フリーアナウンサーの住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生ワイド番組「Blue Ocean」。11月2日(月)放送のコーナー「Blue Ocean Professional」のゲストは、東ソー株式会社の高機能材料事業部セラミックス部・町田海里(まちだ・かいり)さん、無機材料研究所・永山仁士(ながやま・ひとし)」さん。11月8日「いい歯の日」を前に、歯の治療に欠かせないセラミック「ジルコニア」について伺いました。
(写真左から)町田海里さん、住吉美紀
住吉:11月8日(日)は「いい歯の日」。いつまでもおいしく、楽しく食事をするためにも、口のなかの健康を保っていきたいものです。
ところで、みなさんは「アマルガム問題」をご存知ですか? 1970年代頃まで、歯の詰め物に“アマルガム”という水銀を含んだ合金が使われていたのですが、口内で劣化して腐食し、人体に影響を及ぼす可能性があるということで、新しい詰め物に替える人が多いそうです。
そんなときに、使われるのが「ジルコニア」という最高峰のセラミック。非常に硬くて割れにくく、白くてキレイなジルコニアは、日本はもちろん世界中で使われています。
そんなジルコニアの工業化に世界で初めて成功し、世界生産NO.1の会社が、日本の総合化学メーカー「東ソー」です。
今日は、「いい歯の日」を前に、東ソーの高機能材料事業部 セラミックス部・町田海里さん、無機材料研究所・永山仁士さんをお迎えして、ジルコニアについてお話を伺います。
◆ジルコニアは、いつ頃開発された素材?
町田:ジルコニアは古くから耐熱用レンガや衛生陶器に使われていましたが、1975年にオーストラリアの大学教授が高強度ジルコニアを発見したのが始まりです。その後、世界中で研究開発がおこなわれるようになりました。
ジルコニアはセラミックスという素材の1つであり、成形し、焼き固めることで作られる陶磁器のようなものを想像してもらえればと思います。陶磁器のお茶碗やお皿は落とすと割れてしまいますが、ジルコニアは、そのもろさを克服した素材。セラミックスのなかで一番強いのがジルコニアです。
◆東ソーが自社開発を始めた時期は?
町田:化学会社である東ソーは、ジルコニアの原料粉末の研究開発を1980年にスタート。翌年には、世界に先駆けて供給を開始しました。歯科材料用としては、2000年に入ってから使用されるようになりました。ジルコニアの歯科材料用途への検討はヨーロッパの大学で始まったのですが、東ソーはこの検討段階から深く関わっています。弊社の粉末は、市場の拡大とともにグローバルスタンダードな材料として広く認知されております。
◆ジルコニアが優れているポイントは?
町田:まず、金属やプラスチックに比べて“体に優しい材料である”ということが特徴です。金属アレルギーが起こることがなく、また、金属やプラスチックのように経時劣化したり、変色したりすることもなく、非常に安定した材料です。
もう1つの特徴は、“天然の歯”に非常によく似た、自然な見た目の歯を作ることができる点です。強度としても十分であるため、極端に言えば、一度入れてしまえば一生使える歯として使用することが可能です。
住吉:今日は実際にジルコニアで作った歯のサンプルをお持ちいただきました。もう本当にすごい! 見た目が完全に“歯”ですね。色合いや艶感が本当に人の歯みたい。
町田:そうですね。ジルコニアは、もともと真っ白な材料なので、“天然の歯”と同じような透光感=光の透け感が出るように開発し、歯科材料用として使えるジルコニアを製作・普及しています。
住吉:触った感じも硬いし、重さもありますね。実際の歯の色合いと似るように、さまざまな工夫を重ねているのですか?
町田:はい。弊社ではジルコニアの白に加えて、イエロー・ピンク・グレーの色を開発しています。この4色を、ある一定の割合で混ぜると、どんな色の歯でも作ることができます。例えば、日本人はピンクが強かったり、長年タバコを吸われている方はグレーが強くなったり……というイメージで、16色の標準カラーから、ご自身の歯に一番近い色が選ばれるような形になります。
◆「歯の治療」以外の用途は?
町田:光ファイバーの接続部品、セラミックス包丁のような生活部品や工業用部品、装飾用としては時計部品や、スマートフォンやウェアラブルデバイス(体に装着する端末)などにも幅広く使われています。
◆ジルコニアを生産する難しさは?
町田:高強度のジルコニア用には、組成と粒子の大きさの制御が重要です。当たり前のことですが、いつも同じ品質を安定的に作れるまでは苦労しました。特に苦労した点は、歯科材料用に透光感を付与することです。あまり知られていないのですが、自然な歯は“透光感”と言う、少し光を通す性質があります。普通のジルコニアでは、この透光感が不足しており、いくら歯の色を合わせても、どうしても作り物の歯に見えてしまいました。従来のジルコニアに、この透光感を待たせるために、かなり試行錯誤を重ねました。
◆さらなる品質向上を目指して進めていることは?
永山:現時点で、高品質を誇るジルコニアをお客様に提供している自負はありますが、ジルコニアが有する本来の特性を、すべて引き出せているとは言い切れません。そこで、最先端の解析技術を駆使してジルコニアの本質を理解し、その機能を極限まで高めることを目的に、今年7月から東京大学と連携した大型プロジェクト「次世代ジルコニア創出社会連携講座」を始動させました。このような活動を積み重ね、常に最先端かつ高品質のジルコニアをお客様に提供できるよう、日々、研究開発に取り組んでいます。
◆「世界一」であり続けるために心がけていることは?
町田:次のトレンド、将来のニーズは何かを見極めて、どこよりも早く情報をピックアップして、先を越されないようにすることを意識しています。
住吉:ありがとうございました。今回は、11月8日「いい歯の日」ということで、歯の治療に欠かせないセラミック「ジルコニア」について伺いました。みなさんも、この機会に歯のメンテナンスを考えてみてはいかがでしょうか?
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聴取期限:2019年11月10日(火)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時 :毎週月~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/bo/