脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
7月5日(土)の配信では「生成AIとの付き合い方」に関する質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
先日、初めて生成AI(人工知能)の「ChatGPT(チャットジーピーティー)」(※アメリカのOpenAI社が開発した、まるで人間と会話しているかのような自然な文章で応答するAIチャットボット)を使ってみました。
今まで抵抗があって使っていなかったのですが、いろいろな言葉の意味や言い回しを知っていて、びっくりしました。茂木さんはAIを使って調べ物をすることはありますか?
<茂木の回答>
ChatGPT、Gemini(ジェミニ)、Claude(クロード)など、いろいろな生成AIがありますけれど、私たち研究者は当たり前のように使っています。AIを利用することを前提にいろいろな研究や調べ物をしています。初めて生成AIをお使いになったとのことで、本当に素晴らしいと思います。
生成AIは、私たち人類が今までネット上などに書いてきた情報を学習して、ある意味では人類全体の知恵をまとめてアウトプットしてくれています。そういう意味においては、本当に便利なツールだと思います。
例えばGoogleのような検索エンジン代わりに使う方法もありますし、若い世代では、人生相談をする相手として「こんなことで悩んでいるんだけれど、どうすればいい?」とAIを相談相手として使っている人もいるようです。生成AIは、これからの人間の生き方を考える上では、非常に大事なものになるのではないかと思います。
一方で、ChatGPTなどの生成AIは「ハルシネーション」(=幻覚。AIなどが、あたかも幻覚を見たかのように、事実でないことを真実であると生成してしまうこと)を起こすこともあります。日本語に直訳すれば「幻覚」という意味ですが、AIは事実ではないことを言ってしまうこともある、ということですね。
また、教育現場では学生がレポートなどを生成AIに書かせて提出してしまうことが問題になっています。せっかく学ぶチャンスがあるのに、それを逃してしまうことになりますよね。ハルシネーションや、自分で書いた文章の提出を求められる場で、AIの作った成果物を出してしまうといったような問題に注意すれば、便利なツールではないかなと思います。
そして、このChatGPTは、実は人の感情やニュアンスを完全に理解しているとは言えません。ですから文章がしっかりと書けていたとしても、自分自身の本当の気持ちや、心の機微は汲み取ってもらえないところもあるので、「やっぱり人間相手に話すほうがいいな」と思うこともあるかもしれません。
いずれにせよ、生成AIは今どんどん進化しており、人間との関係も研究されているところなので、時代とともに歩むという気持ちで、いろいろと試していただくといいのかなと思います。
----------------------------------------------------
音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
----------------------------------------------------
<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