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TOKYO FMで放送中のニュース番組「News Sapience」から生まれたスピンオフプログラム「Sapiens 2030」(パーソナリティ:手島千尋)。「いま」を起点に、2030年とその先の未来の姿を考えていきます。同番組では、テクノロジーの視点で課題を捉え、社会をより良いものにしていこうとチャレンジしている人々と、その取り組みを紹介します。
3月14日(月)~17日(木)のテーマは「進化する“学びの場”」。小中学校、高校などで利用される授業支援クラウド「スクールタクト」を手がける、株式会社コードタクト代表取締役・後藤正樹さんにお話を伺いました。
株式会社コードタクト代表取締役・後藤正樹さん
文部科学省が推進するGIGAスクール構想により、全国の公立小中学校では1人1台のデジタル端末導入が実現。2020年度からは新学習指導要領も始まり、学校が大きな転換期を迎えています。そんななか、学校という“学びの場”を、民間企業のアプローチでより良くしていこう、という動きも始まっています。
今週は、テクノロジーをはじめ、さまざまな力が集まることで、変わり始めた学校の「いま」とその先の「未来」を考えます。
■「見えにくい」部分が評価される時代へ
今回話を聞いたのは、小中学校、高校などで利用される授業支援クラウド 「スクールタクト」を手がける 、株式会社コードタクトの代表・後藤正樹さん。
後藤さんによると、経済協力開発機構(OECD)のみならず、マイクロソフトなどの企業や団体が「これからの子どもたちに必要なスキル」として挙げているのが、「コミュニケーション」「責任感」「イノベーション」「メタ認知」など、ペーパーテストの結果には表れない「見えにくい評価」なのだとか。
「20世紀は問題解決の時代、21世紀は問題を見つける時代」と話し、「対話などを通してみんなが不安な思いや嫌な思いをしないで、『妥協解』を見つけるのが大切。つまりコミュニケーションや責任感が大きくなる。まさに、いま世の中で起きていることを解決する能力も含まれている」と解説します。
こうした流れの中、日本でも新学習指導要領が段階的にスタート。「主体的・対話的で深い学び」を重視し、その学びを促進するためにデジタル端末を活用する方向へシフトしています。ただ、残念ながら、その内容への理解の低さの原因には、大人たちのデジタル機器への抵抗感や、急なデジタル化に現場が追い付いていないことがあります。
後藤さんは他の理由として「勉強は修行や訓練のように、つらいものではなくてはいけないと考える親が多い。パソコンは作曲や、いろんなことができる便利な道具だが、(デジタルデバイスを使った学びではなく)『紙と鉛筆で書くのが大事』ということに縛られてしまっている」と話しました。
■「スクールタクト」導入後に起きた変化
「スクールタクト」によって、具体的に“学びの場”にどのような変化が生まれているのでしょうか。後藤さんは「スクールタクト」を使うことで、「個人の目標をクラスメイトに共有できる」と話します。
「子どもが朝、自分で自分の目標を決める。『このドリルをやる』『逆上がりをする』と宣言して、お互いが(その目標を)見あって承認して、みんなで振り返るようなサイクルを作っている。これが今までと違う面白い取り組み」と後藤さん。
今までのようにワークシートを使った目標設定は「先生」と「生徒」間だけで完結していましたが、クラスメイトと共有することで「面白そう!」「いいね!」とコメントができると、子ども同士で承認し合って意見交換ができ、学習意欲が生まれるとも話します。
実際に「スクールタクト」を導入している「ヒロック・マイクロスクール」初等部・蓑手章吾(みのて・しょうご)校長は、「スクールタクト1つにしても、一番柔軟に使いこなして、なおかつ新しいもの見つけて来るのは、子どもなんですよね。それを現場で一緒に見ている教師が、子どもたちから教わることが非常に多い」とコメント。新型コロナウイルスによる一斉休校があった時期も、8~9割の生徒が「スクールタクト」に集まって学習を続けていたそうです。
後藤さんは「(文化祭や体育祭など)祭りっぽいことは、みんなで楽しくやる。僕らのサービスを、みんなでワイワイ・ガヤガヤと(にぎやかに使うと)、ある意味、いろんな授業が“祭り化”する感じ」と話し、子どもたちにサービスが受け入れられている理由を分析しました。
■「教室の形」にも変化が?
また、デジタル化だけでなく、「教室の形」も変わり始めていると話す後藤さん。最近では“コの字”型に机・椅子を配置して、黒板と先生の見やすさ、子ども同士の意見交換のしやすさを両立させている学校があると言います。
特に、新設された学校や、建て替えをした学校は建物自体に柔軟なデザインを取り入れていると話し、「廊下と教室がつながっている学校があったり、新設校の場合、図書室を中心にして放射線状に教室がある構造の学校があったり、“学ぶ環境”をデザインすることもおこなわれている」と解説。
さらに後藤さんは、海外の学校についても言及。アメリカのミネルバ大学では、キャンパスがなく、学生は世界中を旅しながら学ぶそうです。「現地の人と交流して、文化なども理解しながら、さまざまなことを学ぶ。授業は当然オンライン。そのときのルールメイキングも面白い。オンラインだからこそやりやすい内容ですが、例えば、90分の授業で“先生は10分以上しゃべってはいけない”などのルールがある」と、“学びのフレームづくり”を称賛しました。
■2030年の教育に期待すること
番組では後藤さんに「スクールタクト」を通じて、どのような未来を目指すのかを質問。後藤さんは、例えば算数の「りんごが5個あります」といった設問を、子どもの好みによって「サッカーボール」に変えるなど、子どもの興味関心が高まる個性に寄せた教材があってもいいとコメント。「その人の個性に最適化したテクノロジーを目指したい」と目標を語ります。
現在の教育現場は、「時間割が決まっている」「学ぶ場所や空間が固定されている」など、画一的になりがち。後藤さんは、「2030年にはそれをなくしたい」という思いを持っていると語ります。「現場に携わる先生たちは、各々のレベルでは、きちんと個性を認めて多様な取り組みをしているが、(教育現場)全体のシステムがまだまだ足りていない。そこを支援すれば、もっと学校の先生は個性化した教育をしやすくなると思う」と、期待を寄せました。
TOKYO FMの音声サービス「AuDee(オーディー)」では、1週間分の特集をまとめて聴くことができます。詳しくは
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<番組概要>
番組名:Sapiens 2030
放送日時:毎週月曜~木曜20:50~21:00
パーソナリティ:手島千尋
番組サイト:
https://www.tfm.co.jp/sapiens/index.php?catid=4320#sapiens2030