モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月17日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「防衛省、218人を処分。相次ぐ不祥事の背景は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
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◆防衛省が違反者・不正者218人を処分
防衛省は7月12日(金)、国の安全保障に関わる「特定秘密」の情報や海上自衛隊の潜水手当の受給などをめぐり、違反や不正があったとして218人を処分しました。
吉田:塚越さん、まずは今回の処分について教えてください。
塚越:今回の不祥事ですが、大きく分けると4つあります。1つ目が、特定秘密の違法な取り扱い。2つ目が、海上自衛隊の潜水手当の不正受給。3つ目が、海上自衛隊基地内で隊員が不正に飲食物を受け取った問題。4つ目が、政策立案をおこなう防衛官僚、いわゆる“背広組”のパワハラです。順に解説します。
吉田:1つ目の「特定秘密の違法な取り扱い」。こちらは、どういった問題でしょうか?
塚越:特定秘密とは、2014年に施行した「特定秘密保護法」で決められた防衛や外交といった4分野で、特別に秘密にすべき情報です。これを扱うには「適正評価」という審査が必要で、去年末時点で資格保有者は13万5,000人。そのうち防衛省関連は12万2,000人と、ほとんどが防衛省関係者です。
ただ、今回起きた問題の大半は、この適正評価を受けていない資格未保有者が情報を扱っていたり、レーダーやソナーの情報を集約する「戦闘指揮所」という護衛艦の重要な場所に勤務したりしていました。
秘密情報は、実際に情報を見聞きしなくとも情報を知り得る状態にあれば「漏えい」になりますが、そうした認識が海上自衛隊全体になく、教育もなかったということで、かなりずさんな管理だということです。合計で58件の不正が発覚したことで、延べ121人が停職や訓告といった処分になりました。
特定秘密保護法は、成立時に国を二分する議論になり、いろいろありました。この番組でも取り上げましたが、5月にはセキュリティ・クリアランス制度(適正評価)を一般の方や経済を扱う方にも拡大する法案も成立しました。それにもかかわらず、肝心の秘密情報の「運用」がずさんだったら、元も子もありません。
特に自衛隊はアメリカと情報共有することもありますが、外国から信頼されなくなる可能性もあります。セキュリティ・クリアランス制度に賛成の人も反対の人も、いずれにしても許されない問題かなと思います。
◆潜水手当の不正受給 組織の“慣習”になっていたか
吉田:2つ目の「潜水手当の不正受給」。こちらは、どんな不祥事でしょうか?
塚越:こちらは遭難した潜水艦を救助する潜水士が、実際は訓練で潜っていないのにもかかわらず潜水手当を受け取っており、不正受給総額がおよそ4,300万円になったというものです。
処分された潜水士は計74人で、免職や減給などの処分が下されました。潜水艦救難艦の搭乗員の多数が不正に関わったとのことです。なかには1,500時間も潜水時間を偽って、およそ200万円を不正に受け取った隊員もいました。手当は潜水する深さに応じても金額が変わり、水深400mだと1時間1万円となります。こうした距離の水増しなどもあったということです。
問題はこれが誰か1人の問題ではなく、組織として習慣化していたことです。架空訓練のでっちあげは潜水士のまとめ役の「潜水員長」という人も、その上司にあたる「潜水長」も不正を黙認していました。上司も黙認していたということで、潜水士らは内部調査の聞き取りに対して「ダメだと分かっていたけど先輩がやっていたので踏襲した」と述べました。海事の調査は記録が残っている2017年4月以降ということですが、もっと前から不正が常態化していた可能性もあります。
◆同僚に見える形で罵倒 パワハラも問題に
ユージ:3つ目の基地内で不正に飲食物を受け取った問題。4つ目の防衛官僚によるパワーハラスメント。これらはそれぞれどういった問題でしょうか?
塚越:3つ目の不正に飲食物を受け取ったという問題についてです。基地内に住んでいる人だけが無料で食べられる食事があるのですが、自衛隊の3つの食堂で2020年4月~2022年2月の間に、無料の対象ではない22人の隊員が不正に食べたということです。その金額の合計が160万円に上るということで、これはアウトですよね。
4つ目が防衛官僚のパワハラで、“背広組”と呼ばれる政策立案などをおこなう内部部局の幹部3人が懲戒処分になりました。例えば、主要幹部の方々が部下に「チンプンカンプンで理解不能」などと書いたメールを送りました。同僚にも見える形で送ったということで、かなり威圧的だと問題になりました。
◆問題の背景には厳しい人手不足が
ユージ:今回、公表された不祥事には、どのような背景があるのでしょうか?
塚越:たとえば、他にも川崎重工業が、潜水艦の修理で裏金を捻出して隊員に金品や接待をおこなっていたことも問題になっています。背景として考えられる理由の1つは、大きな気の緩みです。これだけ防衛費が増額されるというなかで、いろいろと注目されているのに、ずっと気が緩んでいるということ。
もう1つは人手不足です。実は、去年度は採用者が半分くらいしか集まりませんでした。人が少ないので、やることが増えているということです。規律が難しいという事情は分かりますが、問題が多いです。これは何とかしないといけないですね。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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7月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年7月25日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世