みたらし加奈さん
住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生ワイド番組「Blue Ocean」。“頑張るプロフェッショナルの女性の素顔に迫る”をテーマに、各界で活躍されている素敵な女性をゲストに迎えて話を伺うコーナー「Blue Ocean Professional supported by あきゅらいず」。
2月28日(月)のゲストは、臨床心理士・みたらし加奈さん。今回の放送では、臨床心理士を志すきっかけを振り返り、NPO法人「mimosas(ミモザ)」の活動内容について語ってくれました。
住吉美紀、みたらし加奈さん
SNSを通して、メンタルヘルスやLGBTQについてのメッセージを発信している、みたらしさん。大学院で臨床心理学の修士課程修了。総合病院の精神科に勤務したのち、ハワイへ留学。帰国後は、フリーランスとしての活動をメインにおこないつつ、SNSを通してメンタルヘルスの情報を発信。現在は一般社団法人国際心理支援協会に所属し、カウンセリングをおこないながらメディアにも出演しています。
みたらしさんは、性被害や性的同意についての情報やメッセージを伝えるためのメディアを運営するNPO法人「mimosas(ミモザ)」の副理事もつとめ、同性パートナーとの暮らしを発信するYouTubeチャンネル「わがしChannel」を運営しています。作家としても活動しており、2021年12月には「テイラー 声をさがす物語」(ハガツサブックス)を出版しました。
臨床心理士のほかに、NPO法人「mimosas」の副理事や作家、コメンテーターとしてもご活躍のみたらしさん
◆心の悩みを抱えた人々の気持ちに寄り添う場所を…
住吉:臨床心理士は、臨床心理学の知識や技術を用いて人間の心の問題にアプローチする「心の専門家」です。みたらしさんは大学生時代、臨床心理士を目指す予定ではなかったそうですね?
みたらし:そうですね。テレビ業界を目指していました。
住吉:それがどうして臨床心理士の道に?
みたらし:自分のなかでやりたいことが見つからない時期ではあったのですが、同級生から相談を受けることが多かったんです。「相談が仕事につながればいいな」と思いつつ、「報道関係の仕事に就きたい」とも思っていました。
そんななか、大学3年生ぐらいのときに、自分の親しい知人が統合失調症という病気になったんです。知人からは、それまでにもメッセージをもらっていたのですが、自分のなかで精神疾患に対して偏見のようなものがあって、なかなかメッセージに応えることができなかったんです。
「刺激してしまって状態が悪化したら困るな……」と思ったら、友人に対して何もできなくて。それがすごく悔しくて大学院に進もうかなと思っていたところ、バイト先の上司から「大学院はいいところだよ。何歳になっても学べるし、興味があるなら行ってみたら?」とアドバイスをいただいたんです。それがきっかけとなって、臨床心理士の指定大学院に通うことになりました。
住吉:そこに“追求したかった世界”があったということですね?
みたらし:はい。
住吉:大学院卒業後は総合病院の精神科に勤務し、その後、ハワイへ留学したのちに(悩みを抱える人のための)オンラインサロン「こころの待合室」を開設されました。
みたらし:オンラインサロンは、会員のみなさまと交流をしたり、自身の病気であったり、バックグラウンドを話せる“安全な場所”を作りたくて開設しました。
住吉:開設に至った経緯は?
