本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
10月8日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「自民党新総裁誕生後の“高市トレード”と今後の“財政政策と金融政策”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆高市新総裁効果で株価上昇?
浜崎:今回、宗さまには「自民党新総裁誕生後の“高市トレード”と今後の“財政政策と金融政策”」というテーマについてお話しいただきます。
やしろ:今週に入ってから日本の株式市場が急上昇しました。高市さんが自民党の新総裁になったら上がるんじゃないか、それとも下がるんじゃないかという両方の予想があったと思いますが、今回の動きは新総裁が高市さんに決まったことが影響しているのでしょうか?
宗正:株式市場は様々な要因を織り込みながら動きますが、今週10月6日の月曜日の急上昇は、ほぼその影響ですね。日経平均株価は、終値ベースで前の週の金曜日から2,700円以上も上がりました。終値で4万7,944円76銭ですから、日経平均株価の史上最高値をあっさりと余裕で更新しました。
やしろ:ここにきて初めて5万円台が見えてきたような、そんな気がしたんですよね。
宗正:株式市場が大きく動くときは、事前の予想と異なることが起きたときなんです。自民党の新総裁に本命視されていた小泉氏が負けて高市さんが勝ちました。高市さんが掲げる積極財政路線は、景気が上向いて、株式市場も上がりやすい政策なんです。
そしてもう一つ、高市さんは日銀の利上げに消極的な姿勢を取っています。つまり「円安派」ということで、今週の月曜日は一気に1ドル150円台まで為替は円安方向に進行、円安は日経平均株価にとってプラスに作用するんですね。
輸出関連銘柄の割合が高い日経平均株価にとって、円安の方がいいじゃないですか。この辺りが日本株が急上昇した主な要因なので、高市さんが自民党の総裁選で勝ったことが日本の株式市場を大きく押し上げたと言っても過言ではありません。
やしろ:なるほど、1年前の自民党総裁選での1回目の投票直後、高市氏優位が報じられた際にも株式市場が同じような動きをしたそうですね。
宗正:思い起こせば昨年9月の自民党総裁選では、最終的に決選投票で石破さんが勝ちましたが、1回目の投票では高市さんが優位な情勢でした。1回目の投票結果が出た瞬間に1ドル146円台半ばまで一気に円安が進行しました。
それと同時に株式市場も急上昇しました。私はリアルタイムでその変化を見ていましたが、このときの金融市場の動きを称して「高市トレード」と呼ばれるようになったんです。
ちなみに、決戦投票で石破さんが勝ったときには、石破さんは利上げ容認派ですから、今度は一気に1ドル142円台まで円高が進行しました。
やしろ:そんなに大きく、しかも短期間で動いたのですね!
宗正:そのときの日経平均株価の先物取引は、2,000円以上も下がって、翌日の日経平均株価は1,900円を超える下げ幅でした。政治の動向と金融市場の動きは、こんなにも密接に絡んでいるということです。
◆先ずは物価高対策と積極財政の2つから着手
やしろ:高市新内閣がこのまま発足した場合、新内閣の動きで先ず注目すべき点はありますか?
宗正:順当に高市新内閣の発足となれば、閣僚人事に注目したいところですが、ここに来て野党の動きが活発になっているのが気になります。どの政党と連立を組むのか、あるいは連立に至らないまでも最近では連携なんて言葉も出てきています。今の自公連立の状態が今後も続くとは限らないというのが個人的な見解なんですが、先ずはこの辺りの動きに注目です。
そして、高市新内閣が発足したときには、先ほどの高市トレードの要因となった、高市氏が掲げる財政政策と金融政策を具現化できる閣僚メンバーをどこまで固めることができるのか? ここも大きなポイントですね。
やしろ:話に出た財政政策の中で、高市さんならではのもの、それはどういうところになりますでしょうか?
