月1日に発売した新刊「TRY48」(新潮社)も、各方面から反響を呼んでいます。今回は、中森さんとともに、「アイドル・岡田有希子」に迫りました。
愛知県出身の岡田有希子さんは、1982年に「スター誕生」(日本テレビ系)名古屋地区予選をクリアし、全国大会出場の切符を掴むも、両親からの反対を受けます。その後、「学内テストで学年1位になること」「中部統一模試で学内5位以内に入ること」「第1志望校の名古屋市立向陽高校に合格すること」という両親の出した条件を突破し、「スター誕生」の全国大会で見事優勝。サンミュージック、キャニオンレコードと契約し、プロ歌手としてのキャリアをスタートさせます。
1984年4月に「ファースト・デイト」でデビューを果たし、同年の新人賞レースを総なめ。さらには、翌年85年秋からはTBSドラマ「禁じられたマリコ」で初主演。1986年1月にリリースした「くちびるNetwork」が初のオリコン1位を獲得しました。
1986年4月5日からは全国コンサートツアーがスタート。ところが、4月8日午前に岡田さんは自宅マンションでリストカットをおこない、ガス自殺をはかります。自殺未遂に至った岡田さんは病院で治療を受けたものの、当時の所属事務所が入居している四谷四丁目のビルの屋上から身を投げ、18歳の若さで命を落としました。その後、少年少女の後追い自殺が相次ぎ、「ユッコシンドローム」と呼ばれる社会現象となり、国会でも取り上げられました。
細田:1984年にデビューした岡田有希子というアイドル歌手に、中森さんはどういう印象を持っていましたか?
中森:ものすごく鳴り物入りで出てきた正統派のアイドルですよね。3年目の「くちびるNetwork」でオリコン1位になったし、80年代後半をリードしていく人であろうと思いました。「スター誕生」出身の正統派としては最後の大物で、しかもサンミュージックというのは桜田淳子、松田聖子、早見優といった、ホリプロと並ぶアイドルの老舗の事務所だったんですね。当時はアイドルシーンが活気づいてきて、彼女がもっと大きな存在になるのも確実だったと思います。
◆かつての芸能界は真面目であるほど苦しむ場だった
1984年は吉川晃司、菊池桃子、荻野目洋子、長山洋子と、新人アイドルが豊作の年でもありました。中森さんは著書「アイドルにっぽん」(新潮社)のなかで、「ピンク・レディーの出現によってアイドルのシステム化/商品化が極限まで追求・完成された」と記しています。
細田:当時のアイドルの中で、岡田有希子さんはどういった立ち置にいたと中森さんは見ていますか? システム化と商品化の最たるものだったのでしょうか? それとも、自立心も持っている人だったのでしょうか?
中森::ピンクレディーってすごく大きい存在なんですよね。岡田有希子さん、あるいはキョンキョン(小泉今日子)とか中森明菜さんの世代はほとんどが(子どものころに)小学校のときとかにピンク・レディーで踊っているんですよね。
一方で(ピンク・レディーをきっかけとする)アイドルのシステム化が進んだことで、アイドルは全部一人でやることになるわけですよね。例えば、青春時代にほとんど遊べないというのは、センシティブな子なら絶対に影響を受けてしまうと思うし、絶対につらかったはずなんですよ。そこからどうアイドルを続けるかという話です。
岡田有希子さんのプロフィールを見ていただいたらわかるとおり、ものすごいんですよ。アイドルの歴史上、恐らく今後も出てこないほどの優等生ぶりですよね。
学生として、成績優秀者でもあった岡田さん。真面目過ぎる気質が故に、当時の芸能界は苦しい場所だったのではないかと中森さんは分析します。
中森:昔はスマホもないし、横のつながりもないですからね。情報も正しいのかどうかわからないし、そこで悩んじゃって、まともに食らったところはあるんじゃないかなと思います。
◆岡田有希子さんを毎年偲ぶ理由
岡田さんが亡くなった4月8日は佳桜忌(けいおうき)と呼ばれており、中森さんをはじめ、毎年大勢のファンが四谷四丁目の交差点に集まり、岡田さんを偲んでいます。
細田:僕も例年通っていますが、中森さんも毎年通っているのはなぜですか?
中森:1990年代に入ってからずっと行っているんですけど、アイドルについて評論する仕事をしているでしょう? 僕も還暦を過ぎて、これからどれぐらい生きるのかわからないけども、手を合わせるときに岡田有希子さんの魂が安らかであるようにと思いながら祈っています。同時に、自分が携わっていて長く付き合っているジャンル、アイドルを見守ってくださいとも毎年思いますね。
自分の命がある限り絶対に(この日、この場所に)行こうと思うのは、やっぱり自分にとってもそれだけの出来事だったということです。人には強制しないし自分事ですけども、(黙とうの)1分間は考えてもいいんじゃないかなと思います。また、4月8日に会いましょう。
細田:そうですね!
<番組概要>
番組名:細田昌志の時空旅行RADIO
放送日時:隔週月
パーソナリティ:細田昌志
番組Webサイト:
https://audee.jp/program/show/100000288