みたらし:私は当時、フリーランスだったんですけども、臨床心理士、いわゆるカウンセラーは、どこかに勤めないとカウンセリングをおこなえないんです。私はSNSをやっていたので、そこでカウンセリングの募集はできたのですが、「1人では抱えきれない数の申し込みが来るかもしれない……」と思ったんです。会員様同士で交流を深めていただいたあと、私のカウンセリングを安価で受けられるシステムが作りたくて、オンラインサロンを開設しました。
住吉:なるほど。フリーランスでカウンセリングをするための方法として生み出された場所だったんですね。新しい時代のカウンセリング方法だと感じました。
◆精神疾患への偏見をなくすために
みたらし:開かれた場所でのメンタルヘルスの発信は、日本ではまだまだ必要なことだと思っています。SNSでの発信や、「オンラインサロンを開設したい」と思ったのも、総合病院で働いたときの経験からでした。重症化してからいらっしゃる患者さんが本当に多かったんです。
精神疾患も体の病気と同じで、医療に早くつながるほど予後がよくなると言われています。ただ、精神疾患への偏見であったり、周りの理解を得られないと、なかなか病院に連れて行ってもらえなかったり、自分で病院に行く気持ちを持てずに、ずっと家にいてしまうことがあるんです。
あと、本当に心がつらいときって、病院に行くよりもベッドのなかでスマホをいじったりして、自分の世界に閉じこもってしまうんですよ。家から一歩出て、電車に乗って、病院の待合室で待って、処方箋をもらう……これって、けっこうハードルが高いことなんです。
住吉:うんうん。
みたらし:そういったことへの橋渡しになれたらいいなとの思いがあり、SNSの発信を始めました。精神疾患への偏見をなくしていきたいという思いと、1人でも多くの方が専門機関につながってほしいという思いのなかで発信を続けています。
◆「性被害」についての「必要な正しい情報」を…
住吉:NPO法人「mimosas」の副理事をつとめ、現在その活動に尽力されていると伺いました。
みたらし:「mimosas」は、性被害や性的同意に関する知識を臨床心理士、公認心理士、弁護士などの専門家を交えてわかりやすく情報発信をしているメディアです。たとえば「痴漢を目撃したら」「痴漢被害にあったときに証拠を集める方法」のようなことを、視覚的にわかりやすくお伝えしています。
住吉:サイトに行くと情報が得られる形になっているんですね。
みたらし:はい。Instagramでも発信しています。
住吉:こうした活動をしようと思ったきっかけは?
みたらし:「mimosas」は、私と代表理事・疋田シェン万理(ひきた・シェン・まり)で立ち上げました。きっかけは、疋田に「性暴力の被害に遭ったときにどこへ相談すればいいのか。情報があふれていて、どこを信用すればいいのかわからない」という相談が届いたことでした。
相談窓口は厚生労働省が出しているのですが、「わかりやすい知識や、証拠の集め方がわからないので、そういう情報をまとめたサイトがほしい」という要望を疋田が受けたんです。そのあとに疋田から「加奈、必要だと思う? もし必要だったら私はやっていきたいと思っている」という電話をもらいました。
私は、性暴力サバイバーだと公表しているのですが、私自身が性被害を、性被害だと自覚できたのは、大学院に入って臨床心理学を勉強してからでした。私の周りでも、中学や高校のときのクラスに1人は、『朝、痴漢に遭った』『露出狂に遭遇した』という話を、誰かがしていたなと。
そのように性被害のことを笑って話したり、話のネタにしたりすることは、由々しき事態だと思うんですよ。そういったときに、「被害をきちんと被害だと認識した上でセルフケアにつながるサイトは絶対に必要だよね」という話になり、「mimosas」を立ち上げました。
住吉:なるほど。「mimosas」をスタートさせてからの反響はいかがですか?
みたらし:「自分が受けていたのは性暴力被害だったんだ……」というメッセージをいただきます。あと、合意のない性行為というのは、パートナー間でもあるんですよ。「自分はしたくないなと思っているのに性行為をする。それが“ケアされるべきこと”だとわかった」というお声もいただきます。
住吉:語り合える場があるだけで、つらい思いを抱えている人たちの気持ちというのは違ってきますよね。
みたらし:本当にそう思います。
みたらし加奈さん
▶ NPO法人「mimosas」公式サイト:
https://mimosas.jp/
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聴取期限 2022年3月8日(火)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時:毎週月~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/bo/
特設サイト:
https://www.tfm.co.jp/bo/aky/