モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。10月11日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『物流2024年問題』の緊急対策 負担軽減につながるか?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
◆「2024年問題」の緊急対策とは?
政府は10月6日(金)、トラック運転手の人手不足が懸念される物流業界の「2024年問題」に関する関係閣僚会議を開き、緊急対策をまとめました。
吉田:塚越さん、まずは「物流の2024年問題」とはどのような問題なのか、改めて教えてください。
塚越:働き方改革関連法が、来年4月からトラック運転手にも適用されることに伴う問題です。これまでトラック運転業界での残業規制は、一気に変えると影響が大きくなるため他業種よりも(適用に)時間的に猶予がありました。
しかし、来年4月からは猶予期間が終わり、トラック運転手の残業労働上限が年960時間に制限されます。対策を講じなければ、2024年度の輸送力は14%不足し、2030年度には34%の不足になると政府は推計しています。
吉田:緊急対策には、どのような対策が盛り込まれたのでしょうか?
塚越:運転手の負担が大きいとされる宅配の再配達を減らすことを「緊急的な取り組み」と位置づけて、配達物を自宅の玄関などに置く「置き配」や、コンビニでの受け取りを選ぶ消費者にポイント還元をおこなう案が出ました。
具体的な仕組みは今後詰めていきます。なるべく早く実証実験をおこない、現状12%の再配達率を来年度は6%へと半減させることを目指すということです。
また、「事業者(運送業者)」に対しては、これまでトラックで運んでいた荷物を、一度により多く運べる鉄道や船舶(貨物船)に代替する「モーダルシフト」も進め、今後10年程度で鉄道や船舶の輸送量を今の倍にすることを目標としました。政府も、陸上と海上をつなぎやすい施設や道路整備に力を入れると話しています。
さらに「一定以上の規模の荷主(荷物の送り手)」に対しても、運転手が積み降ろしの順番を待つ、いわゆる「荷待ち」といった待機時間の短縮など、効率化のための計画策定を義務付けることになりました。これに十分に取り組んでいない場合は、指導や命令をおこなう方針です。政府は、運転手の賃上げや、下請けに不利がないように契約書を電子データで保存することを求めるということです。
こうしたことも重要だと思いますが、トラック事業者の大部分は中小企業なので、この負担をどうするかも考える必要があると思います。いずれにしても、待遇改善に向けた関連法の改正を年明けの通常国会で考えており、具体的な対策は10月下旬に政府がまとめる予定の経済対策に盛り込む方針です。
◆「置き配」へのポイント制で再配達は減るか?
ユージ:対策の1つである「置き配やコンビニ受け取りを選ぶと、ポイントがもらえる制度」、これで再配達が減ると思いますか?
塚越:減る・減らないでいえば、ある程度、減ることは間違いないです。社会的にも物流問題は意識されていますし、運転手さんが大変なのも多くの人々が理解しています。実際、東京の八王子市では、鍵付きの置き配バッグを無料配布する取り組みを開始しています。宅配業者の方が、玄関のドアにぶらさがったバッグに配達物をつめて鍵をかけるというもので、毎日1,000件を超す応募が来ているそうです。
一方で、ある宅配ドライバーの方はテレビ朝日の取材に対して、「置き配は嬉しいですが、『荷物がなくなった』といったクレームが来ると、やはり大変。今回のようなポイント制度は嬉しいですが、ドライバーが不安になっている点は理解してほしい」と述べています。
(ドライバーが玄関前に配達物を置き配したという証拠の)写真を撮って、荷物の受け取り主に送信したとしても、荷物が盗まれたりしてなくなってしまった場合はクレームになるので、先程のような鍵付きの置き配バッグなどの需要はあると思います。
◆一番の問題は「企業間輸送」
ユージ:政府がまとめた緊急対策、トラックドライバーさんの負担軽減につながると思いますか?
塚越:なると思います。しかし、個人向けの宅配個数はどんどん増えているので、置き配へのポイント制度などは必要かもしれません。個人的には、もっと重要な問題があるだろうと思います。フリーライターで、ご自身も元トラックドライバーの橋本愛喜さんが今年4月に書いたYahoo!ニュースのエキスパート記事(2024年問題を「宅配の問題」とする国やメディアによってますます見えない化する「企業間輸送」の現場)によると、個人宅配の一方で「企業間輸送(企業同士のやりとり)」はもっと重要だと述べています。
トラックには一般貨物自動車運送事業というものがあり、そのなかの一形態に、いわゆる個人向けの宅配便である「特別積合せ貨物運送事業」があります。この宅配便の事業者は、「全日本トラック協会」の2022年の資料によると、企業向けの一般貨物自動車運送と比べて圧倒的に少ないということです。
従業員数十人レベルの運送業者の大部分は、企業間輸送をおこなう業者です。橋本さんによると、個人宅配よりも企業間輸送のほうが圧倒的に量が多く、政府が緊急の取り組みという個人配達の再配達を半分にしても、どこまで効果があるのか? と疑問を述べています。
個人宅配が増えても、(全体のなかで)多いのは企業間輸送です。企業間輸送の問題を何とかしないと、私たちが受け取る荷物も少なくなりますし、(企業が)売れるものも少なくなります。置き配も大事ですが、こういった観点からも政府はどういうことをやるのか、注目しなければいけません。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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10月11日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年10月19日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世