清水建設が取り組む“デジタル人財育成”とは？DX経営推進室に聞く「役員も含めた全社員に向けて、デジタルリテラシーの底上げも…」

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」（毎週土曜 20:00～20:30）。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月5日（土）の放送は、清水建設株式会社 取締役副社長 DX経営推進室長の関口猛（せきぐち・たけし）さんがゲストに登場。清水建設の「DX経営推進室」の役割やデジタル人財育成について伺いました。

（左から）関口猛さん、笹川友里

関口猛さんは東京工業大学大学院修了、1984年に清水建設入社。生産プラント本部長などを経て、2018年には執行役員エンジニアリング事業本部長に就任。その後、常務執行役員、専務執行役員、取締役を経て2024年4月より現職。

◆「DX経営推進室」の取り組み

建設業界におけるDX（デジタルトランスフォーメーション）の重要性が高まるなか、清水建設では2024年7月に「中期DX戦略〈2024－2026〉」を策定し、経営視点でDX推進を加速させるための体制強化に乗り出しました。その中核となるのが、新たに設立された「DX経営推進室」です。ここの室長を務める関口さんは「以前からデジタル戦略や施策を担ってきた組織が母体となり、DXへとレベルを上げていく使命を担っています」と力を込めます。

また、DX経営推進室には建築や土木、設計、営業、人事など、各部門から現場経験豊富なメンバーが集まり、業務プロセスの見直しも含めた会社全体のDX推進に取り組んでおり、「それぞれの部門における課題感を持った、意識の高い人たちが集まってきてくれています」と語ります。

◆「シミズ・デジタル・アカデミー」とは？

続いて、DXを支える“デジタル人財”の現状について伺うと、「業種を問わず各企業で取り合いになっているのが現状です。高いスキルを持った人をスペシャリストとして採用することを考えていますが、建設業のことを知っている人を採用するのはなかなか難しいです」と課題を吐露。そこで、清水建設はデジタル人財育成プログラム「シミズ・デジタル・アカデミー」を開講し、社内でデジタル人財の育成に取り組んでいます。

ここで、笹川は「そういった人財は若手のほうが多いですか？」と質問すると、関口さんは「若手もいますが、中堅の方も結構います。また、（デジタルに）長けた人をピックアップして教育するだけじゃなく、役員も含めた全社員に向けて、デジタルリテラシーの底上げも始めています」と声を大にします。そのうえで、デジタル技術をいろんな業務に活用していける人財の教育やスペシャリストを作るDXコア人財の育成にも着手しています。

◆AIとセンサー技術で“快適なオフィス空間”を提供

今後、テクノロジーの進化によって私たちの働き方や暮らしはどのように変わるのでしょうか。関口さんは、「AIの進化がさらに進み、人間に代わって判断を下す場面が増えていったり、センサーの技術もどんどん進んでいくと思います」と言及します。とはいえ、現代でも複数の環境要素を同時にとらえ、それらをAIが分析することで快適で最適な環境づくりが既に可能になっています。その象徴が、東京都・江東区潮見にある「温故創新の森 NOVARE（ノヴァーレ）」です。

同施設では、一人ひとりの位置情報をセンサーが読み取り、床に設置された送風ファンが、その人の温冷感の好みに応じた空調を自動調整する仕組みが導入されていて、その人が移動すると空調も自動で追随するという、まさにパーソナライズされた空間づくりを実現。このように、デジタル技術の進化によって暮らしや職場環境が大きく変化しています。

さらに、デジタルの力によって人の負担が減るだけではなく、「そこで生活し、働く人たちが、快適さや働きがいを感じて“幸せ”を得られるような仕掛けが提供される未来が、あっという間に来るのではないでしょうか？」と関口さん。そんな未来を実現するためには、設計者だけでなく、実際に利用した人々の声が重要になると言い、「利用する皆さんがいろんな声をあげてくださることで、もっと（未来の）具体的な設計に響いていくと思います」と話していました。



＜番組概要＞
番組名：DIGITAL VORN Future Pix
放送日時：毎週土曜 20:00～20:30
パーソナリティ：笹川友里