作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
6月28日(日)の放送は「村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを… vol.2~」をオンエア。今回の放送は「ジャズのちょっとこのあたりを…」の第2弾です。村上さんが長年愛好してきた知られざる実力派のジャズ・ピアニストの演奏をオリジナルの原盤でお届けしました。
その独特の演奏スタイルでハービー・ハンコックに多大なる影響を与えた全盲のピアニスト、クリス・アンダーソン。また、本職が精神科医という異色の経歴を持つデニー・ザイトリンなど、個性的な実力派ピアニストたちを紹介しました。
この記事では、中盤2曲について語ったパートを紹介します。
「村上RADIO」
◆Jan Johansson「De Sålde Sina Hemman」
次はスウェーデンのジャズ・ピアニスト、ヤン・ヨハンソンです。1931年に生まれ、1968年に37歳の若さで亡くなっています。彼の演奏するスウェーデンの古い民謡「De sålde sina hämman」を聴いてください。このレコードのライナーノート、全部スウェーデン語なんで、何が書いてあるか読めないんです。曲名の発音も確かではないので、スウェーデン人の知り合いに問い合わせてみました。これはスウェーデンでは「アメリカン・ソング」としてよく知られている歌で、19世紀末にアメリカに移民として渡っていった、貧しい農民たちの哀しみを歌ったものなのだそうです。
僕はこのLPはストックホルムの中古レコード屋さんで見つけて買ったんですが、なかなか内容がいいんです、これが。ストックホルムには素敵な中古レコード屋がたくさんありますが、その話を始めると長くなっちゃうので、またいつか話しますね。
聴いてください。ヤン・ヨハンソンの演奏する「De sålde sina hämman」。
◆Don Friedman Trio「Wait 'Til You See Her」
ドン・フリードマンは1960年代には、ビル・エヴァンズと並び称された白人ピアニストのトップ・ランナーでしたが、エヴァンズのように幅広い人気を獲得することはできませんでした。彼のとくに初期の演奏にはぴりっと硬質な、いくぶん冷ややかなリリシズムが鮮やかに漂っていて、日本のジャズ喫茶なんかでも評価が高かったんですけど、そのあとはなぜか今ひとつ盛り上がりませんでした。自分のスタイルが定まりすぎていて、1960年代後半から始まった新しいジャズの流れにうまくシフトできなかったんでしょうね。
1980年代に、彼が歌手のナンシー・ハーロウの伴奏ピアニストとして来日したとき、僕は横浜の小さなジャズ・クラブに聴きに行ったのですが、「なんかずいぶん穏やかなピアノになったなあ」という印象を受けました。かつての先鋭性みたいのは感じられなかった。まあ、伴奏ピアニストという立場もあって、おとなしくやっていたのかもしれませんけどね。僕はそのときハーロウさんと話をして仲良くなり、そのあとメールのやり取りなんかもしていました。ハーロウさん、味のある素敵なジャズ歌手です。
ドン・フリードマンの初期のアルバム『Flashback』から「Wait 'Til You See Her」を聴いてください。「まあ、彼女に会ってみてよ」。さっきかけた「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」と同じく、ロジャーズ&ハートの名曲です。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを… vol.2~
放送日時:6月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/