モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。5月3日(水・祝)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「画像生成AIに脅かされる権利……法整備は必要か?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
文章で指示するだけで自動的に画像を生み出す「画像生成AI」の不適切な使用によって、クリエイターの創作活動や権利が脅かされているなどとして、イラストレーターや漫画家などで作る団体「クリエイターとAIの未来を考える会」が4月27日(木)に記者会見をおこないました。会見では画像生成AIの適切な使用や法整備などを求める提言が発表されました。
◆画像生成AIをめぐる議論とは
吉田:塚越さん、まずは「画像生成AI」によって、日本のクリエイターの権利が脅かされている現状について教えてください。
塚越:イラストレーターなどのクリエイターは、自分の作品に非常によく似たコピー作品が大量に生成され、無料でネットに公開されています。実際、とあるイラストレーターは、自分が作成した人物のイラストをネットに公開した数日後に、ポーズはそのままに、その人物の髪色や服などを改変した作品を(ネット上で)発見しました。おそらく生成AIによって画像を取り込んで再び生成したもので、別の作品として発表されています。
権利者に何の連絡もなく、無断でこうした改変がおこなわれるので、クリエイターは怒りや悲しみを抱えるとともに、金銭的にも問題が生じることになります。例えば、(画像生成AIを使えば)限りなくジブリのキャラクターにそっくりで、ジブリっぽい世界観の画像をいくらでも作れてしまうということになります。
吉田:「クリエイターとAIの未来を考える会」の提言は、どのような内容なのでしょうか?
塚越:主に3つあります。1つ目は「生成AIを使う場合は著者に連絡をすること」。2つ目は「画像生成AIの画像は、AIを使ったことや元の著作物について、はっきり明示することを義務づけること」。3つ目は「著作権者に一定の著作権料を支払う」といった提言をおこないました。
◆日本のAI規制は緩い?
ユージ:「画像生成AI」に関して、海外ではどのような対策をおこなっているのでしょうか?
塚越:海外ではアメリカでもEUでも議論が進んでいます。EUでは2019年に、学術目的の場合は著作物の使用を可能にする一方、それ以外の分野では希望すれば自分が著作権を持っている画像等をAIに学習させることを拒む「オプトアウト」という制度を設けるように指示しています。
アメリカでは、著作物に関しては「フェアユース(公正な使用)」と呼ばれる規定があり、その都度、著作権の問題があるかないかを議論します。すでにアメリカのアーティストがAI開発企業を訴えており、訴訟の行方を含めて議論が続いています。
ユージ:一方で、日本では対策が進んでいないということですか?
塚越:実は、EUやアメリカと比較しても、日本はAIが著作物を使用することに対して規制がかなり緩いです。日本は2018年に著作権法を改正し、著作権法30条の4というものを定めました。その内容は、AIが画像や文章を権利者に連絡することなく、自由に学習し、営利・非営利を問わず利用できるというものです。
つまりイラストレーターが拒もうとも、現状ではAIがネット上の文章であれ、画像であれ、学習するのは法律的には「合法」です。また、「著作権者の利益を不当に害する場合」は、AIが学習できないという規定はありますが、現状では例外的な事例にしか適応されません。
さらに、先ほど述べた「オプトアウト」という、著作物をAIに学習させたくない場合に除外させるという規定もありません。つまり、日本ではAIがいくらでもデータを学習できるので、AI企業にとってはデータ天国になっています。
先月、人工知能(AI)を使ったチャットサービス「ChatGPT」開発元のアメリカの「Open AI」社・CEO(サム・アルトマン)が来日した理由も、日本であれば、EUやアメリカと比べてもデータを自由に学習させられるから、という意味もあったかもしれません。日本政府としても「遅れているIT分野で勝ちたい」という気持ちもあったかもしれないです。
また、先日おこなわれたG7のデジタル技術に関する会合でも、日本は欧米に比べると積極的にデータを使う姿勢が見えました。とはいえ、やはりクリエイターや著作権者にとっては非常に大きな問題であり、社会全体としての議論はもっとあったほうが良いと思います。
ユージ:塚越さんは、この問題をどのようにご覧になっていますか?
塚越:いろいろな問題はありますが、一方で著作権を守る方法もあります。データが学習することは「合法」であるものの、今は生成するときに人間がプロンプト(指示)をして、それが「創作寄与」になります。“創作に人間が関わった”ということで、著作権法で訴えることはできるのでは? という議論もあります。
さらに問題なのは、著作権は「似ているかどうか」ということで著作権を侵害しているかを判断するのですが、画像生成AIによって作られた作品が「パクリ」かどうかは、そもそもかなり判断が難しいです。
生成AIを使用して「パクリ」「オマージュ」「インスピレーション」を受けているかどうかの判断は、日本では同人の作品、二次創作の文化などがいろいろあり、文化的にも広がっています。これをどう考えていくかという点も含め、何重にも輪をかけて複雑な問題になっていて、難しいところではありますが、皆さんに注目していただきたいと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/