作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。9月24日(日)の放送は「村上RADIO~村上の世間話3~」をオンエア。
村上さんが作家生活で日々感じている話から、旅先でのエピソード、回転寿司にまつわる話から小学生時代の思い出話などを披露。村上DJがセレクトしたお気に入りの音楽も、村上さんの解説とともにお届けしました。
この記事では、「世間話4&5」と5、6曲目、「収録中のつぶやき」を紹介します。
◆Percy Faith Orchestra「青い山脈」
パーシー・フェイス楽団が服部良一の名曲「青い山脈」を演奏します。どうしてそんなものがここでかかるかというと、演奏がかっこいいからです。まずフリューゲル・ホーンがテーマを吹いて、それからサックスがテーマを吹いて、そのあとフリューゲル・ホーンとサックスのフォーバーズ(4小節交換)になります。この辺のジャズっぽさがけっこう様になって、いけます。
<世間話4>
40年くらい前に千駄ヶ谷商店街の理髪店で髪を切っているときに、この演奏をラジオで聴いて「おお、これしっかりジャズじゃん」と感心した記憶があります。
それ以来このレコードを探していたんだけど、なかなか見つからず、この間やっと中古屋さんでCD化されたものを見かけて、350円で買ってきました。
パーシー・フェイス楽団って有名ですけど、そういう固定された楽団が常設されているわけじゃなくて、レコーディングのたびにスタジオ・ミュージシャンを集めて作っている流動ユニットです。だから名のあるウエストコーストのジャズ・ミュージシャンとかけっこう入っていたりします。そういう人たちがきっと遊びみたいにして演奏したんでしょうね。ソロイストの名前はクレジットされていませんけど。
いずれにせよ、40年ぶりの邂逅(かいこう)というか、懐かしかったです。
<収録中のつぶやき>
ここからフォーバーズ(4小節交換)になるんです。この辺が結構ジャズっぽくて、いいんだよね。
◆Gorillaz「Tarantula」
次は雰囲気がからりと変わって、ゴリラズの「タランチュラ」です。ゴリラズ、相変わらずかっこいいですよね。
<世間話5>
千駄ヶ谷っていうと、僕は小説家になるかならないかの頃、しばらく千駄ヶ谷に住んでいたんですけど、千駄ヶ谷商店街の近くに小さな書店がありまして、そこであるときぶらぶら本を見ていたら、小学3年生くらいの男の子が店に入ってきまして、店の人に『鹿の角』っていう本をください」って言いました。でも店の人もそんな題の本は知りません。で、その男の子に「それはどんな本なの?」って尋ねるんだけど、男の子も「お母さんにそれを買ってこいと言われただけだから」みたいな感じで、要領を得ません。でも長い時間をかけて我慢強い話し合いがあり、ようやくそれが灰谷健次郎さんの『兎の眼』であることが判明し、男の子は無事に本を買って帰ることができました。『兎の眼』はその当時とても評判になっていた本だったんです。
僕はとなりでその会話をずっと聞いていたんですが、最後にすべてが無事に解明されて、人ごとながらほっとしました。『鹿の角』から『兎の眼』まで、道のりはけっこう長かったですが。でも、町の小さな本屋さんっていいものですよね。最近はほとんど見かけなくなってしまいましたが。
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番組で他にも、村上さんが作家生活で日々感じている話や小説執筆時のこぼれ話から、最近の旅の話、ひとりでフラッと入る回転寿司にまつわるお話などを披露しました。
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9月24日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年10月2日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO ~村上の世間話3~
放送日時:9月24日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/