ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
10月23日(水)のテーマは「トランプが言うように、移民は社会の敵なのか? ニューヨークのZ世代が強く反論」。アメリカ大統領選を大きく左右する“移民問題”について、「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が意見交換しました。
※写真はイメージです
◆多くの移民たちがアメリカの経済を支えてきたのは事実
アメリカ大統領選まであと2週間。10月20日時点において、カマラ・ハリス氏とドナルド・トランプ氏両候補の支持率は依然拮抗しています。今回の大統領選で、特にトランプ陣営が最大の案件として強く打ち出しているのが「移民問題」です。
現在、「移民の流入がアメリカを破壊する」と考える人が右傾化してトランプ支持者となり、「移民こそがアメリカの未来」と考える人がハリス支持という図式ができあがっています。
すなわち、今回の大統領選は、移民の国でありダイバーシティの国でもあるアメリカの未来を決める大変重要な選挙と言えます。また、多くが移民2世で、これまでのどの世代よりも多様化したダイバーシティ世代であるZ世代にとっては、今後の人生を左右するシリアスな状況とも言えます。
ハリス氏とトランプ氏のテレビ討論会において、トランプ氏は「オハイオではハイチ系移民がペットの犬や猫を盗んで食べている」と発言し、物議を呼びました。以前の放送で、ラボのメンバーたちはトランプ氏の振舞いに対して「明らかにファシズムのやり方」と声をあげました。
トランプ氏はことあるごとに、移民、特に不法移民を犯罪者と決めつけて攻撃し、「これ以上移民が入ってきたら、彼らがアメリカ人にとって変わり、国が崩壊する」とまで言っています。それに対し、ニューヨークのZ世代が強く反論します。
メアリー:移民たちは、まさにこの国の屋体骨のような存在だと思う。彼らは税金の面でもかなりの貢献をしているし。そもそも、私たちが食べている食べ物の多くは、移民たちが働いてくれなければ収穫もできない。だからこそ、なぜ移民を攻撃するのかわからない。そもそも、彼らもみんな同じ人間なのに……。
シャンシャン:共和党をはじめ移民に反対する人々の多くが誤解しているのは、移民がやってきて自分たちの仕事を奪い、私たちのお金や資源をただ乗っ取っているという考え方だと思う。でも、それはまったく事実ではない。
メアリーが言ったように、移民たちはアメリカで生まれた私たちよりもずっと勤勉で、もっとも一生懸命働く人たちだと思う。私の両親も何も持たずにここに移民としてやってきて、ここで一から生活を築かなくてはならなかった。だからとても勤勉に働いてきたんだ。チャンスもお金もただで与えられるわけではなくて、そういう機会を得るためには一生懸命働く必要があったんだよね。
この国で生まれるということは、親や祖父母の代からの財産を受けとることができるということ。働かなくても政府の助けを受けられる場合もある。たとえば、仕事を失ったら失業保険を受け取れるけど、移民はそうはいかない。彼らはすべて自分で働いてそれを勝ちとらなければならないので、本当に大変なんだよ。
だからこそ、攻撃の対象として移民を利用しているようにしか見えない。たしかに、悪い移民も少数はいるけれど、ほとんどの移民はとても勤勉でいい人たちばかりだよ。彼らはただ、よりよい生活を送りたいだけなのに。
中国からの移民2世のシャンシャンは「時には悪い移民もいる」と発言しましたが、日本も含めて移民=悪い人という先入観を持つ人は少なくありません。トランプ氏は明らかにその先入観を利用しており、Z世代専門家のシェリーは「移民、特に不法移民は犯罪者と強調し、人々の恐れや反感を煽っています」と説明しました。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆搾取している対象を見誤ってはいけない
実際の移民の犯罪率は、アメリカで生まれたアメリカ市民よりもずっと低いことがわかっています。移民を嫌う人々の理由のなかには、「外からやってきて、自分たちのお金や職を奪っていく」という考えがありますが、実際には移民がアメリカ市民の嫌がる仕事を引き受け、経済を支えているのが事実です。
では、なぜそれが“奪っていく”という発想に至るのか。その理由をラボのZ世代が考察します。
メアリー:問題は、移民がここ(アメリカ)に来ると「フリーカード」をもらえるという誤解があることだと思う。この前、オハイオ州スプリングフィールドで人々にインタビューをしている人の映像を見たんだけど、インタビューを受けた人の1人が「ハイチ人たちは政府から無限に使える魔法のカードをもらっているんだ」なんて言っていた。だけど、そんなわけはないよね。たしかに何かしらもらっているのかもしれないけれど、こういう虚偽情報が横行する理由は、移民に対する嫉妬からきていると思うよ。
シャンシャン:私もある男性が移民問題について話しているインタビューを聞いたことがある。彼は「なぜ移民は法を犯してまで来るの? 書類を整えればいいのに。グリーンカードを手に入れるのは簡単なのだから、弁護士にお金を払って手続きをすればいいじゃないか」と言っていた。彼は、永住権や市民権を得るのが、まるで「弁護士にお金を払ったら次の日に手に入る」というようなシンプルなものだと話していて、あまりにも事実と違うから驚いた。
ノエ:結局のところ、合法であろうと違法であろうと、移民である限り大半は経済的に低い階層に属しているよね。この国で世代を超えて繰り返されているのは、白人、男性、富裕層が上にいて、他のすべての人々を搾取し、搾取されている側、つまり経済的に低い層は自分たちが互いに搾取し合っていると信じ込まされている。そういう構図なんだよ。
本当に搾取しているのは、白人・男性・富裕層など少数の既得権者なのに、移民に対する不理解や虚偽の情報により、自分たちが移民に搾取されていると信じている。それが移民に対する反感の正体のようです。「これはアメリカに限らず、ヨーロッパでも、そして日本でも起こりうることなので注意が必要だと思います」とシェリーは呼びかけます。
さらに、「移民が自分たちアメリカの白人にとってかわる」という恐れも、トランプ陣営から大いに利用されています。その恐れの背景にあるのは、以前もお伝えした通り、2045年には移民の増加によりアメリカの白人人口が過半数を割るという現実です。
少子化するアメリカが世界最大の経済大国でいられるのは、移民の流入が続いているからです。だからこそ、Z世代はダイバーシティ溢れる社会で共存していこうと考えています。「トランプが当選すれば、移民やマイノリティへの偏見に根ざしたアメリカが戻ってくる可能性を、彼らZ世代の多くは強く警戒しています」とシェリーはコメントし、話題を締めくくりました。
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10月23日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年10月31日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/