放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。1月11日(日)の放送は、仏師の加藤巍山(かとう・ぎざん)さんをゲストに迎えて、お届けしました。
(左から)パーソナリティの小山薫堂、加藤巍山さん、宇賀なつみ
◆仏像制作と現代彫刻の違いは?
今回は、仏師・加藤巍山さんをスタジオに迎え、その歩みと創作の根底にある思いに迫りました。加藤さんは1968年、東京都生まれ。仏師として伝統技法を学び、仏像制作に長年携わる一方で、現代彫刻家としても活動しています。自身の内面や人の感情をテーマに、「祈り」と「存在」に向き合いながら木と対話するように彫り続け、その作品は国内外で高い評価を受けてきました。2020年には、ニューヨークのクリスティーズ(オークションハウス)で作品が約3,285万円で落札され、世界的にも注目を集めました。
加藤さんの原点は仏師の修業にあります。意外にも、もともとは音楽の道を志し、音楽学校で学び、スタジオで仕事をしていた時期がありました。しかし、そこで挫折を経験します。人生の転機となったのが、一人で通うようになった鎌倉でした。「鎌倉に通っているうちに日本の文化や美しさに気づきました。“救われたい”と思いながら通っていたので、その思いと、ものを作りたい思いが湧き上がってきたんだと思います」と話します。
弟子入りして始まった仏師の修業は、想像以上に厳しいものでした。最初は意味もわからないまま、同じところをひたすら彫り続ける単純作業の繰り返し。加藤さんは13年間、この修業に身を置きました。加藤さんいわく、仏師として仏像を彫ることは「自分を消していく作業」だと語ります。仏像は儀軌(ぎき)と呼ばれる様式や法則に基づいて彫られ、自我を極限まで研ぎ澄まし、「透明になっていくような感覚」だといいます。
一方で、現代彫刻としての作品制作は真逆のベクトルを持っています。そこでは、自身の感情や時代への問いかけと向き合い、「自分の熱い思い」や「この時代に何を作るべきか」を投影していきます。加藤さんのなかでは、仏像と彫刻作品は対立するものではなく、「光と影のように表裏一体の存在」だと表現します。
加藤さんの制作のプロセスでは、まず粘土で原型を作り、それをもとに木彫へと落とし込んでいきます。作業段階では無心で手を動かし、ある段階から一気に仏像、あるいは作品としての集中に入っていくと説明しました。
◆現代・過去・未来に思いを馳せて仏を彫る
仏像制作において、加藤さんが特に重視しているのが「光」の存在です。彫刻は光の当たり方ひとつで表情が大きく変わるため、彫る段階から綿密に計算を重ねていくといいます。
仏像は大きさも姿も一体一体まったく異なるように見えます。「立像や坐像といった体勢の違いはどのように決まっていくのか」という問いに対し、加藤さんは「ポーズみたいなものは一応決まっていて、それに従って彫ります」と答えます。さらに、仏には階層があり、如来、菩薩、明王など、それぞれの基本の型に従いながら制作を進めるとのこと。仏像一体を彫り上げるのに約1年を要しますが、加藤さんは完成した作品に強い執着を抱くことはないと明かします。納品の瞬間を「歴史に句読点を置いていく感覚」と表現しました。
加藤さんが語る時間の捉え方も印象的です。制作に向かうとき、意識は「千年前、さらに人類が祈りを捧げてきた太古の昔」から、「千年後の未来」へと広がっていきます。長大なスパンのなかで、「命という時間をどう使い切るか」を考えながら彫っていると話します。また、小山から「祈りは何ですか?」と問われると、「人間の尊厳。人間が人間たることの行為」と、静かに言葉を選びました。
番組のテーマである「手紙」についても話題は及びました。出張先の地方で、お気に入りのペンを使い、「この人に手紙を書こうかな」と思い立って書くことがあるそうです。さらに、仏様を彫る行為もまた、未来へ向けたメッセージ、いわば「未来の人たちへの手紙」のようなものだと語りました。
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<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY'S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/post/
番組公式X:@sundayspost1