モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。5月11日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「国産の次世代 半導体企業『Rapidus(ラピダス)』」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
次世代半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」の東哲郎会長が共同通信のインタビューに応じ、技術開発関連に2兆円規模の資金が必要との試算を示し、国に支援を求める考えを明らかにしました。
吉田:国策で作られた企業なので、こうしたリクエストができるということですが、なぜ今、国策で半導体メーカーを立ち上げる必要があったのでしょうか? 仮にリクエストに応じて国が2兆円を出したとして、世界的なマーケットで日本産の半導体は戦っていけるのでしょうか? 塚越さんに解説していただきます。
◆世界的に不足する半導体…その理由は?
ユージ:まず、あらためて半導体について教えていただけますか?
塚越:半導体とは、電気を通す物質と、電気をほとんど通さないゴムなどとの中間の性質を持つ、シリコンなどの素材で作られたものです。電化製品の制御などを目的に、あらゆる電化製品に搭載されています。とりわけハイテク製品に必要なものなので、半導体は産業にとって非常に重要な位置を占めています。
ユージ:身の回りにあるものの、何にでも使われていると思っていいんですね?
塚越:はい、何にでもあるという感じですね。昨今はAI(人工知能)などのIT分野の発展で需要が増えていて、世界的に半導体不足の状況です。自動車などの納品が1年先という事態にもなっています。
ユージ:なぜ世界的に半導体が不足しているのですか?
塚越:要因はさまざまです。まずは、コロナ前に“米中の貿易摩擦”がありました。アメリカが「中国製品はセキュリティ的に問題だ」と指摘したことから、両国の間でさまざまな問題が起こって半導体の流通が減り、逆に他の国で半導体需要が出るなどアンバランスになりました。
そこにきて、一番の打撃となったのがコロナ禍です。世界中の工場の生産力が下がり、輸送コストは上がり、さらにコロナ禍初期には半導体需要が減ったものの、巣ごもり需要でパソコンやインターネット回線などのインフラ設備やクラウド関連の需要が増えるなど、半導体の需要が乱高下しました。
半導体は製造するのに最低でも数ヵ月かかるので、生産するにも見通しが立ちづらく混乱状態になりました。
さらに問題なのは、(ロシアによる)ウクライナの問題が出てきたことです。半導体の製造に必要な素材の一部は、ロシアやウクライナから供給されているということもあり、さらなる混乱が起きました。
また、半導体の製造は台湾の企業が大きな立ち位置を占めていますが、「台湾有事」の問題も叫ばれているので、西側諸国などは「台湾以外でも半導体の製造拠点を作る必要があるのでは?」という声も上がっていて、問題が山積みという感じです。
◆次世代半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」とは?
ユージ:そうした事情があるなか、日本で作られた「ラピダス」とはどんな会社なのでしょうか?
塚越:「ラピダス」は、半導体不足とその需要を見込んで2022年8月に設立された日本の半導体会社です。トヨタやソニーグループ、NTTなど日本の大企業8社が出資し、国も支援しています。ラテン語で「速い」を意味する「ラピダス」は、アメリカのIBM社と提携し、半導体技術の提供を受けることになり、2027年度をめどに最新の半導体の量産を目指しています。
政府はすでに3,300億円の支援を決定していますが、「ラピダス」側によると、技術開発に2兆円はかかり、別途、工場建設などには3兆円かかるということで、国に2兆円程度の中長期的な支援を求めています。
吉田:仮に国が2兆円出したとして、それを上回る利益を上げられるのでしょうか?
塚越:半導体市場は需要と供給が乱高下すると述べましたが、最近も世界的な景気後退があり、2024年には半導体が供給過剰になる「2024年問題」も懸念されています。さらに、米中も半導体に力を入れているなかで、どこまでプレゼンス(存在感)を持てるかという課題があるのは事実です。
◆今後、半導体産業はどうなっていくのか?
塚越:コロナ禍やウクライナ問題など何が起こるかわからない世の中で、いろいろな課題があるとはいえ、半導体が世界の産業にとって重要なのは事実です。支援の中身は精査が必要ですが、やはり戦う必要はあるのではと思います。
と言うのも、日本は80年代には半導体のシェアが世界で5割程度あり、トップを走っていました。しかし、アメリカからの関税や、アメリカに有利な協定を結ぶ、いわゆる“圧力”があったうえに、日本のバブル崩壊もあって、それから半導体の分野が急速に弱くなっていってしまったんです。
簡単に言うと、一度負けてしまったわけですし、「どうやって盛り返していくのか?」という声も上がっていますが、もともと技術力はありました。今でも全く技術力がないわけではないので、やはりもう1回、戦う姿勢を見せなければ、世界に遅れに遅れていくだけです。そういう意味では、戦う価値はあるのかなと思います。
ただ、2兆円という金額は、ただでさえお金がないなかで、みんなを納得させられるような投資ではないと、政治と企業の“癒着”と見られてしまう可能性もあると思います。とはいえ、アメリカの半導体会社「NVIDIA(エヌビディア)」なども注目されていて、半導体企業が世界的に注目されているのは間違いないので、ここは日本にも頑張っていただきたいというのは正直なところですね。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/