TOKYO FMグループの「ミュージックバード」が制作し、全国のコミュニティFMで放送中のラジオ番組「デジタル建設ジャーナル」。建設業界のデジタル化・DXを進めるクラフトバンク株式会社が、全国各地で活躍し、地域を支える建設業の方をゲストにお迎えするインタビュー番組です。一般になかなか伝わりにくい建設業界の物語を全国のリスナーに広めます。
3月1日(日)の放送では、株式会社堀口組に注目。代表取締役社長の堀口哲志(ほりぐち・てつじ)さんをゲストに招き、企業の成り立ちや、2020年に発足したDX推進室の取り組みについて話を伺いました。
(左から)株式会社堀口組 代表取締役社長 堀口哲志さん、クラフトバンク株式会社 金村剛史
◆豪雪地の交通インフラを維持する堀口組
株式会社堀口組は、北海道・留萌市を拠点に地域のインフラを支えている企業です。創業は1950年で、現在の従業員118人。受注高はおよそ60億円にのぼり、国土交通省・留萌開発建設部や留萌市を中心とした公共事業を担う企業として地域に根差した活動を続けています。
会社の始まりは、創業者である堀口さんの祖父の代にさかのぼります。当時は隣町の小平町で、トラック1台から事業がスタートしました。海岸で砂利を採取して運ぶ運送業が原点で、堀口さんは当時を「スタートは運送業だったのではないか」と振り返ります。仕事を通して信頼を積み重ね、得た利益で少しずつトラックを増やしながら事業を拡大。1963年には現在の留萌市へ本社を移転し、地域の土木工事へと業務の幅を広げていきました。
現在の主な業務は土木工事で、道路や河川工事のほか、国道や高規格道路の維持管理を担っています。なかでも重要な役割を果たしているのが、北海道の冬に欠かせない除雪業務です。自社でダンプカーや除雪機を保有し、グループと連携しながら排雪作業もおこなっています。「緊急車両や物流の関係で、どうしても道路を止めるわけにはいかないんです。維持業務の仕事自体は厳しいですが、責任をしっかり感じながら取り組んでいます」と、堀口さんは力を込めました。
留萌では、冬になると1メートル以上の積雪になることも珍しくありません。雪が降り続く年には、何週間も除雪作業が続くこともあるといいます。途中で運転手を交代できない状況もあり、現場の負担は決して小さくありません。それでも、地域の交通を守るために日夜作業が続けられています。
さらに堀口組の特徴の一つが、重機の修理や部品製作まで社内でおこなえる体制です。もともと自社の修理工場を持っていましたが、2016年には後継者不足で廃業予定だった地元の鉄工所の技術者を受け入れ、「鉄工部」として社内に組織化しました。これにより、重機の修繕や改良、部品製作まで一貫して対応できるようになりました。
堀口さんはその強みを、「壊れたら直す、必要なら自分たちで作る体制が地域インフラを守る力になっている」と語ります。あらかじめ交換部品を準備し、トラブルが起きればすぐ現場へ向かう体制も整えています。
◆VRによる除雪作業の疑似体験を実現
堀口組では、デジタル技術を活用した業務改革にも積極的に取り組んでいます。その中心となっているのが、2020年に立ち上げた「DX推進室」です。現在は日本人4人、ベトナム人エンジニア3人の計7人が所属し、社内のデジタル化を推進しています。
取り組みの第一歩となったのは、レーザースキャナーやドローンを使った3次元データの活用でした。これにより、土木工事の出来形管理をより正確におこなえるようになったほか、現場で作成される書類のバックアップ体制の整備も進められました。堀口さんは「まだ改善の余地はあるものの、現場の理解も深まり、デジタル化の効果が徐々に浸透してきている」と手応えを語ります。
DX推進室のメンバーは、システムの導入だけでなく、現場の測量などにも関わっています。留萌地域は工事現場の距離が離れていることも多く、データ取得のために各地へ出向くことも少なくありません。そうしたなかで、「測量を手伝ってほしい」といった依頼が自然とおこなわれるなど、デジタル技術を現場と結びつける存在としての役割が広がりつつあります。
こうした取り組みは外部からも高く評価されています。堀口組は、2026年1月に開催された「第9回インフラメンテナンス大賞」で、最高賞となる内閣総理大臣賞を受賞しました。これは、北海道大学や他企業と連携して進めてきた研究開発の成果が認められたものです。近年は特に、北海道ならではの課題である除雪作業に関する研究に力を入れています。
その一つが、AIを活用した除雪出動を判断するシステムです。天候データをもとに、翌日の除雪出動の必要性を前日の16時までに予測する仕組みで、人の判断では70パーセント台だった予測精度が、AIでは80パーセント台まで向上したといいます。堀口さんは「オペレーターが前日までに出動の有無を知ることで、心構えや休息の取り方が変わり、ストレス軽減にもつながる」と話します。
さらに、点群データやVRを活用した取り組みも進められています。現場を3Dデータとして取り込み、VR空間で再現することで、除雪作業のシミュレーションや訓練に活用。初めて担当する場所でも、あらかじめ仮想空間で走行体験ができるため、安全な作業につながると期待されています。また、重機操作時のストレスや疲労度をセンサーで計測し、熟練者と初心者の違いを分析する研究もおこなわれています。どの場面で初心者が強い負荷を感じるのかを可視化することで、事故防止や教育方法の改善に役立てようという試みです。
堀口さんは、「将来的には新しい管理基準の基礎になるような研究につなげていきたい」と展望を語りました。堀口組は、最前線の課題をデジタル技術で解決できるよう、挑戦を重ねています。
<番組概要>
番組名:デジタル建設ジャーナル
放送日時:毎週日曜日 15:00-15:55
パーソナリティ:中辻景子・田久保彰太・金村剛史・津吉沙緒里