川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。9月12日(火)と9月19日(火)の放送では、植物育種学研究室の西尾善太(にしお・ぜんた)教授に、「小麦の日本国内での生産や品種改良」について伺いました。
(左から)川瀬良子、西尾善太教授
◆日本の小麦の自給率は「約15%」
西尾教授は、“温暖化に強い小麦”“豊富な栄養成分を含む小麦”など、小麦をはじめとした作物の品種改良について研究しています。
西尾教授によると、日本の小麦の自給率は現在約15% 程度しかないそうで、なぜそれほど作られていないのかを伺うと“雨の多さ”を挙げます。「小麦は元々、イラン、イラク、トルコなどの中近東で生まれた乾燥地帯の作物なので、雨が降ると(小麦に)病気が発症してしまう。また、小麦は梅雨の直前あたりに収穫するのですが、乾燥地帯の作物なので、雨が降るとすぐに発芽しようとする性質があるため、梅雨の時期は発芽しやすいのです」と解説します。
ちなみに、小麦の国内における生産状況については、「主な生産地は、北海道や福岡県や佐賀県などの九州北部、群馬県や栃木県などの北関東です。あと最近では愛知県、三重県、岐阜県といった東海地方でも作られています」と説明。
また、小麦は地域によって田んぼで作られる地域と畑で作られる地域があるそうで、「北海道は、札幌市や旭川市などは稲を作る田んぼが多いですが、小麦は十勝やオホーツク地方の畑で作るのがメインです。一方、北関東、東海、九州は田んぼがメインになっていますので、夏は稲を作り、冬は小麦を作っています。いわゆる二毛作ですね」と言います。
◆おいしいパンが焼ける小麦「ゆめちから」
パン作りに適した新品種として超強力小麦「ゆめちから」の開発に携わった西尾教授。この小麦は“おいしいパンが焼ける”ことが大きな特徴で、「おいしいパンが焼ける小麦には、グルテンというゴムのように弾力のあるたんぱく質がたくさん含まれているんですけど、それが非常に多く含まれている品種として『ゆめちから』ができました」と語ります。
また「ゆめちから」が開発された大きなメリットとして、「『ゆめちから』があると、うどん用の小麦など、他の小麦をブレンドしてもおいしいパンが焼けます。実は、うどん用の小麦よりもパン用の小麦のほうが価格は高いので、お求めになりやすいうどん用の小麦と『ゆめちから』をブレンドすると、付加価値の高いパンが焼けます」と力を込めます。
とはいえ、「(小麦を)実際に使っていただくユーザーの方に評価をお願いすることが多いので、とにかくサンプルをたくさん用意して、実際のお客さまのもとにお届けして、どういった評価が得られるのかが大切」と西尾教授。ここでいうお客さまとは、小麦粉を使うパン屋や製麺所などです。
米の場合は作り手である農家さんが、自分の作った米を実際に食べて味を知ることができるものの、「小麦の場合だと、自分の作った小麦を直接食べる機会があまりない作物なので、(お客さまの)反応がわからないという時代が長く続いていました」と言います。
しかし、最近ではそうした状況にも変化が起きており「例えば、パン屋さんのなかで、“このパンに使っている小麦は○○さんが作ったものです”とか“使っている小麦の品種は○○です”といった具合に、つながりがどんどんできているので、そういった部分は、国産(小麦)の応援にすごくつながっています」と声を大にします。
この話に、川瀬が「どの農家さんにとっても『おいしかった』『こういうものが欲しい』という声ってすごく大事なんですね」と感じ入ると、西尾教授も「(お客さまの)反応を知ることができるのはすごく大事なことですし、大きいことですね」とうなずいていました。
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9月19日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年9月27日(水) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜~木曜 15:50~16:00
パーソナリティ:川瀬良子