TOKYO FMグループの「ミュージックバード」が制作し、全国のコミュニティFMで放送中のラジオ番組「週刊Nobbyタイムズ」。時事ニュースをもとに設定したテーマに沿ってお届けするエンタメ&BIZ情報バラエティです。番組パーソナリティは、金融業界出身で、現在はDJ・ナレーター・司会者・金融コメンテーターとして活動中のDJ Nobbyが担当。
今回の放送では、株式会社エイムソウル 代表取締役の稲垣隆司さんがゲストに登場。「外国人と働く」をテーマに、外国人社員採用における課題や、外国人採用に特化した適性検査について語りました。
(左から)パーソナリティのDJ Nobby、株式会社エイムソウル代表取締役・稲垣隆司さん、高橋里実(アシスタント)
◆人事のプロが感じる採用の難しさは?
日本では今後、少子高齢化の影響により人手不足がいっそう深刻化し、海外から日本に働きにやって来る人の数は増えていくと見込まれています。異なる国籍や文化を持つ人々と共に働くことは、もはや特別な状況ではなく、日常の一部になっていくでしょう。そうした時代に欠かせないのが、外国人と協働するための理解やスキルです。今回は、人事と組織開発の分野で豊富な経験を持つ、株式会社エイムソウル代表取締役・稲垣隆司さんに話を伺いました。
1998年に社会人としてのキャリアをスタートさせた稲垣さんは、学生時代から「30代で起業する」と決意していたといいます。その第一歩として選んだのは、厳しい環境で自身を鍛えるために入社した光通信。人事部での勤務経験から、人材採用の奥深さに魅了されます。
「営業職の稼働率をいかに上げるかが重視されていた会社でした。人事といっても実際は“採用の営業部隊”のようなもので、ひたすら人を獲得する仕事を4年間続けました」と振り返ります。その後、リクルート出身者が設立したベンチャー企業へ転職し、人事コンサルティングに携わったのち、2005年にエイムソウルを設立。現在は創業20年を迎える企業へと成長しました。
採用活動を通じて数多くの人と関わるなかで、もっとも難しいと感じたのは「人は簡単に見抜けない」ということだったそうです。「たとえ1~2時間の面接をしても、その人の本質を完全に理解することはできません。だからこそ、採用を運任せにせず、再現性を高め、入社後のミスマッチに応じて組織を柔軟に変えていくことが重要」と声を大にします。
◆“文化の知能指数”を測定するテストを展開
近年、稲垣さんが力を注いでいるのが、外国籍人材との協働やマネジメント支援です。稲垣さんの著書「なぜ外国人に『ちゃんと』が伝わらないのか」(三修社)では、文化や価値観の違いによって生じる誤解のメカニズムを解き明かしています。「ちゃんと」という言葉は、「納期を守る」「誤字脱字をなくす」など状況によって意味が変わっていきますが、その曖昧さこそが異文化間のすれ違いを生むと指摘します。
グローバル人材育成をテーマに研究を重ねてきた稲垣さんは、異文化への適応力を測る「CQI(Cultural Intelligence Quotient inventory)」という適性診断を開発。この分野に関心を持ったきっかけは、2014年に単身でインドネシアへ渡った経験だったとのこと。創業10周年を機に「日本の人事コンサルから一歩外へ」と決意し、現地でグローバル人材育成の重要性を実感したといいます。
現地では約2,000社の日系企業が進出しており、各企業からは現地の人材について「ルールを守らない」「報連相をしない」「時間を守らない」といった課題が多く聞かれました。しかし、それらは日本でも若手育成の現場でよく耳にする悩みと共通していたそうです。日本で培った研修手法を応用しようとしたものの、稲垣さんは「『ちゃんとして』と言い続けても半年間はまったく成果が出なかった」と明かします。原因を探るなかで、「常識」そのものが文化によって異なることに気づいたといいます。
「たとえば『10時半に来てね』と伝えると、日本人は10時25分に来ることが多いですよね。でもインドネシアの方は10時半過ぎに来る。だけど、悪気はないんですよ。そういう違いがあるんだっていうことを認識したうえで、教育を考える必要があります」と稲垣さん。こうした気づきから、異文化の前提を理解したマネジメントの必要性を痛感し、大学の研究者とともに“文化的知能=CQ”の研究を本格化させました。CQはIQやEQと同じく、人が異文化環境でどれだけ柔軟に適応できるかを示す能力指標です。その理論をもとに稲垣さんが2020年に正式ローンチしたのが、CQIです。
稲垣隆司さんの著書「なぜ外国人に『ちゃんと』が伝わらないのか」(三修社)
◆DJ Nobbyと高橋里実がCQIに挑戦!
CQIは個人の適応力を可視化し、組織との相性や異文化環境での行動傾向を分析できるツールです。テストを受けたパーソナリティのDJ Nobbyは「一般的な質問が多く、深く考えずに答えられた」と話し、アシスタントの高橋里実も「性格診断のようなニュアンスでした」と語ります。
テストには3種類あり、①外国人自身の適応力を測るタイプ、②受け入れ側の日本人向けタイプ、③海外赴任者向けタイプの3パターンが用意されています。②を受けたふたりの結果はいずれも非常にCQが高く、「外国人を受け入れるのがうまいタイプ」と評価されました。なかでも「開放性(新しい経験を好む)」と「外交性(社交的で人と関わるのが得意)」という特性が共通していました。
このテストは、人の基本的な性格構造を示す「ビッグファイブ」理論をもとに、異文化適応に関わる3つの特性を測定します。特に開放性と外交性は、グローバル環境での活躍に欠かせない要素とされています。
一方で、異なる傾向もありました。高橋は新しいことに前向きな「チャレンジ志向」が強く、Nobbyは「開放的でありながら安全志向が強い」タイプだったといいます。Nobbyの結果に「立場上リスクを避ける傾向が出ているのかもしれません」と稲垣さんは分析します。Nobbyが「長く金融のコンプライアンス部門にいた」と話すと、稲垣さんも「管理部門やコンプラ職はどうしても安全志向が強くなりがちで、自分を律する力が高い」とコメントしました。
特に印象的だったのが、「文化への敬意と誇り」という項目です。これは“異文化へのリスペクト”と“自文化へのプライド”のバランスを測るもので、高橋は前者、Nobbyは後者の傾向が強く表れました。
稲垣さんは、「自分の特性を理解したうえで、相手に歩み寄ることが信頼関係を築く第一歩」と語ります。異文化に限らず、世代や部署の違いなど、組織のなかにはさまざまな“ギャップ”が存在します。「“言わなくてもわかる”ではなく、まずは言葉で伝える努力をする。それが、私たちがサポートしたい部分ですね」と説明します。
さらに、「異文化コミュニケーションでは、“必ずやるべきこと(Must)”と“絶対にやってはいけないこと(Must not)”を明確にしておくことが大切」とも強調します。「たとえば“メールは24時間以内に返す”“お客様の悪口は言わない”など、自分の仕事のポリシーを言語化し、共有しておく。そうやって境界線を作れば、異文化コミュニケーションにあまり困らなくなってくると思います」と稲垣さんはコメントしました。
<番組概要>
番組名:週刊Nobbyタイムズ
放送日時:毎週木曜日 19:00-20:55
出演者:DJ Nobby(パーソナリティ)、宮田リコ(アシスタント)、高橋里実(アシスタント)