本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
2月8日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「賃上げに動く“春闘の本格化”と貯蓄から投資を促す“新NISA”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆春闘で私たちの給与はどれくらい上がる?
浜崎:宗さま、今回は「賃上げに動く“春闘の本格化”と貯蓄から投資を促す“新NISA”」について、お話しいただけるということですが。
やしろ:毎年この時期になると、春闘の動きを見たり聞いたりすることが増えてきますね。
宗正:春闘というのは、働く側の労働組合が企業の経営サイドと賃金の引き上げなどを交渉することです。毎年、ちょうど今頃の時期の2月から3月にかけて、本格的な交渉がおこなわれるので、「春に闘う」と書いて「春闘」です。
(春闘が)始まったのは今からおよそ70年くらい前です。石炭を採掘する炭鉱など、産業別の労働組合が給与の引き上げを企業に対して一斉に要求しました。この「一斉に」というのが重要なんです。団結したほうが要求も通りやすいですからね。
要求が通らずに交渉が決裂したときは、一定期間働くことを止める「ストライキ」なんていうことも、ちょっと前までは結構ありましたよね。
やしろ:春闘の動きのなかで、われわれが最も注目すべき点は何でしょうか。
宗正:春闘の動きを語るときに欠かせないのが「ベア」です。「ベースアップ」のベとアをくっつけて「ベア」。給料のベース、つまり基本給を引き上げることで給与全体の水準を引き上げること。これがベースアップの意味するところです。
年齢や勤続年数に応じて上がる「定期昇給」もありますが、ベアはこれとは異なるもので、基本給の引き上げです。最近では仕事の成果やスキルの違いに応じて差をつける企業も増えていますね。
基本給をもとに、多くの企業はボーナスや時間外手当(残業代)を決めています。ここが決まれば、将来受け取る年金の支給額も変わってきます。なので、ベアは生涯収入全体に大きく影響してきます。
やしろ:それは、大きいですね。この数ヵ月間は、いろいろなところから「賃金を上げなきゃ」みたいな話が出てきています。例えば新入社員の給与を10パーセント引き上げた企業があるなど、いろいろな動きがある反面、賃上げに耐えられずに倒産する企業の数もこれからどんどん可視化されるんじゃないか、みたいな話も聞こえてきます。春闘の動きは、この辺りとも大きく絡んでくる話ですか?
宗正:そうですね。来年度の給与水準を決めるのが春闘の主な動きですから、大いに関係があります。ただ春闘以外にも、今だからこそといった要素に引っ張られるケースもあります。
最近の顕著な例では、海外のほうが日本よりも物価高が進んでいますから、グローバル展開する企業の中には、給与を上げなきゃいけない国が日本以外にたくさんあって、そっちを上げると、自ずと日本の給与も上げなきゃいけない。「給与水準を従来の4割引き上げます」なんて企業も出てきていますが、だいたいグローバル展開している企業なんです。
やしろ:あれには、そういう背景があったんですね。我々からしたら、景気が良くなって、賃金がどんどん上がっていくのが一番うれしいことですよね。でも、そういうこともあるんですね。そして、春闘の結果が出るのはもう少し先になると思いますが、現時点ではどのような見通しなんでしょうか。
宗正:春闘は春闘でも、政府が主導する「官製春闘」の動きが、今年は目立っていますね。(民間企業の)給与が上がれば個人消費が増えて、企業業績も良くなることで景気も上向きます。景気を上向かせるために、政府が賃上げの旗振り役になる訳です。まさに、今の岸田政権も経済界に賃上げの要求を強めているところです。
現時点では、ベースアップで3パーセント程度、これに定期昇給分を合わせて5パーセント程度の賃上げというのが、交渉の水準になりつつあります。
やしろ:5パーセントって、けっこうな数字ですね。
宗正:ちょうど今の物価高の水準が、前年比5パーセントくらいです。最低でもこれと並ぶ賃金水準を企業に出してほしい、実質賃金でプラスにしたいという政府の思惑があると思いますね。
このベア3パーセントが実現すれば、1990年代の後半以来の高い水準になります。具体的には3月の中旬くらいから、自動車や電機など大手企業からの回答が出始めます。
◆新NISAがスタート! 従来の制度と何が変わった?
