笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。12月17日(土)の放送は、
前回に引き続き、モデルナ・ジャパン株式会社 代表取締役社長の鈴木蘭美(すずき・らみ)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)鈴木蘭美さん、笹川友里
鈴木さんは、1999年に英・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで医学博士号を取得。2016年にはエーザイ事業開発執行役を務め、2017年よりジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門「ヤンセンファーマ」事業開発本部長やメディカル事業部門本部長を歴任。2020年、フェリングファーマ株式会社最高経営責任者などを経て、2021年11月より現職に就いています。
◆現在のキャリアを築けた理由
鈴木さんは、イギリス・ロンドンの中心街にある大手製薬会社エーザイの事業開発部門で活躍していましたが、ある日、そのオフィスが移転することに。
そのとき、お腹のなかに第3子を身ごもっていたこともあり、家族全員で移転先の場所に引っ越したくなかった鈴木さんは、「退職するかもしれない」と上司に相談したところ、「東京のエーザイに行かないか」と提案され、イギリス人の夫と相談した結果、家族全員で日本行きを決意します。
当時から“いつか日本に帰って子育てをしたい”という強い思いがあったため、「素晴らしい機会に恵まれた」と振り返ります。
また、3人の子育てをしながら現在のキャリアを築けたのは、主夫として家庭を支えてくれた「主人のおかげ。彼が(主夫として家庭に入り)子育てに専念してくれていなかったら、今の私のキャリアはない」と感謝の言葉を送ります。
◆コロナ禍を通して実感したこと
新型コロナウイルスの感染拡大でワクチンを開発したことにより、社名が全国区になったと言っても過言ではない「モデルナ」。ここで笹川が「コロナ前と後で製薬会社、創薬の世界にとって変化はありましたか?」と質問すると、「やはり、メッセンジャーRNA(mRNA)の力が明らかになったことが大きい。あと各国の当局が、この薬を使えるようにするか否かを判断するスピードも早まったと思う」と鈴木さん。
さらに、もう1つの要因として、「通常、薬の力を見定める際には、まず“この薬を数百から数千人の患者さんに投与して、その結果、全体的に患者さんがどうなったか”ということを長期的に見てから、薬を評価する『治験』をおこないます。
その方法とは別に、承認されて世に出た薬が、実際に人々に投与されたときの効果等“をデータとして収集していく『リアルワールドエビデンス』という方法があり、この力がより強くなっている」と説明します。
また鈴木さんいわく、治験とリアルワールドエビデンスには、それぞれメリットとデメリットがあると言います。例えば、治験のデメリットは、データを収集する際に、妊婦さんやすでに疾患のある方、何かしらの薬を服用している方など、治験の対象にならない人が出てきます。治験だと、そういった人たちのデータは入手できないことが多いです。
一方、リアルワールドエビデンスでは、妊婦さんや疾患のある方は世の中にたくさんいるため、その人たちのデータも収集することが可能です。新型コロナウイルスのワクチンがまさに良い例で、「何万人、何十万人の人々のデータになるので、規模が治験よりもずっと大きい」とメリットを挙げます。
現在、全人類の約7割が新型コロナウイルスのワクチンを接種したと言われており、「その多くがメッセンジャーRNAのワクチン。生後6ヵ月の赤ちゃんから110歳を超えるご老人まで、これだけ広い年齢幅、さまざまな人種や状況下で使用された薬はおそらくない。だから、とても貴重な情報がリアルワールドエビデンスとして存在すると思う」と話します。
◆鈴木蘭美が見据える未来、展望とは?
同社は、新型コロナウイルスのワクチンを約11ヵ月で世に出しましたが、「たくさんの人の命を救うことが主目的だとすると、WHO(世界保健機関)が『パンデミックが始まった』と声明を出してから100日以内に、ワクチンを接種できる状況を作る必要があった。もしできていたら、もっとたくさんの命が救えたはず」と悔やみます。
とはいえ、短期間で新たなワクチンを開発するのは容易ではなく、「これからまだまだやらなければならないことがたくさんありますし、私は“やればできるんじゃないか”と信じている。それには弊社だけでなく、たくさんの人々が協力し合うことが必須」と力を込めます。
最後に、笹川が今後の展望を尋ねると、鈴木さんが真っ先に挙げたのは「がんの完治と認知症の予防」について。“必ず成し遂げる”という強い思いを持って邁進しており、「私の周りには同じ志を持った同志がたくさんいるので、(その実現に向けて)前進していきます」と胸を張ります。
また、鈴木さんの思う20~30年先の未来については「“未病”“予防”というところが強くなってくると思いますし、さらに個別化していくので、ご自身に合った方法で予防することが、今後は進んでいくと思います」と推測。
例えば、「がん細胞というのは、常日頃から人の体に存在するけど、(自分たちの)免疫がむしゃむしゃと食べてくれているはずなんです。でも、その食べている量が足りなかったり、免疫が食べるべきがん細胞を見つけられなかったりすると、がん細胞が増えていくと考えられています。
つまり、がん細胞に対する免疫がちゃんと分かるようなワクチンを打てれば、免疫ががん細胞をしっかり食べてくれるはずなので、そもそもがんにはならない、というコンセプトの(がんワクチンの)開発も進んでいる」と解説します。
こうした研究・開発が進むことで、(家系などから)自分ががんになる可能性が高い人、1度がんを患い再発したくない人などは、「より予防的な治療ができるのではないか」と期待を込めました。
次回12月24日(土)の放送は、モーションリブ株式会社 代表取締役CEOの溝口貴弘(みぞぐち・たかひろ)さんをゲストに迎えてお届けします。同社の力触覚技術「リアルハプティクス」についてやロボット活用における今後の課題など、貴重な話が聴けるかも!? どうぞお楽しみに!
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聴取期限 2022年12月25日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/