宗正:先ずは物価高対策と積極財政の2つですね。ガソリン税の暫定税率については年内廃止で与野党間で合意していますが、高市さんは軽油もそこに含めたいと。軽油って移動や輸送で結構使いますからね。ガソリンや軽油の実質的な値下げは、数多くのモノの価格やサービス価格に波及します。
それから医療や介護については、国がサービス価格を決めていますが、ここも早々に支援しなきゃいけないと。最近は深刻な赤字や倒産が相次いでいますから、すでに補正予算を組みたいと発言しています。そして赤字企業の賃上げ支援策、中小企業や小規模事業者に対する手当ですね。注目されていた消費税率の引き下げについては、自民党内で多数派にならなかった現状を考慮して、消費税率を下げるよりも他に優先的にやるべきことがあるだろうと。先ずはそこから着手したいとしています。
いずれにしても、こうした対策を実行するには新たな財源が必要で、責任ある積極財政を訴えていますが、それを実行できるかどうか。戦略的な財政出動で強い経済を実現したい、投資をすればそこには需要が生まれて、仕事が増えれば税収も増える。税収が増える賢い支出「ワイズペンディング」が高市さんの方針です。
◆高市新総裁、日銀政策への影響は?
やしろ:財政政策についてお話いただきましたが、もう一方の金融政策についてはどういった点に注目したら良いでしょうか?
宗正:金融政策については、政府と日銀の協力体制を重視とするという方針です。財政政策も金融政策も責任を持つのは政府。金融政策についてベストな手段を考えるのが日銀の役割、というのが高市さんの考え方なんです。
特に安倍政権の頃から、政府と日銀は協力しながら色々なことを進めてきました。本来、政府と中央銀行(日銀)には一定の距離感が求められますが、必要に応じて協力すべきは協力して行きましょうと。
それから日銀は2%の物価安定目標をずっと掲げてきましたが、現状はちょうどギリギリのラインなんです。これまでは急速な物価高によってインフレが加速してきましたが、これからは需要の増加が引っ張るデマンドプル型のインフレを目指して日銀と連携したいというのが高市さんの意向です。
やしろ:デマンドプル型のインフレ、そっちの方が本来の健全な上がり方ですよね。
宗正:最近の日銀の考えは、これだけ物価が上がってきているので本当は利上げをしたいはずなんです。ただ高市さんの考えは利上げは時期尚早だと、まるで正反対なんです。
10月の最終週には日銀の金融政策決定会合があります。ここでどういうスタンスを植田総裁が取るのか。植田総裁は任期5年の半分がちょうど終わったところなんです。植田総裁は就任以降、マイナス金利政策の解除をはじめ、これまで手付かずだった数々の課題の道筋をつけてきました。自民党の新総裁が高市さんになって、植田総裁の方針や対応に変化が出てくるのかどうか、ここも注目ですね。
◆トランプ大統領との良好関係が築けるか?
やしろ:そして今月末にはアメリカのトランプ大統領が来日という情報もあります。すごいタイミングだなと。日米関係の構築、これはやはりいろんなところで重要になってきますよね。
宗正:なりますね。やはり国と国との外交で大事なこととして、両国のトップ同士の気が合うかどうかはものすごく重要です。気は合いそうな気はするんですけどね。
やしろ:安倍さんとトランプさんの関係性で行くと、やっぱり安倍さんの後継者と呼ばれる高市さんですから、良好な関係になりそうな感じはしますよね。
宗正:安倍元総理とトランプ大統領って本当に仲が良かったので、国際会議の場でトランプ大統領が暴れるたびに安倍元総理が抑える役割でしたからね(笑)。そういった信頼関係を築けるのかどうかっていうのが一つと、日米同盟の今後のあり方について、どのような意見交換がなされるのかっていうことにも注目したいですね。
もちろんその前に、先ずは高市新内閣を確実に発足させることが必要です。新内閣の発足まで、一波乱も二波乱もありそうなそんな気がしてなりません……。
<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保