笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。6月7日(土)の放送は、VALT JAPAN 代表取締役CEOの小野貴也(おの・たかなり)さんがゲストに登場。デジタル業務に特化した就労継続支援事業所のさまざまな施策や、企業のこれからの展望について語りました。
(左から)小野貴也さん、笹川友里
小野貴也さんは、1988年生まれ、大分県出身。大学卒業後、シオノギ製薬株式会社に入社。障がいや難病のある人の活躍機会と低賃金の現状に衝撃を受け、2014年にVALT JAPANを起業。就業困難者に絞った仕事の受発注プラットフォーム「NEXT HERO」を運営し、ビジネス市場で活躍できる仕組みづくりに取り組んでいます。
2023年には書籍「社会を変えるスタートアップ~『就労困難者ゼロ社会』の実現」(光文社)を発売。2024年には日本最大級のスタートアップ専門展示会「Startup JAPAN EXPO 2024 -秋- Dream Pitch グランプリ」で優勝。さらに、「東京金融賞2024」においてサステナビリティ部門を受賞しました。
◆「NEXT HERO」に込められた思い
前回の放送では、小野さんがVALT JAPANを起業した経緯や就労困難者特化型DXプラットフォーム「NEXT HERO」についてお話しいただきました。「NEXT HERO」では、利用者の能力や特性を「ケイパビリティデータ」として蓄積。そのデータを活用し、企業から受注したデジタル業務(データ入力やAI開発)などを全国の就労困難者に再委託しています。
笹川が「NEXT HERO」の由来について伺うと、小野さんは“仕事の意義”について語り始めます。この事業を進めていくなかで“自分なんていなくてもいい”と感じながら働いてきた人たちの声を多く聞いてきたと言い、「“仕事”って人がいるからこそ成り立つわけじゃないですか。でも当事者は、そういう疎外感を感じてしまっている。でもそうじゃなくて、そもそも“仕事”は社会に出たときに、自分の存在価値を強く実感できるための最適な手段だと思っているので、“次の主役は君たちです”という思いを込めて『NEXT HERO』とつけました」を話します。
障がい者などの就労困難者と企業の課題をつなぐことで、社会課題の解決を目指すVALT JAPANは、その成長性と意義が高く評価され、現在の累積資金調達額は約15億円に到達。しかし、資金調達の道のりは決して平坦ではなく「苦労の連続でした」苦笑いを浮かべます。
当初は右も左もわからないまま、130人以上の投資家に会ってフィードバックをもらう日々が続いていたそうで、「(投資家は)とにかく“社会問題を解決する”という思いだけで、出資してくださる方たちではないんですよね。きちんと実績を持って帰らないとお金はついてこない。本当に何もないところから始めていったので、ひたすら勉強、勉強でした」と振り返ります。
◆日本全国のデジタル人材育成を強化
VALT JAPANは2025年2月、三菱地所株式会社とともに「デジタルイノベーションセンター丸の内 supported by三菱地所(DIC丸の内)」を開設。デジタル業務に特化した就労継続支援A型事業所としては23区初の取り組みとなります。さらに、3月には宮崎県延岡市に「NEXT HERO DIC延岡」を開設するなど、今後はDIC事業を全国47都道府県に展開していくことを目指し、設備投資フェーズに移行していくと力を込めます。
また、小野さんによると、VALT JAPANの活動に共感して「社会課題を解決したい」という志をもつ学生が集まっているとのこと。現在、法人向けの業務経験をもつ人材に加え、福祉分野での経験や資格をもつ人材も在籍しており、「いわゆるマーケットでいえば、対極にいるような人たちが同じ会社のなかにいるわけですよ。これはもうとんでもない化学反応しか起きないわけなんですよね」と期待を込めます。
最後に、デジタルとテクノロジーが変えていく近未来の風景を伺うと、「就労困難者が“テクノロジーを生み出す側”として、どんどん活躍できる可能性がある。つまり、デジタル人材になる人がどんどん増えていくと、就労困難性を極端に下げていくことができると思っています」と声を大にします。
その理由に、ケイパビリティデータを可視化(スコア化)され、それをベースにしたコミュニケーションベースが生まれる未来を想定し、「障がい者であるとか、就職しているかどうかに関わらず、特性同士でマッチングされていくことで“1人にならない社会”になっていってほしい」と願いを込めます。この思いに笹川も「みんなにその仕組みが実装されたら、新たな発見があったり、自分にもっと合っている仕事に出会えるかもしれませんね」と共感していました。
番組では他にも、小野さんが起業家として強く共感した「イーロン・マスクの言葉」について語る場面もありました。
次回6月14日(土)の放送は、株式会社日立製作所 執行役常務CIO兼ITデジタル統括本部長 貫井清一郎さんをゲストに迎えてお届けします。グループ全体で28万人の社員を抱える日立のIT戦略を実行、推進してきた貫井さん。その取り組みについて伺います。
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里