脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
3月8日(土)の配信では「思考の滞りを打破する方法」に関する相談に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの質問>
私は「自分の思考が滞っているな……」と感じます。自分の思考や行動に対して完全さや正しさを求めすぎてしまい、日常生活に影響が出てしまうこともあります。脳科学的に、創造性を高めるためにできることはありますか?
<茂木の回答>
とてもいい質問だと思います。というのも、日本人は真面目すぎます。我々は学校で「ちゃんとしましょう」「優等生でいましょう」という教育を受けてきたわけで、それがある種の日本人の能力の高さにもつながっているわけなので、大いにけっこうなことではあるのですが、もうちょっといい加減にやってもいい時代になってきているんです。
人工知能が私の専門領域ですが、これは日々進化していて、人間がある程度チャランポランでも情報インフラなどがちゃんとやってくれるから、大丈夫なような時代になってきているわけですよ。
分かりやすい例で言うと、待ち合わせ。昔は「○月〇日の〇時〇分に、デパートの入口前で待ち合わせね!」と、きっちり決めないと会えなかったわけです。ところが今はそこまで厳密に決めなくても、待ち合わせ場所が近づいてきたらLINEで「今どこにいる?」と聞けばいい。今の時代、適当でよくなったわけです。
漢字が書けなくても変換すれば表示されるし、計算をちゃんとしなくてもパソコンやスマホがやってくれる。そもそも、今はみんなお友達の電話番号も覚えていないですが、「電話しよう」と思えば相手にかけられますよね。そういう情報インフラが出てきたので、人間はよりいい加減でいいんです。
自分の思考や行動に対して完全さや正しさを求めてしまうということですが、これは素敵なことだと思うんです。今まで学んできたなかで、そうするのがいいと言われてきた。そして、それがちゃんとできていることは誇りに思ってほしいです。ただ、そこから脳科学の言葉で言うところの「脱抑制(だつよくせい)」を意識してみましょう。本当はいろいろやりたいことや試したいことがあると思うんです。それを抑えなくてもいい。チャレンジをすると失敗することもありますが、失敗してもいい時代になっている。つじつまが合うようになっている時代なので、「脱抑制」をやってみませんか? そうすると新しい自分が見えてきます。
脱抑制する方法ですが、これはいろいろあります。例えば普段の行動とか考え方とちょっと違うやり方をやってみる。あとは取り入れる情報としても、いつもは読まないジャンルの本を読む、観ない映像を観る、聴かない音楽を聴く……なども、脱抑制にはいいですよ。自分と違う分野で働いている人と話すのもおすすめです。
脱抑制とは、今までの自分と違う行動を取るということです。抑制をかけていたものを外すきっかけになるのは、やはり今までとは違うもの。今までと違った情報や人と接することがきっかけになることがありますので、完璧さ・正しさを求めているあなたも、そのままのあなたで素敵なのですが、今年はぜひ「脱抑制」を1つのテーマにしていただけたらなと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