モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。3月9日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「マイナンバー利用拡大へ。法改正案が閣議決定」。情報社会学が専門の学習院大学 非常勤講師・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
政府は3月7日(火)、個人に割り振られた12桁の「マイナンバー」の利用範囲を拡大するため、マイナンバー法など関連する法改正案を閣議決定しました。今の通常国会で改正案の成立を目指す方針です。
◆「事実上の取得義務化」と反発も
ユージ:早速ですが、改正案のポイントについて教えてください。
塚越:いろいろありますが、一番のポイントは「マイナンバーカードと健康保険証を一体化する」ということですね。改正案では、現行の健康保険証を2024年の秋に廃止して「マイナ保険証」に切り替えます。
メリットとしては、患者の診療情報や薬の情報を病院・薬局で広く共有可能になるため、全体として医療の精度・質が上がります。
一方で、マイナンバーカードは、これまで取得は“任意”、つまり取っても取らなくてもよかったのですが、「“事実上の取得義務化”になるのではないか?」ということで批判がありました。
ユージ:最初は、現行の保険証も活かしつつ「マイナ保険証も使えるようにする」という話でしたが、これまでの保険証が2024年秋に廃止になるということですよね?
塚越:この改正案ではそうなっていますので「じゃあ、マイナンバーカードを持っていない人はどうするの?」という話が焦点になりました。改正案では、カードを持っていない人も保険診療を受けられる「資格確認書」の発行を盛り込んでいるということです。ただし、この資格確認書の期限は1年間で、自動更新ができないので毎年更新手続きが必要になります。
さらに資格確認書の場合は、マイナ保険証を使うときよりも受診料を高く設定する方針ということです。金額差は現時点ではわかりません。おそらくSuicaなどの交通系ICカード料金と、現金で切符を買ったときの鉄道運賃の差くらいだとは思いますが、受診料が変わるということです。「マイナンバーカードの取得は任意」と言いつつ、カードを持たない人が不利になるため「事実上の義務化でしょ?」との批判もあります。
◆利用範囲が拡大して便利になるが…
ユージ:気になっているところがあります。マイナンバーの“利用範囲を拡大する”とは、例えばどういうことですか?
塚越:今のマイナンバーで利用できるのは「社会保障」と「税」、そして「災害対策」の3分野と法律で決められています。改正案では、これに加えて「国家資格の手続き」や「自動車に関わる登録」「外国人の行政手続き」などにマイナンバーが使えるようになります。
例えば、美容師や建築士が資格を更新するときは、これまでは自治体などで住民票の写しなどが必要でしたが、マイナンバーカードを利用した“書類のいらないオンライン申請”が可能になります。こういったところに利用範囲を拡大していこう、ということですね。
ユージ:それはいいかもしれないですね! ほかにも変更点はありますか?
塚越:年金などを受け取る金融機関の口座と、マイナンバーを紐付ける「公金受取口座」という仕組みを導入するということです。年金機構から年金受給者に、現在(公的年金の)受け取りをしている口座に対して、“「公金受取口座」に登録する同意を尋ねる書類を送る”ということです。ただ、こちらは回答しなくても同意と見なされます。つまり、自分から「紐付けは嫌です」と拒否しなければ、自動的に紐付けられることになります。
政府としては、コロナ禍で給付金の支給に時間がかかったため、「紐付けると(支給・受け取りが)楽になりますよ」ということをメリットとしてアピールしていますが、かなりゴリ押しということで、この点も少し批判があるという感じですね。
ユージ:マイナンバーの利用拡大が本格的になるわけですが、やはりマイナンバーカードの普及率も問題ですよね?
塚越:そうなんですよね。政府は3月末までに、ほぼすべての人への交付を目指しているのですが、3月1日(水)時点のマイナンバーカードの申請枚数は約9,400万枚で、国民の約74%です。ここ1年でかなり増えたイメージがあると思いますし、実際に増えていますが、あと1ヵ月では難しいかなと。あと、普及を急いでいる政府への批判も多いんですよね。
私は、マイナンバーそのものは否定しないし、いいところもあると思います。だけど、最初は任意だったのに、あとあと“事実上の強制”になっているのは、“後出しジャンケン感”がありますし、このようなことを「デファクトスタンダード=“事実上の基準”」といいます。
マイナンバーカードの取得は任意なので使わないのは構いませんが、使っていない・使わないだけで相対的に不利になるということなので、この辺の納得感というのは、個人的には政府への信頼感に関わっていくのかなと思います。政府への不信感もあって、マイナンバーカードを持ちたくないという人も一定数いるということなので、この辺は説明が必要かなと思います。
あとは、カード取得時にポイントを数万円分与えると言って普及をゴリ押ししているわけですが、これにかなりお金が掛かっています。去年12月までに普及のために使ったお金の予算がおよそ1.8兆円。
マイナポイントやテレビCMなどにお金をかなり使っているのですが、「本当にその金額に見合うレベルで便利なの?」ということですよね。便利になることは、法との関係もあって、細かく調整していかなければなりませんが、お金を使うことと便利さをどうやって両立していくのかが今後の課題。我々も注視していくポイントかなと思います。
<今日のユジコメ>
僕はカードが増えるのが嫌なので「マイナ保険証」にしたいと思いますが、せっかくならば本人の意思で紐付けたい情報はネット上でチェックをすれば紐づき、万が一落としたときは個人情報にロックがかかるシステムなどがあれば、いいなと思いました。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/