やしろ:そして、来年度の賃金アップも気になるところですが、岸田政権が掲げる「貯蓄から投資へ」の具体的な動きとして挙げられるのが「新NISA」です。概要も見えてきたようですが、いかがでしょうか。
宗正:「新NISA」は来年、2024年からのスタートです。その概要が今の時点から具体的に見えてきました。「NISA」は造語です。参考にしたイギリスのISA制度(Individual Savings Account/個人貯蓄口座)がもともとあって、それに日本(Nippon)のNをくっつけてNISAになりました。
NISAが始まる前には、我々のような資産運用業界で働く人たちにも、新たな制度の名称について「何か良いものはないか?」と聞かれました。いろいろと考えて出しましたが、「NISA」と決まった時点で「それでいいのか?」って正直思いましたけどね(笑)。
やしろ:果たして「(ISAの)日本版です」みたいな言い方でいいのかと(笑)?
宗正:今では当たり前のように使われていますけど、当時はそんな感じでした。
やしろ:言いやすいというか、覚えやすいですよね。NISAって。
宗正: NISAは毎年、一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる運用益が非課税になるという制度です。株や投資信託は、運用益にかかる税金が約20パーセントですから、運用益の5分の1が非課税になるっていう制度ですね。
例えば10万円の運用益が生じた場合には、税金を引かれると手取りは約8万円ですが、NISA口座で投資すれば丸々10万円が手元に残ります。これって、けっこう大きいですよね。
やしろ:「新NISA」は従来のNISAと比べて、何がどう変わったのでしょうか?
宗正:従来のNISAには、大きく「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つがあります。正確にはもう1つ「ジュニアNISA」というのもありますが、「ジュニアNISA」は制度自体が2023年、今年で終わりなんです。
「一般NISA」は、これまでは非課税となる投資枠の上限が年間120万円と決められていました。(新NISAでは)名前が「成長投資枠」に変わり、上限額も今までの2倍の年間240万円になります。一方の「つみたてNISA」の非課税の上限は年間40万円ですが、これが「つみたて投資枠」に名前が変わって、非課税上限額が今の3倍の年間120万円になります。
そして今は、「一般NISA」と「つみたてNISA」の両方を同時に使うことはできません。どちらか一方を選ぶ決まりですが、「新NISA」では両方同時に使えるようになります。
やしろ:(合わせて)360万円?
宗正:そうです、合わせて360万円。それからもう1つの大きな変更点が、投資期間の延長です。これまで「一般NISA」は投資した年から最長で5年間、「つみたてNISA」は最長で20年間でしたが、これが何と! 無期限になります。投資可能期間が恒久化される、だからずっと使えるんです。
やしろ:ここまでの話を聞く限り、「新NISA」は良い点ばかりに聞こえて、お得感満載に聞こえますが、やらなきゃ損という認識でよろしいですか?
宗正:資産形成を目指す個人投資家にとっては、心強い味方になることは間違いないです。ただ忘れてはいけないのは、あくまでも「新NISA」は投資で利用する制度ですからね。投資というのは、損失が出る可能性があることも忘れてはいけません。
やしろ:損失なんかないと思って、ずっと聞いていました。
宗正:だいたいこういう話をすると、みなさん増えることを前提にイメージされるんですね。これから始める投資で、損することを前提にする人はいないですからね、普通は。
それから投資信託や株の取引では、売買手数料や運用管理費用など諸々の手数料コストもかかります。あくまでも投資は余裕資金を使って、「新NISA」を上手く活用しましょう、ということなんですよね。
やしろ:そうか。「投資をしたら100パーセント絶対に儲かりますよ」って話じゃなくて、従来のNISAと比べて「新NISA」の方が個人投資家にとってより良い制度というお話ですね?
宗正:そうですね。税金で取られる部分の額が減って、(投資に)使える金額はこれまでよりも多くなって、期間も無期限になるという。そういうことなんですよ。
やしろ:上手くやれば、儲かる確率も高いですよっていうことですか?
宗正:新たな制度と儲かることっていうのはまた別の話なんです。ただ投資は、短期でやるよりも中長期でやったほうがプラスになる可能性が高まります。そういう意味では、プラスになる可能性も高まると(いうことです)。
やしろ:可能性がより高まるという話ですね。
宗正:しかも、成人年齢が去年から引き下げられたので、今年の1月からは18歳からNISAの口座を作ることができます。
やしろ:それは素晴らしい!若い人とお話しをすると、けっこうな確率でみなさんやっていますよね。
宗正:若ければ若いほど、早ければ早いほど、投資リスクも大きく取ることが可能なので、その分だけ大きなリターンを見込むことができます。ちょうど良いタイミングですし、先ずは一歩踏み出してみることをお勧めしたいですね。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/