モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。3月7日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「物流・医療だけじゃない! 建設業界の2024年問題」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
◆「2024年問題」は建設業界にも
「働き方改革関連法」によって、4月から一部の業界で「時間外労働の新ルール」がスタートします。この時間外労働の上限規制を含むさまざまな要因が「2024年問題」と言われ、当番組でもこれまでに「物流」や「医療」の「2024年問題」を取り上げてきました。
今回は「建設業界の2024年問題」について塚越さんに解説していただきます。
塚越:まず前提として、建設業界は長時間労働と人手不足が問題になっています。国土交通省の資料では、建設業界の2021年の総実労働時間が、全産業と比べて340時間以上=およそ2割も多いです。
また、人材については特に、働き手の高齢化と若手の人材不足が課題になっています。2022年の建設業界の就業者数は479万人ですが、ピークは1997年の685万人なので、25年で200万人減っています。
そこで国土交通省は、長時間労働を是正するため、労働環境の悪化につながるような、短すぎる工事期間での受注を禁止して、違反した事業者には指導監督を通じて改善を求める方針です。
また、物流や医療業界と同じく、時間外労働の上限は「月45時間、年360時間」が原則で、違反すると罰則が課せられるようになります。さらにいえば、週休2日制の導入や福利厚生の改善、賃金が上がりやすい仕組みで人材確保を目指すことが望ましいのですが、実際は難しいかなというところです。
◆残業時間規制によって職人さんが減ってしまう可能性…その理由は?
吉田:では、実際にどんな課題がありますか?
塚越:大きな課題としては、残業規制が離職者を増やす可能性があるということです。残業を想定して働いている人にとっては、労働時間が短くなれば単純に手取りが減るので、離職する人が増えてしまいます。職人さんの給与形態は日給制が多く、例えば週休2日になると手取りが減るので、これまで働いてきた人にとっては問題です。
とはいえ職人さんを引き止めるために、残業がなかったり休みが増えたりしても、以前と同じような給料を払うとなると、人件費が増加することになります。さらに、そもそもの物価高に加えて建築資材が高騰しているという問題もあり、(建設業界全体として財政が)圧迫されているとのことです。
ユージ:建設現場で働いている僕の友人たちも同じようなことを言っていますね。
◆現場のDX化を進める大手建設会社
ユージ:そうしたなかで、建設業界はどういった対策をとっているのでしょうか?
塚越:まず必要なのが「作業の効率化」です。例えば、大手ゼネコン「大成建設」では、カメラ画像や計測データをもとに、スマホやタブレットですぐに情報確認をおこなえるシステムを作っています。
簡単に言えば、従来は目視や伝言などで情報収集していた部分をIT化して、情報管理を徹底するというものです。デジタル管理でシフト勤務を徹底化して、残業の上限規制に対応したり、1日で100台を超える工事現場の車両を、スマホやタブレットで常時確認できるようにしています。
他にも大手ゼネコン「清水建設」では、実際に作っている建物のデータと設計データを、メタバース上(=仮想空間上)に重ね合わせて、建物を検査するシステムを開発しています。設計担当者が現場に行く回数を減らすことができ、データ上でできることが増えるので、これも仕事量を減らすことになります。
その他にも、人間の動きをサポートする装置「パワーアシストスーツ」を導入して作業を楽にしたり、ロボットや遠隔操作による作業をしたりといった最新技術の導入や、またドローンで写真撮影をおこなって設備管理をするなど、とにかくツールを使って業務効率化を目指しているようです。
ユージ:今お話しにあった建設会社はかなり大手ですが、中小企業はITツールの導入などは資金面でも厳しいですよね。
塚越:大企業は賃上げなどに対応できますが、下請け企業まで技術導入を進められるかが問われます。また、親会社に単価を上げる交渉ができるかどうかも課題です。
さらに言えば、資金面の問題もさることながら「事務作業の簡略化」でITツールを導入する、そのマニュアルを学ぶのが大変で、むしろ作業が多くなることも考えられます。
これが事務作業の「ジレンマ」で、これまでの猶予期間に対応すべきだったのですが、そこが難しかったのかなというところです。新しいものを取り込んでいく環境づくりは、どの業界でも難しい課題ですが、特に中小企業には厳しいのが現状です。
◆「工期の遅れ」が恒常的に?
ユージ:建設業の2024年問題は、私たちにどんな影響がありそうですか?
塚越:このままですと、労働時間の制限によって建築の工期が、これまでよりも長くなります。資材高騰もあり、現在問題になっている「EXPO 2025 大阪・関西万博」の「パビリオン工事の遅れ」のようなことが、今後も起きるかもしれません。
工事期間内の対応はこれまで通り業界全体として厳しいのですが、労働環境を変えないといけないということは、我々全体で考えないといけません。建設業界の労働環境の変化によって、工事期間が延びることなどを我々も意識しなければいけないと思います。
ユージ:僕の友人も現役で建設業界で働いていますけど、やはり人手不足に相当悩んでいますね。いろいろと見直しが必要になってきそうですね。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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3月7日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年3月15日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世