ピーター・バラカン、柴田幸子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM」(毎週金曜18:30~19:00)。毎週さまざまなゲストを迎え、生き方や価値観を探ります。6月9日(金)、16日(金)の放送は、音楽家の大友良英さんと、Cornelius(コーネリアス)として活動する小山田圭吾さんが出演。今年3月に亡くなった坂本龍一さんの追想トークを2週にわたってお送りします。この記事では6月9日(金)の模様をお届けします。
(左から)小山田圭吾さん、ピーター・バラカン、大友良英さん、柴田幸子/photo by Moto Uehara
この日の放送では、坂本さんとはY.M.O.の初期から数十年の付き合いがあったバラカンと共に、それぞれの坂本さんとの出会い、訃報を知ったときの思いなど、坂本さんと深い交流があった3人ならではのエピソードが語られました。
◆訃報を聞いた際の心境
ピーター:坂本教授(坂本龍一さん)の訃報を聞いたとき、心の準備はだいぶ前からできていたけれど、お2人はどうでしたか?
大友:もちろん心の準備はできていたんですけど、思ったよりもショックで。小山田さんとライブをやらなかったら立ち直れなかったかもしれない。
小山田:僕ももちろん覚悟はしていましたが……当時、大友さんとライブを企画していたんです。坂本さんに何か音源を送ってもらえないかご相談していて、訃報の少し前ぐらいにその音源が届いたんです。
大友:だから、こんなにすぐ亡くなるとは思っていなかったのでショックでした。今でもまだズンと残っています。
ピーター:高橋幸宏さんが1月に亡くなって、その少しあとに亡くなったので立て続けという感じはありましたよね。
◆Y.M.O.の楽曲との出会いは?
ピーター:Y.M.O.の3人のなかで、Y.M.O.以降、一番音楽が変わっていったのはたぶん教授なのかなと思います。
大友:そうですね。音楽が幅広いし、もともと前衛的なところから来た人だから、そっちのほうにも迷わずに行っているところはありますよね。両方やっていた感じがある。
ピーター:Y.M.O.って最初の頃はすごくポップな路線のグループでしたけど、途中からかなり実験的なこともやるようになって。人がどう思うかはまったく関係なく、自分がやりたいことをやり続けた感じがありますよね。
小山田:作品の数もめちゃくちゃ多いですからね。ポップスのレコードも作るし、映画音楽を担当したり。
大友:あと、音響的な、かなりわかりにくいものも平気で出していましたね。
小山田:そうですね。2000年代を越えたあたりから、ソロアルバムはわりとそっちにシフトしていました。本当にやりたいことにフォーカスしていった感じがあります。
大友:僕に声がかかるときは、だいたい即興演奏をやりたいときだったので、ほとんどがデュオでした。
ピーター:Y.M.O.に対してどう思っていました?
大友:Y.M.O.が流行りだしたのは、僕が大学生の頃でした。当時、僕は前提的な音楽が好きだったので、ものすごく反発していましたね(笑)。まさか、その人たちと交流するとは思ってもみなかった。ただ、坂本さんが以前に即興のアルバムを出していたことは知っていたので、「両方やるんだ」とは思っていましたね。
小山田:僕は小学生の頃にY.M.O.が流行っていて、いとこが『増殖』(※)のカセットをダビングしてくれましたね。
(※)『増殖』……Y.M.O.4枚目のアルバム。当時、話題を集めていたユニット「スネークマンショー」(桑原茂一さん、小林克也さん、伊武雅刀さん)のコントが曲間に挿入されたコラボ作品。
ピーター:最初に聴いたのが『増殖』だったんですか?
小山田:そうですね。(収録曲の合間に挿入された)スネークマンショーのコントが好きでした。
(左から)大友良英さん、小山田圭吾さん/photo by Moto Uehara
◆坂本龍一の強みは何だったのか
ピーター:亡くなったあと、いろんな方から教授のどこがすごいのかを聞かれたんですね。メロディーのこととかを言葉にするのはすごく難しいけれど、僕がY.M.O.の仕事に携わっていた頃って、まだアナログシンセサイザーの時代だったんです。プロフェット5というシンセサイザーをよく使っていた時期で、あれで作る音色が天才的にうまかった。
大友:坂本さんって耳がすごくいいんですよね。音色に対するセンスは、今まで一緒にやったいろんなミュージシャンのなかでも、ずば抜けていると思う。「もしかしたら、僕には聴こえていない何かも聴こえているのかも?」と思いたくなるぐらい、よくいろんなものが聴こえていた。音でいろんなものが見えていたような気がします。
即興演奏をしているとき、そういうのが、すごくよく伝わってきましたし、一緒にやっていて、それが本当に面白かったです。
ピーター:そういう即興って何回もやりました?
大友:けっこうやりましたね。一番多かったのはNHKのスタジオで、ラジオの収録でもやったし、ニューヨークでも日本でも、いろんなところでやりました。基本はピアノとギターで。ときどき僕がターンテーブル、坂本さんがシンセを持ってくることもありましたね。
最後の即興は、坂本さんがギターを持ってきたんですよ!(坂本さんは)ギターとピアノと、僕はギターをやって。ギターデュオもやったんですけど、「次は僕がピアノで、坂本さんがギターでやりませんか?」って言ったけど、できなかったんです。
ピーター:へえ! 小山田さんは、どういうところで教授と演奏していましたか?
小山田:坂本さんの『CHASM(キャズム)』というアルバムがあるんですけど、そこでレコーディングに参加というか、僕のスタジオに坂本さんが来られて。その日は1日一緒に音を出す感じでした。坂本さんがモチーフを追ってくることもあれば、モチーフを聴かせてもらったうえで即興演奏みたいなことをして、それを坂本さんが持ち帰って編集することもありました。ライブだと、Y.M.O.(との共演)が一番多かったですかね。
ピーター:Y.M.O.として再結成したときですか?
小山田:2000年代に(高橋幸宏さんと細野晴臣さんがY.M.O.以来、初めて結成したユニット)「SKETCH SHOW」があって、そこに坂本さんが合流する感じになったので、自然とY.M.O.になっていった時期があって。何回かライブをやって(サポートメンバーとして参加しました)。
ピーター:小山田さんも即興はやるほうですか?
小山田:そんなにやるほうではないですけど、坂本さんに誘われて即興をやったことはあります。坂本さんって、即興が好きだったんですね。
大友:昔はね。最初の頃はやっていたけど、ある時期に「嫌い」って言っていたんですよ(笑)。だけど、僕と会った頃は普通に興味があって、すごく即興をやりたがっていたと思う。
小山田:2000年代を越えたぐらいからですね。
*
番組では他にも、坂本龍一さんとの交流が生まれたきっかけや、バラカンが作詞に携わった楽曲のエピソードなどを語る場面もありました。
次回6月16日(金)の放送も、引き続き大友さん、小山田さんをお迎えしてお届けします。
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聴取期限 2023年6月17日(土)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:TOKYO MIDTOWN presents The Lifestyle MUSEUM
放送エリア:TOKYO FM
放送日時:毎週金曜18:30~19:00
パーソナリティ:ピーター・バラカン、柴田幸子
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/museum/