作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。2月26日(日)の放送は「村上RADIO~ペット・サウンズ オールカバー~」と題して、ビーチ・ボーイズの伝説的アルバム『ペット・サウンズ』の完全カバーをオンエア。村上さんが愛聴するブライアン・ウィルソンの音楽世界を、さまざまなミュージシャンのカバーで新しい角度から紹介しました。この記事では、前半3曲についてお話された内容をお届けします。
村上RADIO
こんばんは、村上春樹です。村上RADIO、今夜はビーチ・ボーイズのアルバム『ペット・サウンズ』の完全カバーをお送りしたいと思います。しばらく前にビートルズの『ラバー・ソウル』のほぼ全曲カバーをやりましたが、今回は同時代のもう1つの名盤『ペット・サウンズ』を取り上げます。ブライアン・ウィルソンの豊かな才能あふれる、ユニークで、親密で、少しばかり悲しい世界を、さまざまなミュージシャンのカバーで、新しい角度から味わっていただければと思います。がんばって全曲かけたいと思いますが、時間足りないかなぁ……。
◆Wilson Phillips「Wouldn't It Be Nice」
『ペット・サウンズ』がリリースされたのは1966年の夏。僕はそのとき高校3年生、17歳でした。発売と同時に、このアルバムを通して聴きました。それで、どう思ったか? いくつかの曲は素晴らしかったけど、あとの半分くらいは正直言ってあまりピンときませんでした。でも、そう感じたのは僕だけじゃなくて、一般のファンたちも、あるいはビーチ・ボーイズのほかのメンバーたちもだいたい同じだったみたいです。レコードも期待したほどは売れませんでした。要するに、ブライアン・ウィルソンの才能と感覚が、時代よりずっと先のほうに行っていたんですね。でも今聴くと、本当に素晴らしい見事な音楽世界です。僕はもう半世紀以上ずっとこのレコードを聴き続けていますが、聴き飽きしません。
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アルバムの収録順に従っておかけします。まずはLPで言うとA面の1曲目「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」。あまりにも有名な曲ですね。シングルカットされてヒットしました。ブライアンの2人の娘と、ママズ&パパズのジョン・フィリップスの娘が3人で結成した2世バンド、ウィルソン・フィリップスが歌います。
◆Brian Wilson「You Still Believe In Me」
◆Brian Wilson「That's Not Me」
A面2曲目の「You Still Believe In Me」と3曲目の「That's Not Me」は、ブライアン自身のセルフ・カバー。続けて聴いてください。
2002年にブライアン・ウィルソン・バンドが「『ペット・サウンズ』再現ライブ」をやったときのライブ録音です。僕もこのバンドが来日したとき聴きに行きましたが、精緻を凝らしたスタジオ録音で作り上げたあの『ペット・サウンズ』が、ステージでそのまま再現されるなんて、最初はとても信じられませんでした。これはロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでの録音です。
<収録中のつぶやき>
よくここまで回復したなあと思います。もうみんなブライアンはだめだと思っていたからね。声は昔の艶(つや)はなくなっていたから、それは聴いていて悲しいなという気がしたけど、でもやっぱり嬉しかったですね。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ペット・サウンズ オールカバー~
放送日時:2月26日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/