作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。8月27日(日)の放送は「村上RADIO~お色気女性ヴォーカル特集~」をオンエア。
1950年代後半~1960年代前半にかけて、セクシー・ヴォイスで名を馳せ、10代の八代亜紀が憧れて歌い方をコピーしていたというジュリー・ロンドン、1960年代の“セックス・シンボル”の1人だったアン=マーグレット、さらに“ニューヨークのため息”と呼ばれたヘレン・メリルなど、その歌声で優しい罠を仕掛ける女性ヴォーカリストの楽曲が続々登場しました。松尾和子「グッド・ナイト東京」など日本の歌手も。
この記事では、中盤3曲についてお話した内容を紹介します。
◆Clémentine「Pillow Talk」
フランス人のクレモンティーヌが「ピロー・トーク」を歌います。
「ピロー・トーク」、日本語に訳せば「寝物語」。男女がベッドの中で交わす会話のことです。男女も結婚して何年も経つと、ベッドの中で語ることも子どもの学校のこととか、「そろそろ車検が近いね」とか、そういう実用的な話になってくるみたいですが、そういうのは普通「ピロー・トーク」とは呼びません。「ピロー・トーク」、もっと艶(つや)っぽい会話のことです。
この曲、1973年にシルヴィアっていう人の歌で流行りました。クレモンティーヌは英語とフランス語のちゃんぽんで歌いますが、これがなかなかセクシーです。フランス語って、けっこう響きが音楽的というか、なんか耳に心地よいですね。フランス語の寝物語です。
◆Helen Merrill「The Nearness Of You」
ヘレン・メリル、「ニューヨークのため息」と呼ばれた人です。ハスキーな声で囁(ささや)くように歌いかけます。クリフォード・ブラウンとの共演でジャズ・ファンにも有名になりましたが、もともと本格派ジャズ歌手というよりは「趣味の良い小粋なクラブ歌手」という感じの人ですよね。音程が微妙にふらつくところが、なぜか聴くものの心をそそります。
ここではビル・エヴァンズのピアノをバックに、ホーギー・カーマイケルの名曲「ニアネス・オブ・ユー」を歌います。いきましょう、「ニューヨークのため息」、ヘレン・メリル。
◆April Stevens「Teach Me Tiger!」
次はもう少しワイルドにいきます。エイプリル・スティーブンズさんが歌います。「ティーチ・ミー・タイガー」、虎さん、教えて。トラさんといっても葛飾柴又の寅さんじゃなくて、本物の虎です。いったい何を教えてもらうんでしょうね? 興味あります。
エイプリル・スティーブンズはお兄さんのニノ・テンポとデュエットで「ディープ・パープル」をヒットさせた人ですね。この「ティーチ・ミー・タイガー」は1959年にマイナー・ヒットしました。これ、雰囲気がけっこうワイルドですので、思わず椅子から滑り落ちたりしないようにご注意ください。
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うーん、すごかったですねえ。このエイプリル・スティーブンズさんは今年の4月に93歳で亡くなっています。ついこの間ですね。ご冥福をお祈りします。
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8月27日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月4日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~お色気女性ヴォーカル特集~
放送日時:8月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/