モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。5月16日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『情報流通プラットフォーム対処法』成立」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
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◆8年連続で5,000件を超える「誹謗中傷投稿」への相談
インターネット上の中傷投稿への迅速な対応を事業者に求める改正プロバイダー責任制限法が5月10日(金)、参院本会議で可決・成立しました。SNSを運営する大手事業者に対し、投稿の削除を申請する窓口の整備や手続きの公表などを義務付けます。改正を機に、法律の内容に沿って法律名も「情報流通プラットフォーム対処法」に変わります。
ユージ:塚越さん、5月15日(水)にはプロ野球の複数選手にSNSで誹謗中傷があり、日本プロ野球選手会が発信者情報の開示請求をおこなったというニュースがありました。誹謗中傷への対応について現状はどうなっていますか?
塚越:インターネット、とりわけSNSでの誹謗中傷は大きな社会問題です。特に2020年、プロレスラーの木村花さんが、SNSで中傷された後に亡くなった事件を契機に法改正が進み、2022年7月には刑法が改正され、侮辱罪が厳罰化されました。同じく2022年10月には「改正プロバイダー責任制限法」も施行されて、中傷した発信者を特定する手続きが簡単になりました。
一方、総務省が運営を委託する「違法・有害情報相談センター」に寄せられた相談件数は、2022年で5,745件と8年連続で5,000件を超える状況が続いています。2014年までは、3,400件だったものが2015年になって一気に5,000件台になっています。相談件数のおよそ8割は個人からのもので、(私が教えている)大学の学生のなかにもちょっとしたSNSの投稿で誹謗中傷が寄せられたといった経験のある人はそれなりにいます。
◆法改正で何が変わる?
吉田:では、今回成立した情報流通プラットフォーム対処法が施行されると、どうなるのでしょうか?
塚越:今回の法改正では、Meta(旧Facebook)やX(旧Twitter)といったSNSの事業者が対象になる見通しです。一言でいえば「削除に関するルールを強化する」ということです。
不適切な投稿の削除申請があった際、事業者には迅速な対応、削除基準の公表などが義務付けられます。また削除申請の窓口の設置をし、削除申請から原則1週間程度で、削除できるかできないかの結果を依頼者に通知する必要があります。違反した場合、総務省は是正勧告や命令を出すことができて、命令に応じない場合は1億円以下の罰金が科されることになります。総務省は今後、さらなる運用ルールの詳細について検討を進めるということです。
◆誹謗中傷対策は重要 しかし企業や政治家による“言論封殺”の懸念も
ユージ:今回の改正法は、大きな一歩になるでしょうか?
塚越:今回の改正法は、他者の権利を侵害するネット上の情報への対処が目的です。最近この番組でも取り上げた、「有名人になりすましてお金を騙し取るような詐欺広告」も対象になるとのことです。というのも、SNS企業側はこれまで独自の運用ルールを定めて、場合によっては投稿の削除などをしていたのですが、やはり不十分だったと言わざるを得ません。
東京新聞が報じた総務省の担当者によれば、これまでSNS事業者に対する削除に関する法律はなかったということ。ただし今回のような削除の義務付けは、表現の自由の侵害にもなりかねないので、削除と同時に行き過ぎた対応がないように透明化を求めるとしています。法律では、毎年1回削除申請の状況などを公表させるということなので、こうしたところでチェックするということです。
なぜこうしたチェックが重要かといえば、誹謗中傷対策は非常に重要なのですが、一方で企業や政治家に対する、いわゆる「クレーム」や「批評」レベルのものでも削除させるといったことが懸念されるからです。「何が誹謗中傷になるか」が、より問われていくので、法律も大切ですが、社会全体で議論されていく必要があると思います。
◆不特定多数への誹謗中傷“ヘイトスピーチ”への対策は手つかず
ユージ:今後、インターネット上の誹謗中傷への対策として進めていくべきことは何でしょうか?
塚越:先ほど述べたような、特に力を持つ政治や大企業による「削除申請の濫用」がないかのチェックが必要だと思います。その上で、やはり個人ベースの削除申請が多く、今回の改正法で負担を軽くするために機能するということで定期的な運用状況のチェックをおこない、改善していってほしいです。
一方で、LGBTQ、障がい者など、特定の属性に対する不特定多数の誹謗中傷、いわゆるヘイトスピーチはまだ手つかずの状態です。こういったヘイトスピーチへの対応は、EUの(デジタル・サービス法)で厳しく取り締まっています。先ほど言った表現の自由との兼ね合いがあるので、日本は日本としてやり方があると思いますが、諸外国の法律も参考にして進めてほしいです。SNS事業者への規制強化はこれからも重要になるかなと思います。バランスをみつつ我々も考えていく必要があります。
ユージ:特にSNSのプラットフォームを運営している会社が日本の企業ではないと、日本から「困っています」とメッセージを届けても、向こうの解釈と少し違ったりしますよね。日本で起こっている悲しい誹謗中傷などは、日本のルールで対応してほしいなと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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5月16日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年5月24日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世