モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2月7日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「ネット炎上、2023年は330件。最近の傾向は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
◆2023年の「炎上」件数は? 多いのはSNS上の発信
企業のインターネットでの風評被害や誹謗中傷を解決するサービスを提供する「ネクストリンク」は、2023年下半期の炎上事例データなどをまとめ、1月30日に発表しました。2023年の炎上件数は330件でした。
吉田:塚越さん、この炎上事例データから「ネット炎上」についてどのような傾向が読み取れますか?
塚越:ネクストリンク社は、2015年からネット炎上に関するデータを収集してきました。炎上の定義ですが、この会社では「国内ニュース・SNS・掲示板にてネガティブな発言がされた」としています。
炎上のメカニズムは、これまでと変わらず、問題となる発言や投稿がおこなわれ、それがSNSなどで拡散。拡散された情報に、他者からの賛否を含めたものが追加され、ネットニュースやメディアに取り上げられて、さらに炎上するというものです。
ただし、近年はSNSの拡散から(テレビなどの)メディアに取り上げられることが増えて、炎上までのスピードが早くなってきました。
また、炎上が発生するのは、やはりX(旧:Twitter)が多く、全体の37%がXでの発信です。続いてテレビが19%、YouTubeが18%と、この3つがほとんどで、とりわけXに良くも悪くも注目が集まっていることが分かります。
◆2023年下半期「炎上」の7割が「顧客のクレーム・批判」
吉田:「ネット炎上」の最近の傾向、他にもありますか?
塚越:炎上の内容ですが、まず(2023年下半期)全体のおよそ3割は「不適切発言・行為、失言」です。炎上する理由といえば、分かりやすいですよね。
ただ、もっとも多いのは全体のおよそ7割を占めている「顧客のクレーム・批判」です。例えば、あるスポーツ選手が試合に負けた次の日に夫婦で笑顔の写真をアップして、「空気を読め」とか「浮ついているから試合に負けるんだ」といった批判が出て炎上するケース。
これは明らかな失言などではなく、粗探しをするユーザーからのクレーム批判が炎上原因として目立つ、とネクストリンク社は分析しています。
ユージ:そういうこと、ありますね。
塚越:「不謹慎」という言葉はよく聞きますが、何を「不謹慎」とするか、人によって違うので、よく考えると定義が難しいですよね。だからこそ、1回(炎上の)空気が流れると予想以上に大きな炎上になってしまうということです。
◆有名人、YouTuberの炎上が群を抜いて多い!?
ユージ:いろいろな種類があると思いますが、ネット炎上が起きるのには、どのような業種が多いのでしょうか?
塚越:2023年上半期と同様に、「娯楽業」が「約6割」とダントツに多いです。芸能人やYouTuberといった「有名人」が多いですね。彼らは目立つ存在ということもありますが、「有名人への批判は仕方ない」など、いわゆる「有名税だ!」といった解釈をしてしまうユーザーも多いです。
ユージ:(芸能人もみなさんと)同じ人間ですので、(芸能人だからといって批判・炎上は)「我慢しろ!」っていうのはおかしな話です。
吉田:傷つくときは、傷つきます。
塚越:他にも政治家が関連している炎上も、2023年上半期は10件だったのが、下半期は24件と増加傾向にあります。特に去年の下半期はいろいろありましたが、全体的に政治に対する不信感や(政治家の)不適切な発言からくるものが多かったのかなと思います。
◆誰かを追い詰めるだけの「炎上」ではなく「健全な批判」を
ユージ:ネット炎上の件数と傾向について、塚越さんはどうご覧になりましたか?
塚越:有名人などに比べると多くはありませんが、昨年は企業の炎上も多かったかなと思います。(旧ジャニーズ事務所、ビッグモーター、宝塚歌劇団、吉本興業など)初動の対応がその場しのぎだったり、記者会見でも誠実さに欠けていたりすることが多かったです。企業は問題対応と同時に、人からどう見られるかも考える必要があります。
一方、ユーザーのクレームや批判からくる炎上も、やはり問題かなと思っています。先ほど「不謹慎だ」という言葉を例にあげましたが、明確な基準のない「人の心」からくる炎上はやっかいです。
よく言われることですが、例えば「安全」と「安心」は違います。「安全」は、「安全対策をここまでやりました」「安全度を○%まで高めました」と尺度で測れます。
でも、「安心」は心の問題です。例えば「99%問題はありません」と言われても、「問題が起こる可能性が1%はあるので安心できない」と言われてしまえば、どこまでいっても安心できません。
これと同じで、どこまでも粗を探そうと思えばできてしまいます。1%でも疑問に思ったときに発言してしまうと、そこから炎上になっていくということがあります。
そうしてみると、数値で測れないものなのに、どこまでいっても批判が止まらないケースもあります。「企業も有名人も誠実であれ」という意見は正論ですし、正しいと思いますが、一方でどこまでも粗探しをされて、批判されるのは不健全かなと思います。求められているのは、「健全な批判」ということです。
炎上は、ただ誰かを追い詰めるためにダラダラと炎上してしまい、ネガティブです。批判をするにしても、健全に批判して社会を変えるための良い批判になることが社会に求められていると私は思います。
ユージ:そう思います。僕も車を買っただけで、「どこからそのお金が出てきたんだ」「お前ごときがそんな車に乗って」など、いろいろ言われたことがありますから。「(自分で稼いだお金なのだから)好きなもの買わせてくれ!」って思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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2月7日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年2月15日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世