全国のコミュニティFMに番組配信をおこなうTOKYO FMグループの「ミュージックバード」で放送中のラジオ番組「~DAIKIのInclusive Monday!~『教科書では学べないこと』」。障がいのあるダンサーで、NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演中のSOCIAL WORKEEERZ 代表のDAIKIが、多様な分野からのゲストを招き、自身の経験や視点を通じてインクルーシブな(誰も仲間外れにしない)社会を築くためのアイデアや挑戦に焦点を当てます。
6月3日(月)の放送では、ゲストにWOOOLY株式会社 取締役運営本部長の飯牟礼聡志(いいむれ・さとし)さんが登場。同社が運営する就労継続支援B型事業所の作業内容や、今後の課題について伺いました。
(左から)パーソナリティのARISA、飯牟礼聡志さん、DAIKI
◆就労継続支援施設に注目!
今回の放送では、障がい者就労継続支援B型事業所「ウーリー」を運営している、WOOOLY株式会社の飯牟礼聡志さんがゲストに出演。就労継続支援施設についてお話を伺いました。
就労継続支援施設とは、一般企業での就業が難しい障がい者を対象にした、就業準備や訓練の場を提供する支援施設を指します。就労継続支援施設は就労継続支援A型・B型の2種類があり、A型は雇用契約を結び一般就労に近い形であるのに対し、B型は雇用契約を結ばず、体調や障がいに合わせた利用が可能です。
通所する障がい者との雇用契約がないため、賃金ではなく、作業に対する成果報酬が「工賃」として支払われます。障害福祉サービスを利用できるのは、身体、知的、精神(発達障がいを含む)の障がい者手帳を持っている、障害の判定や診断を受けている方、または難病患者の方などで、利用について市区町村に申請をして許可を得た方が対象となります。
ウーリーでの作業時間は基本的に10時から15時。あいだに1時間のお昼休憩を挟みます。「楽しく・温かく・柔らかく」をモットーに、スタッフは利用者の特性や体調に合わせ、無理なく作業に取り組んでもらうよう、利用者をサポートします。
「体調に応じて午後のお仕事は控えめにして、職員とお話をして過ごす方もいらっしゃいます。ご利用者様のお気持ちを安定させるような、次につながる支援をスタッフは心がけています」と飯牟礼さんは説明しました。DAIKIは「今日は働けなくても、お話しをする時間にあてるということは、誰も置き去りにしないということですよね。それが福祉のあるべき形だと思います」と自身の考えを述べました。
ウーリーでは作業を自分で選べます。ある事業所ではボールペン作りや化粧箱の組み立てなど、いわゆる内職作業といわれる机に向かっておこなえるものが全体の半分くらいの割合で、もう半分は自社製品の制作に注力。オリジナルキャンドル、ビーズアクセサリー、コースターなど、利用者の個性が発揮できるハンドメイド作品を自由に作ることもできます。
「当社のハンドメイド作品に関しては、『こういうことをやらせてもらえないか』とスタッフの提案が元になり生まれたお仕事です。スタッフは毎日いろいろなYouTube動画などを観ながらハンドメイドの研究をして、事業所で試してくれるんですよね」と飯牟礼さんは言います。他にも、喫茶店、プリン専門店の運営、ネイル施術体験イベントといった、障がいのある方々が仕事を通してやりがいや達成感を得られるような、独自の取り組みに尽力しています。
◆B型事業所の“価値”を高めることが大切
続けて、飯牟礼さんから、就労継続支援B型事業所の実情についても伺いました。利用者が自立して働けるようになるには、国も方針として掲げる工賃の引き上げが課題となります。一方で、仕事量を増やすことだけで工賃を引き上げようとすると、自身のペースや体調にあわせた働き方をしたい利用者の負担が増えるリスクもあります。障がいのある方々にとって、仕事の選択肢が少ない環境、そして事業所においても仕事量でのノルマを課すことでプレッシャーを感じさせてしまうことは、利用者のみならず、業界としても社会全体としても改善の余地があります。
飯牟礼さんは「1ヵ月20日間ほど通所いただいた場合、平均工賃は1万5千円ほどです。内職作業のような反復作業が得意なご利用者様にとっても、オリジナル商品を作り消費者に喜んでもらえる仕事をしてみたいご利用者様にとっても、利用しやすい事業所など社会全体と連携した新たな仕事の提供や、仕事量のノルマだけではなく仕事の質や価値を高めることが工賃向上につながる鍵になるのではないか」と話しました。
また、就労継続支援B型は「障害者総合支援法」に基づいて提供されるサービスの一環のため、福祉サービス利用料がかかります。利用者の自己負担額は原則最大1割ですが、なかには利用すればするほど負担額が増え、もらえる工賃を超えてしまうケースもあります。
「そういった方でもしっかりと仕事にやりがいを持てるような仕組みを業界全体でやっていくことで、就労継続支援B型事業所(の在り方)が確立していくのではないかと思います」と飯牟礼さん。「福祉以外の社会ともつながりをつくり、B型事業所の価値を高めることが工賃アップへの近道になる」とメッセージを伝えました。
現在、WOOOLY株式会社は、就労継続支援B型事業所拠点を50ヵ所運営し、古い業界の体質を変える新風になっていきたいと言います。ただ、いくら業界や社会を変えていきたいと願っても、全国に15,000ものB型事業所があるなかで、現状の事業所数では影響は限られてきます。そのため、ウーリーができる最大の事業所数として、2025年までに100店舗に拡大することを「チャレンジ100」と称し、目標に掲げています。
今後の会社の展望について、飯牟礼さんは「チャレンジ100という100ヵ所運営を目指し、業界全体にB型の運営のやり方だったり、事業所が抱える課題などを広く知ってもらうなど、社会に影響を与えられる会社にしていきたいです。ウーリーが業界全体を盛り上げる存在になっていきたいと考えております」と未来を見据えていました。
<番組概要>
番組名:~DAIKIのInclusive Monday!~「教科書では学べないこと」
放送日時:毎週月曜日 19:00~20:55 (生放送)
パーソナリティ:DAIKI、ARISA