青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。10月15日(日)の放送では、一般社団法人 日本救急医学会 評議員 脳死・臓器組織移植に関する委員会委員の林宗博(はやし・むねひろ)さんと、厚生労働省 健康・生活衛生局 難病対策課 移植医療対策推進室 室長補佐の吉川美喜子(よしかわ・みきこ)さんを迎えて、「いのちをつなぐ 臓器移植」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、吉川美喜子さん、林宗博さん、足立梨花
◆10月16日は「グリーンリボンデー」
10月16日(月)は「グリーンリボンデー」です。グリーンリボンデーとは、家族や大切な人と“移植”“いのち”について話し合い、お互いの臓器提供に関する意思を確認する記念日で、26年前の1997年10月16日、臓器移植法が施行されたことを契機に設けられました。
臓器移植は提供する側、される側、そして、その家族、さまざまな方の思いが尊重されるものです。家族で話し合うにも、まず基本的なことを知ることが大切です。
日本赤十字社医療センター・救急科部長でもある林さんは、臓器提供の現場に立ち会うことも少なくないそうで、「実際に臓器を提供していただくご家族と接して、その思いを伺うことも多いですし、さまざまなケースに立ち会っています。亡くなる方からの臓器提供は『死』が前提となるため、多くの方に配慮が必要な医療です。そして、今は元気であっても、突然の病や事故によって誰もが臓器を提供する側になったり、臓器移植を受ける立場になる可能性があります。ですので、ぜひこの機会に考えていただきたいと思います」と訴えます。
◆「臓器移植」日本は遅れている?
日本で臓器移植を希望して登録している人は、今年の3月末時点で約1万8,000人おり、そのうち、1年間にいずれかの臓器の提供を受けられる人は、わずか990人程度(約5.5%)です。
医師として臓器移植を担当したこともある吉川さんによると、「日本の臓器提供の件数は、実は欧米などと比べて非常に少ないんです。亡くなられた方からの臓器提供が多いアメリカやスペインが、人口100万人あたり40~50人のドナーがいるのに対して、日本では多いときでも0.99人です」と解説します。
また、その大きな要因は2つあると言い、1つは国民に対する臓器移植への啓発が十分でないこと。例えば、2019年度から中学教育の一環として移植医療が取り上げられる機会が増加しましたが、それまでは、義務教育で移植医療について教えられることは多くありませんでした。
そして2つ目は、医療側の体制も十分とは言えないこと。この点ついて、林さんは「いろいろな要因がありますが、1つ挙げるとすると、医療従事者から臓器提供が可能なすべての方、あるいは、そのご家族に対して『臓器を提供する意思があるか・ないか』の確認をすることが、残念ながらできていません。こうしたことも、ドナーが少ない要因と考えられます」と分析。
続けて、「医療従事者から臓器提供についての情報提供がされれば、それがきっかけとなって、家族が患者さんとの最後の時間をどのように過ごすか、臓器提供をどうするか、と考えるきっかけになると思います。このため、確実に家族に臓器提供に関する情報を提供する医療の仕組みを考えることが大事だと思います」と声を大にします。ちなみに、アメリカやスペインでは、このような医療の仕組みがすでに構築されています。
◆「心臓死」と「脳死」の違いとは?
では、どのような場合に臓器提供が可能となるのでしょうか? それを知るためにも、林さんは「まず、人が臓器を提供する場合の『死』について理解することが必要」と言います。
死には「心臓死」と「脳死」の2種類があります。前者は、心臓が止まって血液が流れなくなる死です。この場合、体はだんだん冷たくなっていきます。一方、後者は、脳が機能しなくなる死です。事故や病気などで脳が傷ついて、すべての機能を失ってしまうと、意識がなくなり、呼吸も止まってしまいます。しかし、機械を使って酸素を肺に送ると、心臓はしばらく動き続けます。
ただし「脳死」の状態になってしまうと、もとの元気な姿に戻ることはなく、血圧を維持したり、酸素を肺に送るなどの医療をおこなわなければ、すぐに心臓も止まってしまいます。
日本では1997年に臓器移植法が施行され、脳死で臓器を提供する場合に限り、法的脳死判定をおこない脳死診断することになりました。また現在、心臓死の場合に提供することができる臓器は、腎臓、膵臓、眼球に留まりますが、脳死の場合、心臓、肺、肝臓、小腸も提供でき、法律ができた意義は大きいといえます。
◆「脳死」に直面した家族と接して感じたこと
家族が本人に代わって決断しなければならない場面に何度も立ち会ったことがあるという林さん。移植を決断した家族の思いについて、「“予期せず亡くなる”という事実に直面したご家族が、臓器を提供することで“どこかで生きている”“誰かのもとで役に立ってほしい”とお考えに至る、あるいは、元気なときにご家族で臓器提供についてお話になったことをもとに決断されていると思います」と慮ります。
また、なかには移植を拒む方々もいますが、「やはり、亡くなるご家族の体に傷をつけたり、臓器を取り出し、提供することが受け入れられない。あるいは、まだご家族が亡くなったことが受け入れられないのだと思います。ですが、これも家族がご本人を思う大切な考えであると思います」と話します。
改めて「私が感じていることは、臓器移植に関して日ごろから家族や大切な人と話し合うことがとても大切だということです。例えば、もし自分や家族が臓器移植によって命が助かるかもしれないとしたら、臓器移植を受けたいのか、受けたくないのか。もし自分や家族が死に直面したとき、提供できる臓器をあげたいのか、あげたくないのか。よく話し合っていただきたいです」と力を込めます。
吉川さんも「臓器移植に対する考えは、どのような考えであっても尊重されるべきもので、どの気持ちも守られます。ですから皆さんには、その意思を正確に伝えるための手段を知っておいていただきたいと思います」と語ります。
また、その1つの手段として「臓器提供意思表示カード」があることに言及します。「『臓器提供意思表示カード』は、自分の臓器を提供したいのか、提供したくないのか。その意思を書いておくことができます。“提供したい”という意思を書くのは15歳以上が有効ですが、“提供したくない”という意思は15歳未満でも有効です」と説明します。
なお、健康保険証の裏やマイナンバーカード、運転免許証にも臓器提供の意思を記入する欄があるため、いつも持ち歩くカードに意思を表示しておけば、もしものときに医療関係者に気づいてもらいやすいです。さらには、
「日本臓器移植ネットワーク」のWebサイト
からも意思表示の登録が可能です。
最後に林さんは、「10月16日は『グリーンリボンデー』ですから、ぜひ『いのちの尊さ』や『臓器移植』について考えてみてください」と呼びかけました。
足立は、グリーンリボンデーという日があることを知らなかったと言い、「皆さんも、これを機会にご家族と臓器移植について話し合ったり、自分がどうしたいのかを考えるきっかけになればいいなと思う」と感想を述べます。
一方、青木は1997年に施行された「臓器移植法」に着目。心臓死の場合と脳死の場合に提供できる臓器を挙げたうえで、「この法律ができた意義は大きいですよね。助かる命が増えたんじゃないかと思います」と大きくうなずいていました。
(左から)青木源太、足立梨花
----------------------------------------------------
10月15日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年10月23日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花