笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。11月16日(土)の放送は、NPO法人CIO Lounge理事長の矢島孝應(やじま・たかお)さんを迎え、11月1日(金)に開催されたイベント「DIGITAL VORN Conference 2024」内の公開収録の模様をお届けしました。
(左から)矢島孝應さん、笹川友里
矢島さんは、1979年に松下電器産業(現:パナソニック)に入社。情報企画部長や三洋電機の執行役員ITシステム本部長などを歴任。その後、2013年にヤンマーに入社し、2014年に執行役員ビジネスシステム部長、2018年には取締役CIOに就任。2020年5月に退任し、現在はNPO法人「CIO Lounge」の理事長をつとめています。
◆CIO Lounge立ち上げの経緯
まずは、矢島さんが理事長をつとめているNPO法人CIO Lounge立ち上げの経緯について伺うと、「パナソニック時代に5年半アメリカで働かせていただいたのですが、その頃(1997年)のアメリカは、どんどんITが進み始めているなと感じていました。しかし、(日本に)帰ってきたとき、なかなかITのデジタル化が進まなかった。そこで、私と同じような思い・危機感を持っている人間、具体的には『大和ハウス工業』『ダイキン工業』のIT責任者3人で『人生最後にIT化を強化するような取り組みをボランティアでやらないか』とお酒を飲みながら議論して、そのまま設立しました」と振り返ります。
法人名にもある“CIO”は、最高情報責任者を意味する言葉。昨今は日本でもCIOを設ける企業が増えていますが、矢島さんはヤンマー在職時にボードメンバーとして初めてその職務を経験。「昔は、企業のなかで情報システム、ITデジタルを推進する職能の地位は低かったが、“やはりこの立場は非常に重要やった”ということを痛感しました」と話します。
◆日本企業で深刻化する「SE不足」
矢島さんは、日本企業の大きな課題として“SE(システムエンジニア)不足”を挙げ、「現在、アメリカにはSEが440万人以上いると言われていますが、日本は140万人しかいない。しかも、そのうち30%しか企業に所属しておらず、70%がコンサル業やベンダー(販売業者)などの一方で、アメリカは440万人のうち7割が企業SE。これで日本企業がどうやって欧米に勝つのか……」と現状を吐露。
この話にパーソナリティの笹川は「それは意外……」と驚きつつ、なぜそうなってしまったのかと伺うと、「良い処遇がされてこなかったがゆえに、企業SEよりもベンダーなどのほうが収入も上がるので、そっちに流れてしまった。一方、アメリカでは早くからCIOが、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)などと同等レベルで企業の経営のなかに入ってきた。日本もCIOは増えてきましたが、そこまでに至りきれていない(のが現状)」と矢島さん。
さらには、CIOのポジションに就くために必要な能力やスキルについて、「重要なのは“幅広い経験”。技術は絶対に知っておかなければいけないけれど、それに加えて経営の悩みを自分が体感できるか、経営の悩みを経営者と分かち合えるかが大きいと思います」と語ります。
そのような人材をすぐに育成することは容易ではありませんが、矢島さんは「私はヤンマー時代に“全社員SE化”という方針を出したのですが、それぐらいSEが足りません。今からCIOを作り、デジタル人材を育成していても間に合わないし(世界には)勝てない。それならば、社員全員が“ITリテラシーを持ってSE化していくしかない”と、今は思っています」と持論を述べます。
◆ITデジタル化を進める若い世代へ…
続いて、ITデジタルにおける課題について矢島さんは「戦後の日本企業は、大きくなるにつれて縦割り組織ができて、企業全体を見ているのが社長だけになってしまった。でもITは、業務プロセスを横にどう連携するか、全体で情報データをどう使うか、という“縦”ではなく“横”の話。しかし、日本は“横串”を刺せるような人材がなかなかいないので、ITも連携できない形になっています」と明かします。
この話を受け、笹川が「“情報をどう活用していくか”というときの“横串問題”は、日本全体で向き合っていかないと解消しないのかなと思いますが……解消するためには、どうしていくべきでしょうか?」と質問すると、矢島さんは「我々が企業からご相談を受けたとき、いつも“プロセスオーナー”“データオーナー”を設定しましょうと提唱しています。例えば、顧客情報は営業含め多くの方が使われますが、それを誰が責任を持って管理するのか。このときに、今までの職能の縦割り、事業の縦割りの人ではなく、そういう人をアサインしましょうと。そうすると、ITデジタルが進む会社が多いですね」と言います。
さらに、これからは自分の会社だけではなく業界全体の連携が重要だと言い、「例えば、会社の機械をいくら効率化しても、それを運び出すトラックが来ないと作業は止まってしまう。つまり“全体を誰が設計していくか”が、これから非常に難しい世界になる。先日、トヨタ自動車さんとNTTさんが、自動車の新しいテクノロジーを連携して進めていくことが発表されましたが、こういう“日本の全自動車メーカーが(新しいテクノロジーを)使えるように進めたい”というような思想がないと、なかなか進まないと思います」と今後の展望を語りました。
次回11月23日(土・祝)の放送は、引き続き、NPO法人CIO Lounge理事長の矢島孝應さんをお迎えして実施したイベント「DIGITAL VORN Conference 2024」の公開収録の模様をお届けします。矢島さんの仕事への向き合い方についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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11月16日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年11月24日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里